花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

パラッツォ・レアーレ「MITO E NATURA(神話と自然)」展

2016-01-14 02:05:05 | 展覧会

忘れないうちにミラノのパラッツォ・レアーレ「MITO E NATURA(神話と自然)」展の感想をサックリと書きたいと思う。 

最初は「GIOTTO」展だけ観るつもりだったのだが、「MITO E NATURA」公式サイトをチェックしながらその展覧会構成を見て、おおっ、と思わずPC画面に身を乗り出してしまった。

①自然の空間  ②記号とメタファーとしての自然  ③神々の恵み農耕の自然  ④魅惑の庭園  ⑤自然から風景へ  ⑥現実の緑と絵画の緑 ⑦静物画とポンペイ遺跡の自然  (訳が適当ですみません) 

古代ギリシャ・ローマの自然の表現と人間の行動に焦点を当てた展覧会のようだが、当然(Naturalmente)、私が反応したのは⑤~⑦である。なにしろ「静物画」の起源である「クセニア」が観られるのだ!!故に、実際に展覧会を観た時も①~④はザ~ッと眺めながら通り過ぎてしまった(汗)。 

展示物はギリシャやポンペイからの出土品から構成されており、前半は主にギリシャの壺絵に見る神話世界の中で描かれた自然(農耕や植物など)に焦点を当てたもので、今まで何気に観ていた神話絵に対する新たな切り口が新鮮だった。

また、古代の装飾品や金冠など、その造形を植物から採用した例も展示されており、現代でも通用するデザイン性に目が惹かれた。植物(自然)は古代から造形作家にとり普遍的なデザイン・モチーフなのだと思う。 

で、やはり私的に面白かったのは⑤以降である。パエストラの《飛び込み男》の墓絵や、ヴェルギナのフィリポス2世(アレクサンダー大王の父)の墓絵など、古代の人々も現代の私たちと同じように自然と接していたことがよくわかる。

《飛び込み男》パエストラ  この絵画構成は自然のメタファーの再構築らしいが、う~む。

ポンペイ遺跡の壁画 《狩りの風景》ヴェルギナ 古代マケドニアの風景画!! 

先にBunkamura「風景画の誕生」展を観たが、ヴェルギナの《狩りの風景》ポンペイ壁画明暗表現や遠近法的奥行を含めた写実性に、「誕生」が相応しい気がしたほどだ。いや、もしかして「起源」なのかもしれないが、あまりにも近代的な作風に本当に驚いてしまったのだ!! 

今回の展示で私的に気に入ったのは、ローマ時代、部屋の壁に描かれた緑豊かな「庭の絵」だった。古代ローマ時代の部屋の壁に緑豊かな「庭の絵」が描かれている。庭の緑の色調の美しさ、小鳥たちがさえずり、噴水の水音さえ聞こえる。優美で、装飾的で、まるでフランドルのタペストリーのようだと思ってしまった。理想庭園なのだろう、そのデザイン性や美的構成に、なんだかウィリアム・モリスまで想起してしまう。

《庭の絵》ポンペイ(多分?)  古代ローマの理想庭園? うっとり♪  

さて、古代風景画にも驚いたが、今回の展覧会のお目当てだった静物画の起源としての「クセニア」(客への贈答品の代替画)も、その写実性に唸ってしまった。果物の明暗表現、水や酒の入ったガラス瓶の光の表現、収納棚の奥行(正確な遠近法ではないにしろ)など、生活環境を取り巻く自然や日常への観察力が半端ないのだ。

「クセニア」 ポンペイ出土  「静物画」の起源です!! 

後のキリスト教が席捲する時代(中世)の自然への眼差しとは何と異なることか!!それを肌で感じられたのが今回一番の収穫だったかもしれない。

会場のグッズ・ショップに関連書籍が置いてあった。もちろん『イタリアの静物画』の表紙はカラヴァッジョの《果物籠》♪♪