ファミリー・ツリー / The Descendants

2012-04-14 | 映画






2012年のアカデミー賞の5部門にノミネートされ、脚色賞をとった作品。
主演はジョージ・クルーニー。
彼の長女で反抗期真っ盛りの娘を、大抜擢された19歳のシェイリーン・ウッドリーが演じている。
監督は、「サイドウェイ」、「アバウト・シュミット」と、中年男の悲哀を、日常に近いが、ちょっとだけ非日常世界で描かせたらピカイチのアレクサンダー・ペイン。



これはまさにアレクサンダー・ペインの作品


いつもと同じ顔なのに、表情がちがうジョージ


今作で大注目を浴びたシェイリーン・ウッドリー


作品にいいアクセントをつけたアレックスのボーイフレンド


マット・キング(ジョージ・クルーニー)は、ホノルルの弁護士。
最近、彼が管財人になっている、キング家が祖先から継いでいる膨大な土地を売却すること親族ですすめていた。
そんな矢先に、彼の妻、エリザベスがボートの事故で植物人間になってしまった。
夫婦には、アレックスとスコティという2人の娘がいたが、多忙なマットは娘たちの面倒は妻に任せっきりだった。
難しい年頃の娘たちとの関係もギクシャクしていた。
ある日、彼は医者からエリザベスの意識が戻る可能性のないことを宣告される。
それは、生命維持装置を外す決断を迫られたことになる。
マットが、アレックスにエリザベスの事を伝えると、感情的になった娘から、エリザベスが浮気をしていたことを聞かされる。
そして、浮気の件を知らないのは、家族をほったらかしにしたマットだけで、近所の人でもエリザベスの浮気は知っていると言われる。
一時は、エリザベスの裏切りに怒ったマットだが、生命維持装置を外す前に浮気相手のブライアンという男に、エリザベスに会える最後の機会をつくってやるために、娘2人とアレックスのボーイフレンドと、浮気男探しをはじめる。
また、その一方でキング家の土地の観光開発会社へのオークションの準備もすすんでいた。



何も知らないで死を待つエリザベス


エリザベスの浮気相手ブライアン


ブライアンの妻  終盤でいいところを持っていった


いつもの颯爽としたジョージではなく、妻に浮気され、2人娘に手を焼く、情けない中年ジョージ。
全速力で走るシーンも、アクション作品とは違い、サンダルで、カーブを転ばないように、懸命に走るコミカルな場面になっている。
走っている理由も、妻の浮気を確かめるために、近所の友人の家に怒鳴り込むという情けなさ。
そんな情けない男を、あの濃い顔で本当に上手く演じている。
いつもと同じ顔なのに、表情が微妙にコミカルバージョンになっている。
2人の娘とや、アレックスのボーイフレンドとのからみもとてもいい。

妻の反応があるうちに、見つけた浮気ならば、怒鳴ることも、謝らせることもできる。
息はしているが、何の反応もない妻の裏切りに対する怒りを、どこにも持っていくことが出来ないマット。
そしてその妻の、生命の終りを自分が決めなくてはならない。


所々に入るハワイの美しい風景


もちろんビーチも


妻が生きていた時には、たぶん逃げていた娘たちとの父娘関係。
自分の知らなかった娘たちと、あらためて向き合わなければならない。
そして、ギクシャクしていたものが、共通の愛する人へ死へ最後の準備をすすめるうちに、心を通わせていくようになる。

こんな作品を、ここまでコミカルに描けるペイン監督と、その期待通りに忠実に悲しい男を表現するクルーニー。
いい作品にならない訳がない。
また、脇役の使い方もいいね。
特に浮気相手のブライアンの奥さんが、終盤の一シーンであんなに光ってくるなんて。
そして、普通に戻っていくエンディングもよかった。 星は /5 



悲しいかな中年の全速力


覗き


親子の絆が試された


トリビア
ジョージ・クルーニーは「サイドウェイ」でジャックの役を希望したが、ペイン監督はもっと無名の役者を起用したいという理由で断った。


クルーニーのインテビュー 彼が他の監督のシーンをコピー(オマージュ)したことに触れている