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中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,147話 立場は人をマイナスの方向へ変えたり、立場が人を育てたりする

2022年12月21日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「お前変わったもんだな!昔は誰彼構わず頼みを聞いてやっていた。立場は人を変えるな」

これは、先日最終回を迎えたNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で主人公 北条義時の幼馴染で従弟の三浦義村が、民からの頼みごとを跳ねのけた義時へ向けて言った言葉です。

ドラマでは、伊豆の地方豪族 北條氏の次男として生まれた義時が、やがて鎌倉幕府の執権となり権威を振るうまでを描いていましたが、ドラマの前半と後半で義時の人となりが大きく変化していました。これはまさに、三浦義村の言葉のとおり「立場が(義時の)人を変えた」のではないかと思います。

そして、このことはドラマで描かれた鎌倉時代だけの話ではなく、現在の組織においても同じく「立場は人に大きな影響を与える」ものであると思います。立場を得たことで成長する人もいれば、反対に権威を笠に着て自分勝手な言動を繰り返す人もいます。

実際に、社長という権威を得たことで周囲を納得させる努力をしようともせずに、ことあるごとに「社長の俺が決めたことだ!」と大声で繰り返す人を私も見たことがあります。これは残念ながら立場が人をマイナスに変えてしまった例と言えるでしょう。

一方、立場を得たことがプラスに働き、大きく成長する人もいます。経営者や管理職になる前は、この人にその役職が務まるのだろうか?と周囲が少々頼りなく感じていたような人が立場を得たことによって、その後大いに信頼される経営者や管理職に大きく成長する人もいます。まさに「立場が人を育てる」という状態になったのです。

このように、時によって「立場」は人をマイナスの方向に変えたり育てたりすることがあるわけですが、では「立場が人を育てる」ようになるためには、どうすればよいのでしょうか?

立場をプラスにできるかマイナスにしてしまうかは、もともとの本人の人間性やその立場のロールモデルの有無、さらには本人の意識の問題などが影響するものだと思います。長年かけて形作られた人間性を変えるのはなかなか難しいものでしょうし、ロールモデルの有無を問うたところで、それはいたしかたないことでしょう。

一方で未来志向で考えるならば、立場に対する明確な意識の醸成こそが必要ではないかと私は考えます。そして、その立場に求められるしっかりした意識を醸成するためには、必要な知識やスキルを確認した上で、身に付いていないものは目指すべき目標として設定し、一歩ずつ身に着けていくことが必要なのだと思います。地味な取組みではありますが、立場を得たことによる影響は良くも悪くもその配下の人達にも及ぶのです。その人達がやる気をもって働けるようにするためにも、避けては通れない道のりなのだと思います。

ドラマでは、義時は源頼朝や自分の父 北条時政、時には上皇様や周囲の御家人たちの振る舞いをも見ながら、自分なりの意識を作りあげていき、そして最後には「闇落ち」してしまったように思えました。

せっかく得た立場をプラスの方向に使うのか、マイナスの方向に使うのか。ぜひ「立場が人を育てる」結果となるように使っていただきたいと考えています。

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第1,146話 森保監督の3つのリーダーシップ

2022年12月14日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。(冒頭の写真はWikipediaより)

「今後、ヨーロッパに監督の勉強に行きたい」

これは、FIFA ワールドカップサッカー 日本代表チームの森保一監督がインタビューで何度も語っている言葉です。

ワールドカップでは悲願のベスト8にこそ残れなかったものの、十分な実績を残した監督として、この言葉は非常に謙虚だと感じます。監督としてさらなる上を目指していこうとされている森保監督とはいったいどういう人なのか?メディアでもたびたび取り上げられていますが、私自身も非常に興味深く感じていますので、森保監督のリーダーシップを3つの視点から考えてみました。

私が思う森保監督のリーダーシップの1点目は、選手をはじめ他者を尊重(リスペクト)する、2点目はいつも安定感がありフラットである、3点目は試合中こまめにメモをとるです。

