ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツ発: 殺虫剤は、ミツバチの精子数を減少させている

2016-09-23 22:26:24 | 日記
2016年9月23日(Fri.) このところ、農薬(除草剤、殺虫剤など)や環境面に連関するような記事を取り扱うことがしばしばありますが、今日も、少し前のニュースではありますが、スイスの大学が発表した殺虫剤の成分 「ネオニコチノイド( Neonicotinoid )」 に関することを取り上げます。 ( ニュースソース: DW-DE 27,7,2016 発 )

<原文の一部>
Pesticides may be lowering sperm count of bees : 殺虫剤は、おそらく、ミツバチの精子数を減少させています。

New research has found that a controversial class of neurotoxins used in agriculture for pest control significantly impairs the fertility of male honeybees. Bee numbers in Europe and the US have been falling for years.

(抜粋)新しい研究成果によると、農業分野で除虫に使われている問題の神経毒は、雄のミツバチの生殖能力を著しく損ねています。 ヨーロッパとアメリカでのミツバチの数は、ここ数年減少を続けています。



The Institute of Bee Health at the University of Bern, Switzerland has carried out a study to explore the effects of two popular neonicotinoids, thiamethoxam and clothianidin, on the sperm of drones, or male honey bees.

Lead researcher Lars Straub said the presence of the chemicals could be "one reason behind the struggling bee numbers we've seen over the past 15 years in the northern hemisphere."

The pesticides are widely used in the USA. The European Commission is currently reviewing a temporary ban it imposed in 2013.

There has been an alarming decline in the bee populations in North America and Europe over the past 15 years. Bees account for an estimated 80 percent of plant pollination by insects.

(抜粋)スイスのベルン大学、蜂に関する研究機関は、ミツバチの精子数に関し、2種類の良く知られたネオニコチノイド 「 thiamethoxam と clothianidin 」 の影響について研究成果を発表しました。 研究者のリーダーは、この化学薬品は 「北半球で、ここ15年間にわたって見られる蜂(ミツバチ)の生息数問題の背景にある一つの原因」 になり得ると語りました。 この殺虫剤はアメリカで幅広く使用されています。 欧州委員会は、2013年に一時的な禁止措置にしたことを現在再検討しています。 
北アメリカとヨーロッパではここ15年以上にわたって、ミチバチ生息数の劇的な減少が観測されています。 ミツバチは、植物の受粉を行う虫全体の中の、推定80%に相当しているのです。

'Inadvertent contraceptive effects'
The researchers, led by Straub in Bern assigned batches of drones from 20 bee colonies to either insecticide exposure or control groups. They then took semen samples from males once they had reached sexual maturity.

The study published in the British journal Proceedings of the Royal Society B showed that widespread neonicotinoid use may have "inadvertent contraceptive effects" on the insects which provide fertilisation worth billions of dollars every year.

Male honey bees exposed to the neonicotinoids at levels found in fields showed, on average, around 39 per cent less living sperm. In addition, the mortality rate of the drones exposed to the pesticides during the study was almost doubled.

(抜粋)”不注意による避妊効果”:  前出の研究者によると、20コロニー(集団)のミツバチからサンプルを抽出し、殺虫剤を浴びるものと、制限されるものにわけました。そして、成熟したオスから精液をサンプリングしました。  発表された論文によると、拡散したネオニコチノイドの使用の意味するところは、毎年、数十億ドルの価値がある受精をする虫に対し、 「不注意による避妊効果」 を与えているようなものだと。  ネオニコチノイドにさらされた雄のミチバチは、平均として、39%の精子減少となっています。 加えて、研究中において、殺虫剤にさらされたミツバチの死亡率は、ほとんど倍増しました。



Honey bee queens make a single mating flight from the nest to collect sperm from as many as 20 different males, which they store within a dedicated organ over their entire lifespan. This is essential for the hive's survival as it provides genetic diversity which is essential for resistance to disease, parasites and environmental challenges.

