東京都現代美術館で「カルティエ現代美術財団コレクション展」を観てきた。
http://mot-art-museum.jp/special/cartier/
日頃から現代美術は苦手と言っているのにかかわらず、招待チケットを貰うとつい出かけてしまうゲンキンな花耀亭である(^^ゞ。しかしながら、今回の展覧会は意外にもすこぶる面白かったのだ。
まずはロビーに展示されていたアレッサンドロ・メンディーニ作の大きなカラフルな椅子のオブジェにワクワクするような楽しさを感じ、この展覧会はきっと面白いのではないだろうかと期待も膨らんだ。まさにそれを裏切らない作品展開で、第1室から、カラービーズを鏤めたライザ・ルーの「裏庭」に圧倒されてしまった!
「裏庭」は、緑の芝生(芝刈機まで!)も樹木や草花も、テーブルのランチセットに物干しの洗濯物、ホースから流れる水まで…アメリカ家庭のどこでもありそうな裏庭の風景物が、びっしりと埋め尽くされた煌くビーズで作られているのだった。燦燦たる「裏庭」の風景はリアルさを通り越したキッチュな異様さがあり、しかも感動的でさえある。
不思議だが、この普通の風景が異質な世界と化すところはまるでデヴィッド・リンチ監督作品のようだと思った。その細部まで緻密な手仕事の集大成はヤン・ファン・エイクの作品さえ想起してしまうほどだ。解説によれば、ボランティアの協力を得ながら3年がかりで仕上げた作品とか(・・;)。この燦燦たる「裏庭」の持つ圧倒的な迫力に現代美術への苦手感が少し薄らいでしまった。
ところで、今回面白いと感じた作品は何故か1階展示室に集中していたのだが、「裏庭」の隣りの作品であるメンディーニ「小さなカテドラル」も印象的な作品だった。モザイクでできた塔付きカテドラルはイタリアで普通に見る教会様式で、中の黄金色のモザイクはビザンチン風、祭壇に鎮座している像はキリストではなく、額に印のある仏像を想わせながらも、アフリカ風アルカイックな黄金像だ。要するに象徴としてのカテドラルなのだということなのかもしれない。
そして、今回の展示ハイライトとでも言うべきロン・ミュエク作の巨大な女性像!ベッドで物憂げな表情をしている女性のあまりにもリアル過ぎる造形と色彩….髪の毛や睫毛、肌の皺や薄く透けた静脈や赤味、頬に当てた指の触れる窪みなど、全てがまるで生きた本物のようであり、そして巨大なのだ! 観客は小人になってしまったかのような不思議な体験をする。大小という視点からのアイデアもだが、リアルな巨大人形を作り上げてしまう技術力にも驚いてしまう作品だった。
さて、もちろん3階にも面白い作品がある。アドリアナ・ヴァレションの「白いタイル」シリーズの「赤剥けの白タイル」など気持ち悪さがあるが、感覚がとてもリアルで良くわかるのだ。整然とした欧州世界も人間も一皮剥けば…。清潔で規則正しく並んだ白いタイルの裏側への想像力に参った。
映像作品ではウイリアム・ケントリッジの「ステレオスコープ」が興味深かった。木炭画をアニメにした作品で、消しゴムで消したり描き足したり、自在にイメージを展開させている。登場人物が分裂したり、猫が爆弾になったり、電話線が飛んで行ったり…コミュニケーションの難しさを描いているらしい(?)のだが、アニメ映像の斬新さを見ているだけでも楽しめた。
今回の展覧会は現代美術苦手意識を少し吹き飛ばしてくれた楽しいものだったが、面白いと思った作品は造形作品や映像に多く、絵画作品はどうもイマイチに感じられ、やはり古典絵画好きは治らないようだ(^^;;。しかしながら、現代美術の幅の広さにも触れることができ、収穫が多い展覧会となった。
それにしても、以前損保ジャパンで観た「ルノー・コレクション展」もなかなか良かったし、フランスは芸術振興を支援する企業のメセナ活動が活発なのだろうなぁ…。で、日本は??