1点目について、日本テレビの「スイッチ」(12月12日)に出演していたゴールキーパーの権田選手が次のように語っています。

「森保監督は本当に選手一人一人とのコミュニケーションを取り、リスペクトを持って接してくれる。それと試合に出ている選手だけじゃなくて出ていない選手、今回の大会では出られなかった選手が4人いるんですけど、その4人の選手に対しても常にリスペクトしていて、そういう姿勢っていうのは、僕は森保ジャパンの立ち上げから入れてもらってますけど、ずっとその感じは変わらない。それはチームにとってプラスだったなと思っています」

森保監督が選手をリスペクトしていることは、様々な選手からも異口同音に発せられていますし、代表メンバーを選出する前にも様々な選手に会いにヨーロッパを回ったという話もたくさん報道されていますので、本当に他者を大切にする人なのだと想像します。

2点目の安定感があると感じるのは、ゲーム中に追い詰められているとき、負けてしまったとき、試合後にインタビューを受けているとき、そして帰国後の会見など、どういうときであっても、興奮していることがなく安定している、フラットな人だという印象を持っています。ドイツ戦に勝利した後、選手に「一喜一憂するな」と大きな声を出して語り掛けていましたが、監督自身がそれを地で行っていますので、非常に説得力があると感じました。いつもフラットでいられるのは元々の性格なのか、それとも監督として采配を振るう中で獲得したものなのかはわかりませんが、選手にとっては監督への大きな信頼感につながるものではないかと思います。

そして、3点目はメモをよくとるということです。テレビのワイドショーによると、多いときは20回以上とっていたそうです。様々なメディアからの「試合中、何を書いているのですか?」という質問に対して、監督は次のように答えています。「試合中はシュートを打った、ディフェンスはやられたなどと書き、その内容がコーチと合致すればハーフタイムで伝える。さらに試合後はロッカールームでも記入し、勇気や勇敢に戦ってくれてありがとう、この成長が大切だと選手に要望することを書いている」とのことです。このように細かく記録をとっているからこそ、根拠に基づいた説得力のあるアドバイスや指導ができているのではないでしょうか。

これらが、私が思う森保監督ならではのリーダーシップです。この3点をやり続けることは決して簡単なことではないと思いますが、森保監督は成し遂げ続けているのです。

スポーツの監督のみならず企業においても、管理監督職をはじめとしてリーダーシップの発揮が様々な場面で求められるわけですが、森保監督の言動を通してリーダーシップを身に付けるためには、地道な努力が必要なのではないかと改めて考えています。

森保監督のリーダーシップに大いに期待したいと考えている私は、今後も監督の一挙手一投足に目が離せません。

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第1,145話 「ブラボー! 自分の武器になるリーダーシップとは」

2022年12月07日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。(冒頭の写真はYahoo!ニュース  Yahoo! JAPANより)

今年の流行語大賞にこそならなかったですが、FIFAワールドカップ カタール大会に出場した長友佑都選手が発した「ブラボー」は、日本チームのみならず、応援する我々にも大変大きな影響力を発揮した言葉であることは多くの人が頷くところでしょう。

インターネットに公開されている動画によると、1次リーグの最終戦のスペインとの激闘の後のロッカールームで、長友選手が他のメンバーを指しながら「ブラボー、ブラボー、ブラボー、ブラボー、ブラボー!」を連発しながら、次々にメンバーをハグしていました。また、同点ゴールを決めた堂安選手には、ハグをしながら「おまえ、すげえな。次もがんばれ」と声をかけていました。

長友選手は、これまでワールドカップに4回出場しています。この間、キャプテンにこそなってはいませんが、毎回長友選手ならではのリーダーシップを発揮してきています。「リーダーシップ」の定義は様々ありますが、私は長友選手は「明るさ」によってプラスの影響力を発揮したと考えています。あのハイテンションで「ブラボー!」を注入されたら、自然と周囲は前を向いて頑張ろうという気持ちになるのではないかと思うのです。

