花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

春・旅行記(2)デン・ハーグ

2006-05-17 02:48:59 | 美術館
デン・ハーグのマウリッツハイス美術館を訪れるのは2度目になる。
http://www.mauritshuis.nl/index.aspx?siteid=54

前回(2002年)は中央駅から地図を見ながら10分ほどで美術館に着くことができた。今回は2度目だから大丈夫と高をくくっていたら、なんと方向を間違えて迷い子になってしまった(^_^;)。ちょうど通りかかったご夫婦に道を聞くと「散歩がてらに案内してあげる」と、連れていってもらうことに。
奥様はデン・ハーグ出身でご主人はフィリピン出身。現在アメリカ在住で、ちょうど奥様の実家に帰省中とのことだった。「あれがアメリカ大使館よ」と指差し教えてくれた様子をみるとアメリカ国民であることにとても誇りを持っているように感じた。多様な人種や移民によって構成されていても、アメリカ合衆国という移民大国の求心力はやはり強いのだと思う。

◆ マウリッツハイス美術館(Mauritshuis Museum)



ギャラリーへの階段を上ると「イタリアを夢見る/Dreaming of Italy」(11.03.06 - 25.06.06 )と題する企画展が開かれていた。昔から北方の芸術家たちが陽光あふれるイタリアを夢見ていたことはゲーテの「君知るや南の国を」でも知ることができるし、今回の展示作品からも見えてくる。ホルツィウスの銅版画《アポロン》など、アポロン彫像をスケッチしているのは画家自身のようにさえ見え、地中海古代への憧れが画面から溢れ出している。

古代ローマを憧れたのは16世紀の画家だけではない。19世紀英国タデマの作品は古代ローマへの憧れと夢とを繊細な女性像で色彩美しく蘇らせた作品だった。イタリアの陽光と言えば、やはりクロード・ロランもあり、ロランをリスペクトするターナーのベネツィアの陽光を描いた作品もあるし、時代を下ればコローもある。クロ-ド・ロランの《海港》を描いた作品など大作ではないが、主役の陽光 の美しさには魅了されてしまう。

しかし、この企画展で一際目を惹かれたのはベックリンの海に面したヴィラを描いた作品だった。画題はメモしなかったのだが、糸杉に覆われ静けさに満ちたヴィラはまるで《死の島》を髣髴させるかのようでもある。イタリアの強い陽光のなかでヴィラそのものの静寂さが異界への入り口へのようにさえ感じさせるのだ。



さて、今回の常設展示はレンブラント生誕400周年を意識しているようにも思えた。3階大ギャラリーには名作《テュンペル博士の解剖学講義》を始め、レンブラント作品、弟子たちの作品なども並ぶ。しかし、私的にどうしても目が惹かれるのはやはりユトレヒト派カラヴァッジェスキ作品で、今回「ん?ホントホルスト?」と思った《蝋燭を持った老女と少年》は何とルーベンス作品だった!
http://www.mauritshuis.nl/index.aspx?Chapterid=2374&Contentid=17643

ルーベンスがイタリア滞在中にCARAVAGGIOの《キリストの埋葬》を模写したことは知っているが、この明暗技法を見るとどれだけ大きな影響を受けたのかが推察できるようだ。老女の短くなった蝋燭の火から少年がもらい火をする。長く新しい蝋燭の火に少年の未来を象徴させたのだろう。蝋燭の灯りによる明暗、老女の炎の上にかざした手の短縮法と逆光の効果など若いルーベンスの研究心が描かせた1枚なのではないかとも思う。この作品をずっと手元に置いていたというのも面白く、もしかして、CARAVAGGIOの明暗技法をもらい火したルーベンス自身を描いた作品なのではないか..などと思ってしまう花耀亭である(^^;;;。ちなみに、この作品はマウリッツハイスの新規購入作品だという。

新規購入作品のもうひとつはJ・V・ライスダールの《ベントハイム城》を描いた作品だ。
http://www.mauritshuis.nl/index.aspx?Chapterid=2375&Contentid=17644
ダブリンのアイルランド国立美術館で観た《ベントハイム城》の素晴らしさには及ばないが(なんちゃって、ド素人が(^^;;;)、なかなかに心惹かれる作品だった。ベントハイム城の風格を持った佇まいを画家は視点や構図を変えながら描こうとしている。城を取り巻く風景の中で醸し出される存在感が画面から伝わってくるのだ。数多いライスダール作品の中でもこのベントハイム城シリーズは私的に好きな作品だ。