か ら け ん


ずっと走り続けてきました。一休みしてまわりを見ます。
そしてまた走ります。

三井港倶楽部 からけん御用達  3

2019年01月17日 | 食・レシピ

100㎞離れた町から期待してきたらこれがメインディッシュだと。

 

カネ返せー。ココまで期待して読んでくださった皆さん、僕と一緒に怒ってください。鰆のポアレ。季節を取り込むのはいいが、ジュレの海に浮いているのに一口サイズが4万か。

働かない階級の食事はいつも淡白で薄味だ。僕はどこに行っても塩辛い思いをしているのでさすが上品な食事だとは思った。だがぼくはこれにカネを払うとしたら、400円でも高い。学食で食えば100円で5倍ぐらい大きいのが100皿ぐらいあり、移動しながらトレーに乗せたもののほうが大きい。

 

デザート

あまりにも小さいので近くから撮ると

大きくなった。2センチ×4センチ。子供の頃よく食った、裏の駄菓子屋にあったものと同じ。悔しいがおいしかった。20×40センチでも僕は食えたけど。

せっかくどこにもない味なんだから量を増やせ。僕はグラスごと口にくわえ舌で掬った。内縁の娘が肩を落としていった。「もうここには来られんごとなった」。

 

ぼくの気持ちの中で二つの心が争った。

① カネ返せコノヤロー。おればなめとろうが。おまいらはこんなまやかし貴族ごっこでカネばとるとか。オラ頭に来たぞ、コラ詐欺だ、泥棒だ。この期に及んでまで労働者階級を搾取するとか!おら同盟じゃなかぞ、総評ぞ、戦う総評ぞ。泣いてもらうけん。

② まてまて。ROLEXはクォーツに負ける、電波時計にはもちろん負ける。だが負けるとは何ぞや。今や腕時計には正確さは期待されない。4万がなんだ。HUBOLTは400万だ。ROLEX,HUBOLTの持つ力を信じろ。逆巻く波のように荒々しい世間を前にして100円ショップのクォーツが勇気をくれるか。液晶画面の汚い文字がお前の心を癒してくれるか。

ぼくの心は①と②の間を行ったり来たりした。紳士的にマネージャーに「量が少ない」と言ったら、”素”に戻った顔をしたのでイラっと来た。①②を行ったり来たりじゃないな。軸足は①だったな。

最後のコーヒーまでデミタスどころか盃だった。指がカップの取っ手に入らない。

 

僕はまた行く。だってほかにないから。ペニンシュラもマンダリンもここには勝たない。

HUBOLTで時間を見るとはなんという贅沢だ。しかし、100均の時計の利点は価格だけだが、その時計では勇気や満足を得ることはない。100均時計は時間を見る。HUBOLTは至福の時を見る。

貧困は日々の雑事に翻弄され、労働苦の中、疲労困憊することが必ず伴う。、MARXよ、労働が上部構造のすべての源泉だといったが、残念なことにそれは間違いだ。

この国の人々はみんな過労で思考停止しているじゃないか。

まっとうに物事を考え、上品に暮らすには額に汗してはいけない。努力は労働以上にする義務があるが、正当な努力が正当な向上心に支えられ、教養に支えられnoblesse obligeを甘受するとき。そのとき、400円で来る食事に4万払うことの意味を体感できる。

穏やかな時が流れることが分かる。えも言えぬ充実感を知らない人は劣等感の中で死ぬ。

良い結晶ガラスはロストテクノロジーになった。港倶楽部のトイレ、廊下、化粧室、電話室。捨てがたい味をしている。

下品なLEDと比較すべし。鏝絵(こてえ)。これもロストテクノロジー。明治の匠は血のにじむ努力をした。

〔終わり〕


最新の画像もっと見る