実際、長友選手もインタビューで次のように語っています。「今の選手1人1人のキャラクターを考えたとき、自分はどういうキャラでチームにいれば良いんだろうと。どんどん熱を出していかないといけない、使命的なものを感じた。熱を出すことで確実にチームにプラスになると思った」まさに「ブラボー」でチームに熱を込めたのだと思います。

加えて、長友選手は後輩を気遣う言葉もたくさん発しています。インタビューでは、「批判は自分がすべて受け止める」、「後輩を讃えてほしい」、「勇気を持ってPKを蹴った選手たちを讃えてほしい」。さらにクロアチア戦のPKでゴールを決められず、試合終了後に動けなくなった選手たちに真っ先にベンチから駆け寄り、声をかけ背中をさすって回っている姿も見ることができました。こうした言動を通じ、明るいだけでなく後進を育てようとする長友選手の姿勢も強く感じられます。

長友選手はワールドカップで自分らしいリーダーシップを発揮したわけですが、それでは企業において長友選手のように「ブラボー」を連呼すれば、良い影響を与えることができるのかと考えると、それだけではやはり難しいと思います。今回の長友選手のようなテンションで四六時中「ブラボー」を連呼されたら、周囲は鬱陶しく感じるようになってしまうはずです。ワールドカップという限られた期間だからこそ、長友選手はプラスの影響力を発揮できたのではないかと思います。

実際、長友選手もインタビューで「耐え忍んで耐え忍んで、輝く時間は一瞬だけど、そのために夢見て、苦しいことを乗り越えて、頑張り続ける。サッカー選手は桜の木のようだなと感じている」と発言しています。短期間だからこそ、輝くほどの良い影響力を発揮できたということなのではないでしょうか。

そのように考えると、ビジネスパーソンの組織においても、ここぞというときに瞬発力を発揮し、自身の武器によって周囲にプラスの影響力を発揮できるようになるのが大切なのではないかと思うのです。そして、ここぞというときにリーダーシップを発揮できるようになるためには、準備が必要です。まず、自身にとっての武器は何なのか、を探すことから始めてみることが大切なのではないでしょうか。さて、あなたにとってブラボーに匹敵するような武器とはどのようなものでしょうか。

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第1,130話 社会的手抜きをしてしまうのも人間

2022年08月24日 | 仕事

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「アイディアを出す際には、一人で考えるよりも4~5人のチームでディスカッションをする。さらにそれを全員で共有すれば、たくさんのアイディアを知ることができる」との考えから、弊社が研修を担当させていただく際には、様々な演習に取り組んでいただいています。

はじめに個々で課題に取り組み、次にそのアイディアを補足し強化するために、チーム内で共有する。そして最後には受講者全員で共有をしています。そうすることによって、たとえば一人で考えたときには5つくらいしかアイディアが浮かばなかったとしても、チームで共有することにより20くらいのアイディアになり、さらには受講者全員で共有することで、さらに多くのアイディアを知ることができるようになるのです。

研修のみならず仕事においても、個人で取り組むよりもチームで取り組んだ方が成果が上がることが多いからこそ、チームを作り共通の目標を持ち、お互いに協力し合って仕事を進めているわけです。これに加え、やり方やしくみ、手順などの見直しを行うことにより、単純に個々人の能力を合計した以上の力が発揮できるわけです。

しかし、人が集まって目標に向かうことにはメリットがある一方で、マイナスの面もあるのです。それは、複数人がともに一つのことに取り組むことによって、「社会的手抜き」が発生してしまう可能性があるからです。

