若いころ、僕はすべてを犠牲にして山に打ち込んだ
田部井淳子さん
この人が周囲にいると、なんて自分が小さいことに引っかかっていたのだろうと反省する。不思議な力だ。ヤマの歩みは正確で、機械のようだ。ペースが変化しない。
しかも疲労なんてありえない人だ。僕は脳の回路が故障して疲労を感じなくなったのだろうと思った。
ただし、日常のことはたいてい「許す」ことを基本においている。無理をいう人に怒るのではなくきっと事情が在ったんだよ、と。
許すばかりではなく、相談を受けたときは、周りへの気配りが鋭く、その上で合理的で解決策をどんどん示す。たいてい行き詰っていた人はバカらしくなって田部井ワールドの楽天的な考えを。知らない間に体得するようになる。
基本に、そういう考えで一貫していたから人の悪口でも遠慮なく言ったが、憎まれることは無かった。
女だけでエベレストに登ると言う事は、先頭に行く人も女性だということだ。ヤマは特に冬の岩山とは、20才の彼女が40になったときを思えばよい。リカチャン人形が錯乱ババアに変身する。夏と冬でそれほど違うのだ。
ある女医が、カッコつけてシェルパをあごで使い、夫婦喧嘩まではじじめ、カネだけで統率し、ちらかしぱなしで頂上に立ち、成功したといって帰国した。
カネさえあれば誰でもエベレストに登れる。ただし、汚く登る。あとあじが悪く日本人の評判も悪くなる。
山はトップに立って先頭で登るか否かが、一流の登山家かどうかの分水嶺である。3人パーティのとき、ミドル(真ん中)は、かりに落ちてもザイル(ロープ)のたわみのぶんしか落ちない。ミドルは初心者の体験コースでありそれをして3大北壁を踏破したとは大嘘つきだ。
トップは落ちると最後のハーケンの位置の2倍落ちる。(理由省略)
今井はサロンパスのように人の体にくっついて、時には本当におんぶされて3大北壁を制覇した。
Topでこの一の倉沢をAttackしてから大きな口を利いてみろ。その前に今井通子は死ぬ。絶対アイガーより困難だ。
僕はこんなインチキ野郎がマスコミでチヤホヤされるのはいやだ。だが田部井さんはもう一段階上だ。意に介していない。僕がイライラするころ、田部井さんは次の山と会話をしている。
ヤマなんか習わなくて良かった。僕は人生の心の持ち方を学んだ。
人に嫌がらせをして自殺に追い込む電通社員がいるかと思えば、田部井さんのような人もいる。僕は人殺し電通は絶対に許さないし犯人を突き止める。管理職に教え子や同級生は多い。しかし、周りをおだやかにして皆に好かれ、かつ自分の意見ははっきり言うそんな田部井さんに僕は、到底追いつけない。