花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

バルテュスとピエール

2014-08-11 23:21:28 | 展覧会
NHK「日曜美術館」の再放送で「バルテュス」を見た。冒頭の映像で、アトリエに置かれたキャンバスに構図用の幾何学線が引かれていることに、「やはり!」と納得してしまった。

4月末に東京都美術館で「バルテュス展」を観た。バルテュス作品をまとめて観るとなかなかに面白い。ルネサンス好きの画家がフレスコ画的な(或いはテンペラ画的な)マチエールに拘るのはわかるし、ピエロ・デッラ・フランチェスカの幾何学的構図に触発されたような平行四辺形構図を多用するのも頷ける。論より証拠はアトリエのキャンパス!そして、描く対象は彼の偏愛する「少女」たち。



展覧会でも番組でも「誤解」としていたが、なんだかんだ言ってもバルテュスは基本的にロリコンなのだと思う。最初の妻は少女の頃に知り合ったのだし、シャシーで同棲したフレデリック(兄ピエールの義娘)も15歳、節子夫人は20歳だけど日本人って幼く見られる。でも、少女期の持つ青く危うい美とエロティシズムに魅せられたのは素直に了解される。多分、画家はその少女たちの危うさを、ぎりぎりの緊張に満ちた幾何学的構図と色彩的調和の中に永遠化しようとしたのではないか?



画中の光の中に少女たちの肢体が魅力的に映える…。モデルの少女たちは絵の中でバルテュスの扇情的ミューズとなる。

そう言えば展覧会でカラヴァッジョ《勝ち誇るアモル》によく似たポーズの作品があった。《めざめ(Ⅰ)》はもしかしてカラヴァッジョの少年好きにバルテュスが共感したのかもしれない(^^;


バルテュス《めざめ(Ⅰ)》1955年(スコットランド国立近代美術館)


カラヴァッジョ《勝ち誇るアモル》1601-02年(ベルリン国立絵画館)

独学で画家となったバルテュスの作品には、彼の偏愛するすべての要素が塗り込められているような気がする。

実は、その昔、私にとってバルテュスは「ピエール・クロソウスキーの弟」だった。
兄ピエールの作品で初めて読んだのが『ディアーナの水浴』。難解ながらも面白く、「見る」という行為を考えさせてくれた作品でもあった。次に読んだのは『バフォメット』。美少年登場で、幻想的かつ冒瀆的イメージの氾濫がなにやらキッチュな感じで…例えばデレク・ジャーマンの『ジュビリー』のような…。
所謂代表作は読んでいないので極私的感想だけど、作家は自分に染みついた宗教的なものを弄りまくっているような気がした。

 

まぁ、そんな兄が義理の娘を弟に押し付けるなんて、大いにあり得ただろうなぁと思うし、ある意味、似たもの兄弟...かも、などと思ってもしまう。あ、なんだか下世話な感想になってしまい、お許しあれ(^^;;