花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ローマ「CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)展」(1)

2010-04-15 00:26:40 | 展覧会
ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ(Scuderie del Quirinale)で開催されている「CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)展」を観てきた。


会場に向かう階段(CARAVAGGIOの文字が今回の照明を象徴しているかのようだ)

スクデリエの会場では、作品は2つの階に分かれて展示されている。ゲストのdesiderioさんのレポートにもあったように、展示会場は薄暗いものの、作品の光と影を浮き出させるためのスポットライト照明が効果的である。朝日新聞の記事にはもっと明るい方が良かったという感想が出ていた。多分、照明はそれぞれの好みによるのではないかとも思うが、私的には照明効果によってカラヴァッジョの意図するものが強調されたように見えた。スポットライトにより作品の陰影が際立ち、その彫の深さにより画面に塗り込められていた精神性が立ち上がってくるかのように思えたのだ。

多分、今までに美術館・教会の定位置で観ているせいもあるのかもしれないが、この意欲的な照明演出をとても面白く観ることができた。特に絵画上のスポットライトが多種に渡ると思われたロンドン《エマオの晩餐》の会場スポットライトが3個、光と影の彫りが割と浅いと思っていたウフィッツィ《イサクの犠牲》は5個と、意外な照明展開に驚くとともに、とても興味深かった。

一方、今回の照明にも一長一短があるかもしれないと思う場面もあった。例えばアンブロジアーナ《果物籠》であるが、ミラノでは明るい照明の展示室で、ガラスも無く、至近距離で観ることができた。故に葉や果物の水滴(何とリアルで細かいことか!)や、背景の絵具のひび割れもくっきりと確認された。


カラヴァッジョ《果物籠》(アンブロジアーナ絵画館)

だが、今回の展示会場では作品と観客の間に、約50cm程の立ち入り禁止ゾーン線が引かれ(接近するとピーピー警告音が流れる)、薄暗い中でスポットライトに浮かぶ作品と対峙することになる。すると、背景の薄黄色のひび割れた光の拡散が均一な塗りの平面となり、その中間色効果で果物籠が画面から突出するように浮かび上がった!ボルゲーゼ《果物籠を持つ少年》と同じような艶やかさがそこに出現したのだ。
だが、あまりに作品との距離があり、薄暗さのせいもあり、あのカラヴァッジョの静物画を描く繊細な技量を満喫することができないのだ。あの思わず唸ってしまうような水滴が見えない! 今回の展覧会では作品展示の難しさもつくづく感じてしまったのだった。

次回は各作品を観ながら再発見したことなどを中心に書きたいと思う。