花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ボルゲーゼ美術館「Caravaggio・Bacon展」(1)

2009-11-22 03:50:25 | 展覧会
ローマでボルゲーゼ美術館「カラヴァッジョ・ベーコン展」を観てきた。

 

何故カラヴァッジョとベーコンなのか?

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610)は言わずもがな、イタリア・バロックの革命的画家であり、フランシス・べーコン(1909-1992)はダブリン生まれの英国画家である。

ボルゲーゼとしてはカラヴァッジョ没後400年(本当は来年)、ベーコン生誕100年。共通点は「呪われた」極端な性格と絵画における天才的独創性、と言うのが企画の趣旨のようだが、私的には企画者がベーコン偏愛だったからのような気もする(^^;;;

ということで、今回の企画展の成否はカラヴァッジョ作品と対比させるベーコン作品の選択にかかっていたと思う。そして、観た感想を言えば、意外に面白かったのだ!



実際に観てみると、展示作品のテーマや構図の相似から見えてくる連想ゲーム的な面白さに思わずニヤリとさせられることが多く、二人の共通性が炙り出されてくるかのようだった。そして、カラヴァッジョの肉感的表現とベーコンの肉塊的表現が出会うとき、二人の作品が生身の人間というものを画面の中描き出そうと格闘した痕跡であることが了解される。カラヴァッジョの人物たちの口内の暗紅色の喘ぎ、ベーコンの人物たちの捻れ剥き出された容貌...。それをリアリズムと呼んでも良いと思う。

例えばテーマと構図の関連性が特に面白く感じられたのは2階展示室(第14室)だった。(カラヴァッジョ作品が集中していたっていうこともあるんだけれど(^^ゞ)

【展示作品】
「ロレートの聖母」(カラヴァッジョ:以降C)、「書き物をする聖ヒエロニムス」(C)、「ホルフェルネスの首を斬るユディット」(C)、「シピオーネ・ボルゲーゼの胸像」(ベルニーニ)、「イノケンティウス10世習作」(ベーコン:以降B)、「聖ペテロの否認」(C)、「イザベル・ローソンの肖像」(B)、「ゴリアテノ首を持つダヴィデ」(C)、「聖ウルスラの殉教」(C)、「蛇の聖母」(C)、「ルシアン・フロイトの肖像3つの習作(トリプティック?)」(B)

シピオーネ枢機卿とイノケンティウス10世という僧服肖像が並ぶと、その宗教的権威とは裏腹にある人間臭さが暴露されてくるようで実に楽しい(^^;;。また、聖ペテロを告発する女とローソンの鋭い一瞥のインパクトも面白かった!並べて見ると、視線の連鎖により、ローソンの視線にも顕わな不信感が込められているように見えてくる。人間洞察力の鋭さというか、描かれた人物の存在感が立ち上がってくる。更に、ローソンの鋭い眼差しはゴリアテの見開かれた目へと繋がる。ゴリアテはカラヴァッジョ自身である。フォロフェルネスの断末魔の見開かれた目、聖ペテロを告発する女の目、ローソンの目、そしてゴリアテの半眼の目、二人の画家の描く目には恐ろしい力が秘められているようにさえ思える。


カラヴァッジョとベーコンという時代を超えた組み合わせの妙と、カラヴァッジョ偏愛の立場から言えば、カラヴァッジョの現代美術と対抗できる色褪せない現代性を再認識できた興味深い展覧会だったとも言える(^^;;

が、唯一不満だったのは、展示会場が分散されていたことだ。名品の多いボルゲーゼでは展覧会自体を集中して楽しむことが難しい。まぁ、ボルゲーゼ美術館の核はベルニーニ彫刻群であったり、展示会場作りのために名品絵画移動が困難なことはわかるのだけどね。過剰な(?)作品は日本の「ボルゲーゼ美術館展」に貸し出して、空いたスペースを会場としてやりくりしたのだろう。日本は「カラヴァッジョ・ベーコン展」に大いに感謝しなくちゃね(^^;

ということで、次回はカラヴァッジョ作品を中心とした感想と、その他ローマで観たものなど書けたら良いなぁと思っている。本当に続きはあるのか?と、つっこまないでね(^^;;;


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