スペーサーともいう。しかし、クルマをがに股にして喜ぶための円盤とは違う。踏切を渡るたび腹をこすり、泥の飛沫をクルマの側面に播き散らす。
日本は豊かになりすぎたかな。アホが人類の英知の結晶で遊んでいる。おれのカネだとか言ってよく狂いだすが、そのアホ車が年間5000人以上殺しているのを理解できるか。
日本の道路は左側が下がっている。あるいは右側だけに人が乗ることが多い。体重が全く同じ二人が完全に水平な道路を選んで走ることはできない。左カーブより右カーブが緩やかだ。それを同じ速度で同じ曲率で同じ回数、走ることはできない。
つまりどんなに正確につくったクルマもひずんでくる。いわゆる癖が出てくる。人のクルマを運転してみるとよく分かる。こんなにくせのあるのをよく運転しているなと思う。たまには浮気も必要だ。
人間の場合は、いろんな運転癖があるのに乗るのもまた楽しい。クルマに乗る場合、癖はあってはならない。車台といろんなロッドとの間にスペーサーすなはちシムを咬ませる必要が出てくる。例えば、何らかの異常な力で車台の位置が変わった場合、車台との間にシムをはさんでロッドが無理にタイヤにストレスをかけないようにする。
車の運転癖は楽しくない。
結局、クルマも人間も慣らし運転が過ぎたころの状態が一番よい。その状態に戻すのがシムだ。
フロントホイルアライメントの調整は、フレームがないクルマに関してはよく分からない。だが、人任せにしないで苦労するのは実に楽しい。とことん困れば何とか道はあるもんだ。
コペンの屋根のひずみがひどくなったのでシムを買いに行った。これが商業都市の悲しさで、シムを売ってくれる専門店がない。トヨタ部品に行った。2枚で150円もした。ホントは20円だろうけど仕方あるまい。トヨタ部品であってシム屋ではない。
ダイハツはシムを4枚も5枚も使っていた。いい加減なもんだ。ところがどっこい、それぞれ厚みが違う。しかも測ると0.25ミリづつ厚みが違う。だがその厚みの種類は、順に0.25、0.5、0.75、1・・・となっているのではない。
話がしやすいように4倍すると、1、2、3、4、の厚みではなく、3の次は5、その次は7となっていた。こういう基礎工業製品は本当に頭のいい人がつくる。互いに素なのだ。
こうすると3、4種類のシムの組み合わせでどんな厚みも作れる。素晴らしいじゃないか。がに股のタコ車に乗る能天気たち。互いに素、互いに素なのだ。僕とおまいらのよう。
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