"The process of the queen's mating flight is a one-time thing so it's really important that she collects plenty of quality sperm," Straub said. If she does not, then worker bees will sense the queen is ineffective and kill her. "As the primary egg layer and an important source of colony cohesion, the queen is intimately connected to colony performance," the paper said.

The new study adds reduced sperm quality to the list of possible causes for "colony collapse disorder" in Europe, North America and elsewhere, which has alternatively been blamed on mites, a virus or fungus, pesticides or a combination of all of them.

Previous studies have found neonicotinoids can cause bees to become disorientated to the extent that they cannot find their way back to the hive, and can lower their resistance to disease.

(抜粋)ミツバチの女王蜂は、1回の生殖行動を行うために巣から飛び立ち、20種(コロニー)に及ぶオス蜂から精子を獲得します。 これは巣箱の生存に関して本質的なものであり、病気や寄生虫、さらには環境変化などに対する抵抗力を含めた遺伝子の多様性を生み出すものでもあるのです。
女王蜂のこの1回だけの生殖行動は非常に重要であり、彼女(女王蜂)は多くの種類の精子を集めます。 もし、彼女がそれを行わなかった場合は、働き蜂は女王は無能であることを感知し、彼女を殺してしまいます。 重要な卵巣として、また、コロニーの結束の源として、女王蜂はコロニーの中核機能として密接な役割を果たしていると論文で説明されています。
新しい研究成果からは、精子の品質の低下は 「コロニー崩壊の障害要因」 になり得るものとしており、ヨーロッパでも、北アメリカでも、そして、どこにおいてでもです。 障害要因としては、ダニ、ウィルス、菌、殺虫剤、または、それら全ての組み合わせも含めて、以前からコロニー崩壊の可能性とされているものです。
また、以前の研究においては、ネオニコチノイドは、ミツバチの帰巣するための方向感覚を失わせる原因になり得ることや、病気への抵抗力を低下させることにもなることが判っています。


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殺虫剤のネオニコチノイド(ネオニクス)が、ミツバチや蝶などを含む多くの受粉の役割をしている虫を死に追いやっている事実があります。 殺虫剤の意図するところは、いわゆる農作物にとっての害虫を駆除することにあったのでしょうが、益虫(?)にも作用して、食糧危機に至るかも知れない危険を生み出しているのではないでしょうか。

各国の研究機関などが警鐘を鳴らしているようですが、メーカーや行政府などの動きは鈍いか、または、自らの立場を正当化している報道も目にします。研究成果に客観性・妥当性があるのであれば、確定的ではなくても、安全サイド志向で判断したいものです。 つまり、安全確保を最優先すると言うことです。

一方で、こうした殺虫剤などの農薬に頼らざるを得ない農法は、大量生産(大規模農圏)になればなるほど使うことになるのではないでしょうか。安くて・安定的に供給することが目的であったとしても、取り返しのつかない大弊害を伴うことが判明、または、恐れがあるのであれば、これも舵を大きく切るべきでしょう、即刻。

行き着くところは、オーガニックな世界です。 コストもかかるかも知れませんが、本来の安全・安心を確保するためには、妥当な対価なのではありませんか。

また、ネオニコチノイドが、人体に影響を与える心配はしなくてよいのでしょうか。 男性の生殖能力に影響を与えていないと言えるのでしょうか。



除草剤成分のグリホサートが、多くの人の尿から検出されたとの内容は、昨日(9月22日)の当ブログでUPしましたが、これは発がん性を有するもので、由々しき問題でしょう。 GMO(遺伝子組み換え食品)に含まれていると言うことです。

EUにおけるCETA,TTIPや、日本を含む環太平洋でのTPPも、こうした懸念を増幅する方向になっていませんか。 「目的」が怪しげで、「大弊害」が隠蔽されていないでしょうか。

既に、「知らぬ間に」、GMOを含む食品・飲料(ビール、発泡酒、ジュースなども)が市場にあふれているのではありませんか? 日本では。

一体、何をやっているのでしょう。 メーカーや政治家・行政は・・・。


*** 下の写真は、記事内容とは関係ありません。




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