「社会的手抜き」とは、20世紀初めのフランスの農学者であるマクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann)によって示された心理的な働きを示す言葉です。人間が集団で作業を行うと、個人や少人数で作業をするときよりも1人あたりの生産性が低くなってしまうという現象を言います。社会的手抜きは「他のメンバーがやっているから自分は適当にやっても大丈夫だろう」「誰かがやってくれるだろう」という思いから生じるものです。そのように考える理由としては自分の頑張りにかかわらず結局は集団として評価される、自分の頑張りは評価されないということがあります。

人は他者の存在があると、意識しなくても社会的手抜きを起こしてしまいかねないということです。集団のサイズが大きくなり大人数で作業を行う環境下であるほど、結果として1人当たりの作業量は小さくなってしまい、期待通りの成果が得られないということも考えられるわけです。

確かに、私自身も以前あるプロジェクトのメンバーになった際に、自分の負担が増えることを恐れてしまい、積極的に発言をしなかったという経験があります。また、最近プライベートで合唱の練習をしているのですが、歌唱力に自信のない私はつい他の人の歌唱力におんぶをしてしまったという経験もあります。これらはいずれも、私自身が社会的手抜きをしていたということです。

チームを組み、互いに目標やゴールを十分に理解したうえで、最大限の成果を目指して取り組んだとしても、一方でメンバーが社会的手抜きを起こしてしまう可能性もある。チーム力を最大限発揮するためには、人はこうした両面を持つということを踏まえたうえで、一人一人に課題を与える、一人一人の貢献をきちんと評価するなど社会的手抜きを起こさせないための取り組みを同時に行うことが求められます。あなたのチームでは、どのように取り組んでいますか?

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第1,127話 主体的な人が求められているわけ

2022年08月03日 | 仕事

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「積極的に、前向きに、主体的に取り組んできたことがよかったのだと思います」

これは、つい先日お会いした、ある製造業に勤める女性(Aさん)から聞いた言葉です。

Aさんは34年前に高校を卒業後、新卒として製造業であるB社に入社したとのことです。入社後何度か異動し、その都度主体的に精一杯働くことでキャリアを重ねてこられ、現在は総務部で育成と採用の仕事をされています。

Aさんは入社後の自身のキャリアを、次のように話してくれました。

「はじめは営業管理部に配属されました。そこでは、自社の製品を覚えることができたのです。また、電話を積極的に取っていたら、どういう会社と取引しているのかを知ることもできるようになり、次第に相手の声を聴いただけで、どのお客様からの電話で、どういう用件でかけてきたのかがわかるようになりました。次は生産管理に行きました。そこでは、生産を管理するのですから、一気に製造業の理解が深まりましたね。その次は製造部門でした。男性ほどには重いものを持ち上げることはできませんでしたが、プレス加工の現場に女性として入りました。面白かったです。でも、製造部門にいるときにリーマンショックがきてしまい、会社は人員の整理もすることになりました。その次に起きたのは東日本大震災でした。そのときは、初めての夜勤もしました。大変でした。そうしているうちに、今度はインドネシアからも実習生がやってくるようになりました。何とか彼らとコミュニケーションをとりたくて、インドネシア語の会話集を購入して勉強したら、ようやく挨拶ができるようになり、少しずつコミュニケーションもとれるようになりました。その後、帰国してしまっても次の実習生がまたやってきて、前に来ていた人からの手紙を言付かってきてくれたりしたため、元気にやっている様子がわかりました。そして、18年前から総務部で仕事をしています。それまでの経験を買ってもらえたようで、声がかかったのです。現在は採用や育成をしていますが、とても楽しいですし、幸せです」とのことでした。

これがAさんの34年間のキャリアですが、この話をした後に「積極的に、前向きに、主体的に取り組んできたことがよかったのだと思います」と、生き生きとした表情で語ってくれました。

「主体的」という言葉、これは企業の経営者が新卒を採用する際に、切に願うキーワードではないでしょうか。2018年度まで毎年日本生産性本部が実施していた「経営者が大卒新人を採用時に重視すること」で、10年連続で主体性が2位にはいっていました(因みに1位は16年連続でコミュニケーション能力でした)。

