珈琲一杯分の話

2018年2月26日スタートのただのボヤキカフェです。
毒とユーモアを楽しんで頂ければ幸いでございます。

義母のアイスペール

2018-09-25 | 日記
私の義母はとてもお洒落な人である。
ピアスもネックレスも「お気に入りをしっぱなし」のような私と違って、幾つになっても、洋服に合わせてアクセサリーもきちんと変えてこられる。
「海ちゃん、ちょっと来て」と、宝石のコレクションを見せらえた時は圧倒された。

そんな義母が楽しみにしていたことは、息子のお嫁さんがきたら、そんなコレクションの中から
「これは長男のお嫁さんに、これは次男のお嫁さんに…」
と、それらをプレゼントすることだった。

でも残念ながら、私には宝石など豚に真珠で、殆ど興味がなくて、そのようなものを頂いても価値がよくわからなかった。
若かった私があっけらかんと
「お母さん、それは私は要りません」
と言ってのけたら、慌てた夫が必死にフォローした。
「こいつは何と言うか、はっきりしてるだけなんだ。宝石に興味ないだけだよ」

プレゼントしたがりの義母は考えて、それじゃあとコート二枚をプレゼントしてくれた。
サーモンピンクの上質な素材でできた柔らかい、その年流行りのハーフコートと、薄いブラウンのそれを。
黒とか紺ばかり着ていた私には、当時それが新鮮だった。
シングルボタンで、襟の形が洒落ていて、すごくセンスがよかった。
会社に着ていったら、2着ともいろんな人から褒められたので驚いた。

義母はそんなふうに、嫁と一緒にお洒落を楽しんで、それから趣味の手芸でレース編みなど一緒にやりたかったんだと思う。
だけど、私はその手のことは申し訳ないけれど兄嫁に任せて、実は全然違うことを考えていた。

私は、義母の広いキッチンの大きな食器棚にある、豊富な食器をひたすら見つめていたのである。
夫が「昔はカレーなんか作っても、ルーはレストランみたいに、銀のカップ(グレービーボート)から出て来たよ」という食器を、台所を手伝いながらつくづくと眺めていた。

昭和でこれを使っていたのはハイカラだったんだろうな。
根から料理好きだった田舎の実母も、本当はこんな食器で料理を盛りつけたかったに違いない…
同じように「手作り」にこだわった、境遇があまりにも違った二人の母親を一人思っていた。

私が目に留まったのは、何ともいえない鮮やかなブルーの、陶器でできたアイスペールだった。
ガラスやステンレスのアイスペールは知ってたけど、陶器の、蓋つきのそれを私は初めて見た。
「これ素敵ですね。どこで買ったんですか?」
と不躾に尋ねたら
「夫のゴルフ大会の商品で、宝物なのよ」と嬉しそうに返ってきた。

私は宝石より、実はこのアイスペールが欲しくてたまらなかったんだけど、さすがにそれは言えなかった。

これに大きなロック氷を入れて、賑やかにテーブルを囲んだ宴は幸せだったろうな…と実家へ行く度、私は見知らぬ義父とそれを毎回想像している。




コメント

女のナンチャラ

2018-09-25 | 娘と夫の話
娘の友達が誕生日だというのでプレゼントを用意したのに、彼女いわく「友達の機嫌がわるくてなかなか渡せない」と言う。

「機嫌がわるいからこそ、渡せば機嫌がよくなるよ」
「いや、きっと私なんかから欲しくないと思うよ。私を見る目が冷たいし。一緒に帰ろうって言っても無理ってすぐ断ってくるし」
「はっきりと理由を言われたわけじゃないんでしょ。気のせいでしょ?それとも明確に何かしたの?」
「何もしてないよ。この間の試合で、私が勝ってその子負けただけ」
ああ、またかと思う。

何回目かのそれだけど、この手のやっかみは短期決戦である。

こういう場合、友達は
「絶対勝つと気合入れていた私が負けて、ヘラヘラしててやる気のないアンタが勝つことに、なんか知らないけどすごい腹立つわ。
そりゃアンタは何も私にしてない。私を怒らせるような、そんなつもりも感情もないのは私も知ってる。
知ってるんだけど、でもそういう態度が余計ムカつくの」
とそのままは言わない。

黙るか、他に当たるか、別の理由を言ってくる。
人なんて気に入らなくなれば、茶わんの上げ下ろしまで嫌になるもので、理由なんて幾らでも思いつくもんである。

本当に自分の良心に曇り一点なく相手がわるいと思ったら、人は真っすぐ本人に言う。
はっきり言わないのにヘソを曲げるのは、どこかに少しでも「自分に持て余すもの」があるからと思う。
そういうものは、寝かせて熟成させてややこしくなるとさらに厄介ねん。

せっかく早めに用意したプレゼントを一日伸ばしにしている娘にハッパをかけて、無理やりでもカバンに入れさせた。
「明るく渡せばいいのよ。プレゼントをもらうとコロッと気が変わるのも女」
コメント