美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

詩人の言葉の息に吹かれて、色んな心が紙の上を揺らぎながら流れて行く(大谷忠一郎)

2022年10月05日 | 瓶詰の古本

何か話すと よそつぽむいて
ひとりでお喋りなさいと表情する
意地惡な彼女の横顔は
冷たい大理石の浮刻のやうに端整だ

自分の心をさとられまいと
絶えず氣のない小唄を唄ひ
俺を盗み見る 狡猾さうな彼女の眸は
朝露に光る葡萄のやうにすがすがしい

鐵面皮で 気短で 我儘で
狐のやうに野生的で
何時も捨て鉢な言葉に生きる紅唇(くちびる)
櫻桃(さくらんぼ)のやうに艶めかしい紅唇(くちびる)

(『カフヱーにて』 大谷忠一郎)

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