この「主体性」については、様々な企業の経営理念や求める人材像に取り上げられることの多いワードだと感じます。自分から率先して行動できる人材を求める、何事にも好奇心を持ち、チャレンジできる人材を求めるなど、多くの企業が主体性に関わる人材を求めていることがよくわかります。これだけ多くの企業が求めている主体性ですが、裏を返せば主体的な人はさほど多くないからこそ、重要視され求められているということなのではないかと思うのです。

実際のところ、主体的に仕事をしたり生きていくということは、口で言うほど簡単なものではないのだと思います。だからこそ、主体的な人が求められるわけですし貴ばれるのです。そして、主体的に生きてきた人だからこそ、手にできる経験やキャリアがあるのだとも思います。

Aさんの様々な部署での経験は、一朝一夕で培うことができるものばかりではなかったでしょうが、それを経たからこそ今があるわけです。

Aさんの話には続きがあります。昨年技能検定を受験し、合格をしています。さらに、今後別の科目で技能検定を受験することも視野に入れて、現在は中学の理科の教科書を読み直しているそうです。「勉強も楽しくて」と語るAさん、どこまでも前向きで主体的な人です。

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第1,123話 知っていることを実行に移すのは難しい

2022年07月06日 | 仕事

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「知って行わざるは、知らざるに同じ」

これは、江戸時代の本草学者、儒学者の貝原益軒の言葉です。「知っていても行動に移さなければ、全く知らないのと同じことだ」という意味です。この言葉を耳にするたびに、知識を持ってはいても、それを基にして行動することは簡単なことではない。実行するということは、次のステージに上がらなければならないことだと改めて感じます。

さて、最近、新聞などの広告でスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」という書籍について、全世界で累計4,000万部、国内で240万部を超えて読まれ、20世紀にもっとも影響を与えたビジネス書だという宣伝をよく目にします。

既にお読みになったという方も多いと思いますが、簡単に内容を紹介すると、「主体的である」こと、「終わりを思い描くことから始める」こと、「最優先事項を優先する」ことをはじめとして、全部で7つの習慣を通して「成功を手に入れ、充実した人生を送る」ための方法が紹介されいます。

実は私自身、1996年に日本語版が出版された際に読んだ一人です。その後も、「マンガで学ぶ7つの習慣」、「13歳から分かる!7つの習慣」など、新たなバリエーションが出るたびに読んでいますので、7つの習慣そのものは一通り理解したつもりになっています。しかし、では、それらをどれくらい実行できているかとなると、正直なところあまり自信はありません。

この本の7つの習慣に限ったことではありませんが、私たちが知識として学んだものを自分のものとして身に着け、それに基づいてしっかりと実行に移すということは、決して簡単なことではないのです。

明時代の中国の陽明学に「知行合一」という言葉があります。これは「知って行わないのは、真に知っていることではない」ということであり、冒頭の「知って行わざるは、知らざるに同じ」と同じ意味合いです。

かように「知ったことをしっかり実行する」ことは難しいものであり、私たちのとって永遠の課題の一つなのではないでしょうか。「7つの習慣」が世界で4000万部も売れているということはその裏返しであり、「知」を「行」に結び付けたいという思いを持つ人がいかに多いかということを示しているのかもしれません。

さて、皆さんは知ったことをしっかり実行に移すことができていらっしゃるでしょうか?これを機会に、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

(冒頭の写真はウィキペディア⦅Wikipedia ⦆より)

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第1,119話 コロナ禍で働き方改革は進んだのか!

2022年06月08日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「以前は週に数日テレワークを取り入れていましたが、現在は毎日出社しています」

これは最近、研修のご担当者や受講者にお会いした際に聞くことが多くなった言葉です。

新型コロナウイルスの感染防止もあり、一気に導入が進んだと感じていたテレワークですが、実際のところ現在の状況はどうなっているのでしょうか?

