物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

オイラーの贈物

2012-05-09 12:38:33 | 数学

大学の理数系の出身の方々なら、吉田 武著「オイラーの贈物」という書を読んだことはないまでも存在くらいは知っているであろう。

この書は海鳴社から以前出版されていたが、いつか絶版となり、その後はちくま学芸文庫から出ていた。

だが、文庫版ではなく、「大きな版の書籍を欲する読者がいるらしい」ことはアマゾンコムの書評等からも、うかがい知ることができた。そのうちに最近になって東海大学出版会から大判の同書が出版された。

私は元の海鳴社の版とちくま学芸文庫の版をもっているが、東海大学の版を買うかどうか、先週の土曜日にジュンク堂に行ったときに手にとってみたが、どうも海鳴社の版ほど魅力がないと感じて買わなかった。(ちなみにこの書籍の東海大学版の価格はとてもお手ごろである。もしお持ちでない方はぜひ購入されて、一読されることをお勧めする)。

どうしてなのだろうか。本の内容が変った訳ではない。だが、本の装丁等も含めて雰囲気が違う。なんというか「アカデミックさ」というのか、その本のもつ「落ち着き」というのか何かが違う。

もちろん、私が海鳴社の版をもっているのだから、さらに新しい版を買い求めるということは普通の人にしたら、おかしいことであろう。

だが、この「オイラーの贈物」ほどの名著はそうあるものではない。この書は海鳴社版でも3万部が出たと聞く。理数系の書で1万を越えた部数の書を出すことなどそんなにあることではない。ましてや3万部だなどとはまさに法外であろう。だが、海鳴社版にはそのような雰囲気があった。

吉田 武氏の著書にはこれ以外にも数冊の著書があるが、その書の装丁とか雰囲気において、その内容において、また、その書き方においてこの「オイラーの贈物」に勝るものはないと思う。彼の著書を私が全部もっているわけではないが、多分これが彼の最良の著書だと言って間違いないであろう。

いつかも書いたが、この1冊を著しただけでも、吉田 武という人は日本の書籍界でいつまでも記憶に残るであろう。しかもこの書の海鳴社版に関しては、出版社とのコラボレーションがうまく行った結果かとも思われる。

以上は他人が外から見たらという話であり、あくまで著者の考えとは違ってもそれは致し方がない。