http://mot-art-museum.jp/special/cartier/
日頃から現代美術は苦手と言っているのにかかわらず、招待チケットを貰うとつい出かけてしまうゲンキンな花耀亭である(^^ゞ。しかしながら、今回の展覧会は意外にもすこぶる面白かったのだ。
まずはロビーに展示されていたアレッサンドロ・メンディーニ作の大きなカラフルな椅子のオブジェにワクワクするような楽しさを感じ、この展覧会はきっと面白いのではないだろうかと期待も膨らんだ。まさにそれを裏切らない作品展開で、第1室から、カラービーズを鏤めたライザ・ルーの「裏庭」に圧倒されてしまった!
「裏庭」は、緑の芝生(芝刈機まで!)も樹木や草花も、テーブルのランチセットに物干しの洗濯物、ホースから流れる水まで…アメリカ家庭のどこでもありそうな裏庭の風景物が、びっしりと埋め尽くされた煌くビーズで作られているのだった。燦燦たる「裏庭」の風景はリアルさを通り越したキッチュな異様さがあり、しかも感動的でさえある。
不思議だが、この普通の風景が異質な世界と化すところはまるでデヴィッド・リンチ監督作品のようだと思った。その細部まで緻密な手仕事の集大成はヤン・ファン・エイクの作品さえ想起してしまうほどだ。解説によれば、ボランティアの協力を得ながら3年がかりで仕上げた作品とか(・・;)。この燦燦たる「裏庭」の持つ圧倒的な迫力に現代美術への苦手感が少し薄らいでしまった。
ところで、今回面白いと感じた作品は何故か1階展示室に集中していたのだが、「裏庭」の隣りの作品であるメンディーニ「小さなカテドラル」も印象的な作品だった。モザイクでできた塔付きカテドラルはイタリアで普通に見る教会様式で、中の黄金色のモザイクはビザンチン風、祭壇に鎮座している像はキリストではなく、額に印のある仏像を想わせながらも、アフリカ風アルカイックな黄金像だ。要するに象徴としてのカテドラルなのだということなのかもしれない。
そして、今回の展示ハイライトとでも言うべきロン・ミュエク作の巨大な女性像!ベッドで物憂げな表情をしている女性のあまりにもリアル過ぎる造形と色彩….髪の毛や睫毛、肌の皺や薄く透けた静脈や赤味、頬に当てた指の触れる窪みなど、全てがまるで生きた本物のようであり、そして巨大なのだ! 観客は小人になってしまったかのような不思議な体験をする。大小という視点からのアイデアもだが、リアルな巨大人形を作り上げてしまう技術力にも驚いてしまう作品だった。
さて、もちろん3階にも面白い作品がある。アドリアナ・ヴァレションの「白いタイル」シリーズの「赤剥けの白タイル」など気持ち悪さがあるが、感覚がとてもリアルで良くわかるのだ。整然とした欧州世界も人間も一皮剥けば…。清潔で規則正しく並んだ白いタイルの裏側への想像力に参った。
映像作品ではウイリアム・ケントリッジの「ステレオスコープ」が興味深かった。木炭画をアニメにした作品で、消しゴムで消したり描き足したり、自在にイメージを展開させている。登場人物が分裂したり、猫が爆弾になったり、電話線が飛んで行ったり…コミュニケーションの難しさを描いているらしい(?)のだが、アニメ映像の斬新さを見ているだけでも楽しめた。
今回の展覧会は現代美術苦手意識を少し吹き飛ばしてくれた楽しいものだったが、面白いと思った作品は造形作品や映像に多く、絵画作品はどうもイマイチに感じられ、やはり古典絵画好きは治らないようだ(^^;;。しかしながら、現代美術の幅の広さにも触れることができ、収穫が多い展覧会となった。
それにしても、以前損保ジャパンで観た「ルノー・コレクション展」もなかなか良かったし、フランスは芸術振興を支援する企業のメセナ活動が活発なのだろうなぁ…。で、日本は??