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部下の成長は上司次第

2018年09月12日 | コンサルティング

 「技術面では向上の余地は山ほどある。今後もピースを埋める作業は我慢強くやる」

これは先日、テニスの全米オープンで初優勝した大坂なおみ選手の指導者、バインコーチの言葉です。

昨季までの大坂選手は、元々持っていた力を試合で発揮できないときもありましたが、今季からコーチがバイン氏に替わり、飛躍的にその力を発揮できるようになっています。

その結果が今回の優勝につながったのでしょう。それでは、1年にも満たないこの短期間に、バインコーチは大坂選手にいったいどういう指導をしたのでしょうか?

報道によると、バインコーチは大坂選手の引っ込み思案な性格や、物事をネガティブにとらえたりするなどの性質を踏まえて、「練習はできるだけ楽しくなるように、そしてポジティブな雰囲気を作ろうと思っている」とのことです。

たとえば、大坂選手が良いショットを打てば、大げさにほめて大坂選手のやる気を向上させたり、反対にミスをして気分が落ち込んでしまいそうなときには、「なおみはできる」とフォローをしたりするとのことです。確かにテレビを通して、何度かそういう場面を目にしました。

また、バインコーチは大坂選手に伴走するように、食事も炭水化物を控えたり練習時も笑顔で併走したりして、一緒に汗を流すことを心がけたとも言います。

ラリーやサーブの練習では、「負けたら渋谷の交差点でダンスする」、「苦手な納豆を食べる」など、罰則ありの勝負形式で意欲を起こさせる。そして、バイン氏が負けると罰則としてスクワットをして、それを大坂選手がニヤニヤしながらスマホで撮影するなど、練習は笑いが絶えない時間であるとも報道されていました。

つまり、バイン氏は指導者として大阪選手の長所・短所を的確にとらえ、最も適している指導を行い、今のような成長をさせたと言えます。

さらに、上から一方的に指導するのではなく、自ら選手と同じ境遇に身を置くことによって、同志として選手とともに戦っていることも理由の一つと言えるのではないでしょうか。

これらの指導は、今回の大坂選手の活躍によって美談として語られていますが、ここに至るまでの指導者として道のりは決して簡単なものではなかったはずです。

話は変わりますが、弊社が担当させていただく管理者研修では、「部下が仕事をおぼえない」、「なかなか成長しなくて困っている」という声を受講者からよく聞きます。

確かに、簡単に部下は簡単に成長するものではないでしょう。でも、そういう管理者に限って、実は部下が「育たない」のではなく、「育てていない」こともありそうです。

このような管理者の話をよく聞いてみると、「部下指導をしたいけれど、忙しくてその時間がとれない」であったり、「部下が大勢いるので、一人一人の性格や特性に合わせた指導などできない」などと、できない理由を次々に挙げたりします。

つまり部下が育たない原因は、そもそも管理者が育てることをしていない可能性も高そうなのです。

よく、若手社員の早期退職を防ぐためにはどうすれば良いかについて質問を受けることがありますが、そもそも若手社員が退職を決断する理由は何なのかを考えてみる必要があります。

その理由として給料や休暇といった条件面が考えられることが多いですが、実は上司の指導や上司との人間関係を理由に退職する人が少なからずいるであろうことを忘れてはなりません。

上司の指導によって部下を大きく成長させることもできるし、その逆もありうる。今回の大坂選手の活躍を見ながら、改めて感じました。

「部下が育たない」と考えている上司は、先ずは自分の指導法を振り返ってみることをお勧めします。

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