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『孟子』巻第七離婁章句上 六十四節 六十五節

2017-09-05 10:16:30 | 四書解読
六十四節

孟子は言った。
「夏・殷・周の三代が天下を得ることが出来たのは、その始祖が仁政を行ったからであり、天下を失ったのは、その末帝が無慈悲な政治を行ったからである。諸侯の国の興廃・存亡も亦た同じことである。天子が不仁であれば、天下を保つことはできない。諸侯が不仁であれば、國を保つことはできない。卿や大夫が不仁であれば、先祖の霊廟を守ることはできない。士や庶民が不仁であれば、己の体を満足に保つことはできない。ところが今の人々は、死んだり亡んだりするのを嫌いながら、無慈悲な行いを楽しんでいる。これではまるで酔うのを嫌いながら、むやみに酒を飲むようなものである。」

孟子曰、三代之得天下也以仁、其失天下也以不仁。國之所以廢興存亡者、亦然。天子不仁、不保四海。諸侯不仁、不保社稷。卿大夫不仁、不保宗廟。士庶人不仁、不保四體。今惡死亡、而樂不仁、是猶惡醉、而強酒。

孟子曰く、「三代の天下を得るや、仁を以てし、其の天下を失うや不仁を以てす。國の所廢興存亡する所以の者も、亦た然り。天子不仁なれば、四海を保たず。諸侯不仁なれば、社稷を保たず。卿大夫不仁なれば、宗廟を保たず。士庶人不仁なれば、四體を保たず。今、死亡を惡みて、而も不仁を樂しむは、是れ猶ほ醉うことを惡みて、而も酒を強うるがごとし。」

<語釈>
○「三代」、夏・殷・周の三王朝。

<解説>
特に解説することもないので、趙岐の章指を紹介しておく。
人の安んずる所以は、仁を為すに若くは莫し、惡みて去ること勿ければ、患い必ず身に在り、上自り下に達するまで、其の道は一なり。

六十五節

孟子は言った。
「人を愛しても、相手が親しんでこなければ、自分の仁愛が足らないことを反省せよ。人を治めてもよく治まらない場合は、自分の智が足りないことを反省せよ。人に礼を尽くしても、相手が答えてくれない時は、相手を敬う心が足りないことを反省せよ。何事も自分の行動で、相手から思うような結果が得られない時は、常に己を省みて原因を己の中に見出すべきである。そして自分の身が正しくなれば、天下は自然と帰服してくるだろう。『詩経』にも、『私は長く天命に従って行動し、自ら多くの福を求めてきた。』と言っている。」

孟子曰、愛人不親、反其仁。治人不治、反其智。禮人不答、反其敬。行有不得者、皆反求諸己。其身正而天下歸之。詩云、永言配命,自求多福。

孟子曰く、「人を愛して親しまずんば、其の仁に反れ。人を治めて治まらずんば、其の智に反れ。人を禮して答えずんば、其の敬に反れ。行いて得ざる者有れば、皆諸を己に反求す。其の身正しければ天下之に歸す。詩に云う、『永く言、命を配し、自ら多福を求む。』」

<語釈>
○「詩云」、『詩経』大雅の文王篇、二十七節にも同じ句が出ている。

<解説>
短い節であるが、「行いて得ざる者有れば、皆諸を己に反求す。」とは、我々にとっても誠に大切な教えである。何事もとかく人のせいにしがちであるが。その前に己を省みるべきである。

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