花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

模写・模造と日本美術

2005-08-11 02:36:28 | 展覧会
東京国立博物館「模写・模造と日本美術」展を観てきた。
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=1930

以前、サイトの掲示板でも話題になったが、絵画の修復、特に洗浄のし過ぎについて結構人により意見が分れることがわかった。その作品の経た年月をも大切にしたいから洗浄のし過ぎは好きでない人、やはり制作当時の姿を復元して見たい人、様々な意見がある。私はどちらかと言えば後者で、当時の姿を見てみたい派である。システィーナ礼拝堂の天井画は修復中と修復後を見ているが、圧倒的に修復後の姿に感激した。しかし、「最後の晩餐」のように復元の難しい作品も多い。最近はコンピューターを使っての復元画像が見られるようになり、「最後の晩餐」も最新CG画像であらためてレオナルドの凄さを知った。

今回の「模写・模造と日本美術」の作品の中にもCG復元と同じで、模写・模造によって現在では失われた姿、色彩まで復元した作品がいくつかあった。特に感動したのが「玉虫の厨子」だった。なにしろ学生時代、教科書で見てどこが玉虫なのか皆目わからなかったのだから(汗)。今回、復元模造作品を観て漸くわかった。蛍光色に輝く玉虫を飾文様の彫りの中に埋め込むことにより螺鈿象嵌と同じような効果を出すためだったのだ!厨子自体が蛍光色の宝石できらきらと輝く様は当時の人々をも魅了したに違いない。当時の職人の知恵を見たと思った。
この「玉虫の厨子」復元のための玉虫集めには多くの人達が協力したと言う。観ながら私まで感謝の念でいっぱいになった。

美術品の修復は確かに難しく、特に古いものほど破損の危険を伴っている。今回の展示作品は模写・模造という形で制作当時の姿を私たちに生き生きと伝えてくれる。最近観た「厳島神社展」の「平家納経」も素晴らしい模造作品により雅できらびやかな当時の様が髣髴できた。憧れの正倉院「螺鈿紫檀五絃琵琶」の螺鈿細工も見事だった。こうした作品を復元模作した美術家たち自身も、当時の制作技術を研究することにより、伝統技術が現代に伝承され、新たな創造源にもなり得るという。展示された作品たちは観ていても単なる模造ではない迫力を持っていた。作者たちの気迫が込められている。

もちろん本物を観ることの歓びに勝るものは無い。が、当時の姿を見てみたい派の私は模写・模造でも大歓迎である。今回の展覧会は私には予想以上に楽しめた展覧会であったのだ。

(先日の日本経済新聞に、画像の「執金剛神立像(模造)」により、親指の握り方が明かになったという記事が出ていた。)

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (フォルクローレ綾)
2005-08-16 19:35:31
私も玉虫厨子の玉虫の使い方に感動しました。「遣唐使と唐の美術」が目的だったのですが、こちらの展示の方が内容が濃かったような気がします。
返信する
フォルクローレ綾さん (花耀亭)
2005-08-16 21:32:43
フォルクローレ綾さん、はじめまして。ようこそです♪

「玉虫の厨子」は本当に綺麗で感動しますよねっ。今回の模写・模造作品を並べるという企画は予想外に面白かったです。

でも、実は私、「遣唐使と唐の美術」をパスして、平常展とこの企画展だけ観たのですよ(汗)。フォルクローレ綾さんのブログを拝見しましたら、正解だったようすね(^_-)-☆
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。