ベクトル代数でも難しいところがある。
例えば、ベクトル積の定義である。これがなかなか私のような頭のわるいものにはわかり難い。
A*B=(A_{y}B_{z} --A_{z}B_[y}, ・・・・・)
である。私はこれを覚えるのにLevi-Civita記号でやっと切り抜けられたが、ファインマンはどう書いているのか最近知った。いわゆる『ファインマン物理学』(岩波書店)第3巻によれば、要するに
(A*B)_[x}=A_{y}B_{z} --A_{z}B_[y}, ・・・・・
と書かれてあった。これでわかる人はわかるのだ。
私みたいな頭のわるいものでもこれでわかる。要するにベクトル積のたとえば x 成分は後ろの第1項には添字の y,z が来る。そしてーの後ろの第2項では z, y とひっくりかえせばよい。こうなると y 成分は y, z, x のサイクリックな順番となる。z 成分は z, x, y の順になればよい。これはもちろん第1項についてで第二項は第1項の成分は順番が入れ替わる。
たったこれだけのことだが、私にはわからなかった。それでLevi-Civital記号まで必要としたのだ。
私はLevi-Civita記号の発明はたぶん上にような x 成分がなぜ x で始まらないのかという素朴な疑問からちゃんと成分を xyz を1, 2,3として1から始めたいと思ったLevi-Civitaがこういう記号を考え出したと思っている。
そういうことをひとこと申し添えてくれると気持ちがわかっていいのだが、そんなことをおくびにも申し出てはくれない。このことから無味乾燥な記号だと思われてしまうのだ。