民間数学教育団体「数学教育協議会」に関心のある方だったら、大学の基礎数学の展望として森ダイアグラムというのをご存じであろう。
微分積分学(局所比例として)
正比例 ベクトル解析
線形代数学(多次元比例として)
というのであった。
大学での基礎数学の最終目標はベクトル解析ということになる。そしてベクトル解析にはベクトル代数の部分と本当のベクトル解析の部分がある。
ベクトル代数の部分はテンソル代数とかLevi-civitaの記号を用いてかなり面倒なところを回避できる。一方、ベクトル解析の部分の最終目標はStokesの定理とGaussの定理であろう。これがベクトル解析にとどまって議論しようとするとあまり見通しがよくない。
それでそこを回避する方法として、微分形式を学ぶということがあろう。微分形式を学べば、このStokesの定理とGaussの定理がまことに見通しがよくなる。それで微分形式を学ぶことはベクトル解析の最終目標をStokesの定理とGaussの定理とする限りは必須となろう。
こういうことで志賀浩二『ベクトル解析30講』(朝倉書店)や和達三樹『微分・位相幾何』(岩波書店)等では微分形式を積極的に学ぶことにしたと思われる。後者ではさらに多様体と多様体上の積分という章があり、ここにStokesの定理とGaussの定理が扱われている。
(2023.5.4付記)和達三樹さんにはお会いしたことはないが、優れた物理学者であった。非線形波動とかソリトンとかの研究者であったと思う。私などよりも若い方であったと思うが、もう物故されていると思う。
彼が編者の一人となっている岩波書店の「理工系の基礎数学」シリーズにはベクトル解析のテクストはなく、その代わりに『微分・位相幾何学』(岩波書店)の第10巻がある。これは和達さんの一つの見識を示しているといっていいだろう。