夫と出会ったのは、学校でも職場でも知人の紹介でもなく、本当に偶然だった。
私がたまたま実家に帰省していた22歳の5月の連休に、地元の某大学の前にあったジーンズショップで、若い男の子が(自分も若かったけど)自分のバンドのライブのチケットを配っていた。
夫は大学を辞めた直後で、アパートを引き払って他県の地元に戻っており、そこの学生ではなかった。
が、当時やっていたバンドの都合で、その日はたまたまそこにいたのだった。
たまたま同士がそこで初めて言葉をかわした。
私はライブには興味があったものの「すぐ東京に戻るので行けない」と断ったら、夫は驚いて「僕も来月から東京に住むよ?」と言った。
「東京のどこ?」と訊いたら、電車で15分くらいの近くだった。
地方から出てきて都会で一人暮らしをする若者にとって、知り合いは多いほど便利くらいの感覚で「じゃあその時また会おうか?」と電話番号を教えた。
雰囲気から警戒心は感じなかったけど、別にビビッと来たわけでもなく、ホントに軽いノリで。
一カ月後、ひと月前に10分くらいしか話していない、うろ覚えの顔を思い出しながら待ち合わせをして、ランチのカレーを食べた。
それからウン十年。
二人は結婚して、娘と同い年の姪っ子(夫の兄の末娘)が、何の縁か夫の辞めた大学に入学した。
町の様子もかなり変わって、夫と出会ったショップもずっと前に、3キロほど離れた場所に移転していた。
その姪っ子のアパートがやっと決まって驚いた。
移転したジーンズショップの隣だった。
縁結びのショップの縁はつづく🤣
そのショップの常連だった夫は、結婚式のキャンドルサービスにもそこのオリジナルのお気に入りを着た。
その他、シャツもパーカーもジーパンも手入れをしながら今も着続けており、そこまで大切にしていれば縁は切れないらしく。

