花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ニコラウス・クザーヌス『神を観ることについて』拾い読み(^^;

2022-08-09 02:18:15 | 西洋絵画

ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの絵画でもっとも有名な作品は、ブリュッセル市庁舎「黄金の間」に描かれ、17世紀まで現存していた「トラヤヌス帝の裁き」と「エルケンバルドの裁き」を描いた大きな4点の板絵である(1439-1450年)。4点とも1695年のフランス軍によるブリュッセル侵攻の際に失われてしまっているが、多くの記録や部分的に模写されたタペストリー、ドローイング、絵画などが現存している。

ご参考:部分的な模写タペストリー

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:After_Rogier_van_der_Weyden_-_The_Justice_of_Trajan_and_Herkinbald.jpg

ピウス2世(エネア・シルヴィオ・ピッコローミニ)の友人でもあるニコラウス・クザーヌス枢機卿(Nicolaus Cusanus, 1401 - 1464年)は、1452年にブリュッセルでこの作品を見ている。彼は特に、ファン・デル・ウェイデンが2番目の板絵に組み込んだ自画像に感銘を受け、目はどこでも観者を追いかけているように見えたと伝えている。

ということで、ニコラウス・クザーヌス『神を観ることについて』(岩波文庫)を図書館から借り、拾い読みしてみた。ロヒール作品に触れているところだけなのだが(汗)。

「・・・「万物を観ている人物像」・・・その顔は巧みな画法で描かれていて、あたかも万物を見渡しているような状態にあるからである。このような顏のなかでも、特に見事に描かれたものが、例えばニュールンベルクの広場にある射手の絵であり、またブリュッセルの大画家ロージャによって描かれて、そこの市庁舎のなかの極めて貴重な絵のなかにもある。」(P13)

ちなみに、翻訳者の八巻和彦さんの解説を読みながら、「愚直なクザーヌス」に目がウルウルしてしまった。ああ、ピウス2世の「I Commentarii」をぜひ読みたいっ!! 研究者の皆様、日本語訳をどうぞ出版してくださいませ!!

で、もちろん、デューラーの『ネーデルラント旅日記』(岩波文庫)にも「私はブリュッセルの市庁舎の黄金の間で、大画家ロヒール [ファン・デル・ウェイデン] が描いた四枚の物語絵(歴史画)を見た。」(P77)とあるのは有名だよね