山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

無農薬野菜と直売所

2012-05-25 | 農業

 農産物直売所は地元で採れた農産物を途中の流通を省略して直接消費者に販売することにより、生産者と消費者を直接繋ぎ、新鮮な農産物を適切な価格で売買できることができ、双方にとってメリットがあるとされております。

 私は兼業農家(超零細)として、米(今年は減反で作付けゼロ)と野菜を作っております。野菜は「農業ことはじめ」で書いておりますように自家消費を基本としておりますが、多く採れることがありますので、それを直売所(ほたるの郷)に出荷しております。自家消費が中心ですので、化学肥料は用いませんし、見てくれはどうでも良いので無農薬です。目指すは「自然農法」ですが、現在はその移行期で自家製堆肥などの有機肥料は用いております。

 当然のこととして、直売所では有機・無農薬の表示はしておりません。化学肥料や農薬を用いた農産物と同じ価格設定をしております。自分が食べてみて美味しかったもの、そして安心・安全なものを普通に買っていただければ、それで充分に満足です。それは、私のような俄か百姓が自己満足で作っているもので、損得でやっているものでは無いからに他なりません。

 有機栽培や無農薬栽培と表示するためには、JAS法による規制があり、これを表示するためには認証機関の検査を受ける必要があります。しかも、毎年この検査を受ける必要があります。勿論のこと検査費用(10万円程度)が発生します。零細農家がたとえ有機・無農薬栽培を行っていたとしても、有機・無農薬栽培と表示することはできません。有機・無農薬と表示しても価格が10倍、20倍になるわけではありませんので、毎年発生する検査費用を賄うためにはそれなりの規模が必要です。

 有機・無農薬栽培と表示することによって付加価値が高くなるから、検査費用を負担するのは当たり前という、いわゆる受益者負担の考え方が根本にあるのでしょう。化学肥料や農薬を使用するのが常態化している中で、有機・無農薬という特殊な栽培方法を採用しているから、そのような考え方になっているのでしょう。

 ここで少し見方を変えると、有機・無農薬栽培が常態化しているならば、化学肥料や農薬を使っている栽培が特殊な栽培法と言える訳で、この場合には「これこれの化学肥料や農薬を使用して栽培しております。」と表示すべきことになります。消費者にとってもどのような農薬が使われているかは重要な情報ではないでしょうか?

 歴史的に見ても近代農業以前は、有機・無農薬栽培であったはずです。化学肥料や農薬を大量に使用することにより、生産量向上、生産コスト低減が図られてきました。ですから、化学肥料名や農薬名を表示することの方が、むしろ合理的であるのかも知れません。しかし、有機・無農薬と表示するだけで高く売れるのであれば、不正表示が横行するのではないかという懸念もあります。ですから受益者負担の制度が作られてきたのかも知れません。ここでこのような議論をしても仕方ないと思いますが、もう少し表示について配慮があっても良いのではないかと思ったりします。

 このようなことをつらつら考えている時に行われた栽培講習会で次のようなクレームの例が報告されました。直売所で購入したキャベツの芯に虫が入っていたとのことです。このようなクレームが無いような栽培を心掛けてくださいとのことでした。私は、それに対して違和感を憶えてしまいました。それは、農薬を使うことを奨励しているということと理解したからです。私の農薬に関する考えは「農薬について」で述べている通りです。一時は直売所から脱退することも考えました。私の虫食いの葉ダイコンやラディッシュなども、そのような目で見られているのかなと思うと何となく情けなくなってしまいました。

 しかし、一方で虫食いを承知で買ってくださる方もいらっしゃるのです。理解していただける方々に購入していただければ、それはそれで出荷する価値があることかと思い直したところです。直売所は生産者の名前が表示されます。ニーズの無い商品は売れ残るだけの話です。そういった意味では、生産者の自己表現ができる場でもあるわけです。有機・無農薬栽培が常態化することを目指して日々頑張っていこうと思っております。