弊社が担当させていただいている公開セミナーの際に、参加者にテレワークをしているか否かを伺うことがありますが、その結果は現在もテレワークを導入している企業は、毎回ほぼ3割前後だと認識しています。東京商工会議所の2022年2月に行った調査でも、この2年間のテレワーク実施率は、緊急事態宣言や蔓延防止の期間はテレワークの実施率が上がるものの、それ以外はおおむね3割程度で推移しているようです。

また感染状況とは別に、規模の小さい企業ほどテレワークの実施率が低いようですが、前記の調査データでは企業規模の大小を問わずテレワーク実施率は増加しているとしていますので、この点はセミナーや研修の現場で感じる状況とは少し乖離があるようです。

現在の導入状況には多少の差はありそうですが、それではテレワークの導入によって働き方改革は進んだのでしょうか?働き方改革はもともと政府が主導して進めていたものであり、コロナ禍で一気に進展したとも言われていますが、本当に進んだのでしょうか?

働き方改革では、長時間労働の是正をはじめとして雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、柔軟な働き方ができる環境の整備等々が掲げられていました。そしてこれによってもたらされるメリットには、生産性の向上がありました。しかし、前記の商工会議所の調査においては、テレワークの実施によって定型的な業務の生産性は確かに向上したものの、一方では社内外におけるコミュニケーションが不足してしまったり、労務管理がうまくいかなかったりということも起こってしまっているようです。その結果、当初の狙いとは逆に長時間の労働に至ってしまうケースも少なくないようです。

このように考えると、テレワークを通じた働き方改革は現時点では残念ながら期待していたほどには進んではないようです。もちろん、この間にオンラインツールを活用した会議などによって生産性が向上したというケースはありますし、マスコミなどでも大企業などでは目に見えて働き方が変わったという人のことは頻繁に取り上げられています。しかし、働き方改革が進んだのか否かという観点で全体を通してみれば、まだ一進一退と言わざるを得ないのが実際のところではないでしょうか。

コロナ禍をきっかけにしたテレワークの導入が大きな弾みになったことは確かですが、最近ではテレワークから出社へと戻す例も出てきているようです。今現在は様々な試行錯誤を続けている段階と言えるのかもしれませんが、日本において本当の意味での働き方改革が進むまでには、もう少し時間がかかるのかもしれません。

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第1,117話 部下の評価が甘くなってしまうのはなぜか

2022年05月25日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「管理職の部下への評価が甘いのです」

これは、管理職による部下の評価に関して問題意識を持っている企業のご担当者から定期的に聞く言葉です。

評価をする際に陥りやすいエラーの一つとして、寛大化傾向があります。これは、文字どおり評価全体を寛大に行ってしまうことです。具体的には、特定の能力や特性について実際よりも良く評価すること、また、頼りにしている部下を実力以上に評価するなど、評価全体を甘くしてしまうことです。

では、なぜ管理職は部下の評価をなぜ甘くしてしまうのでしょうか?先日、この点について既に管理職になっている人にインタビューをさせていただく機会をいただきました。その結果は、主に次の3つに分けられます。

A管理職:「直属の部下の評価をよくしたいと考えるのは、管理職として当然のことだと思います。評価をよくすれば、部下のやる気につながります。そして、人事の処遇もよくなるわけですから。大切に思っている部下だからこそ、良い評価をつけてあげたくなりますよ」

B管理職:「私はマイナスの評価をつけてしまうと、部下へフィードバックするときが辛いのです。ネガティブなことであっても部下へ伝えなければならない、それが苦手なのです。それでついつい甘くしてしまっています」

C管理職:「正直に言うと、私は部下との人間関係が壊れることを恐れています。マイナスの評価をすると、その後一緒に仕事をしにくくなるように感じるからです」

いずれも本音で話をしてくれましたが、評価することの大きな目的が部下の人材育成だということを考えると、いずれの方も管理職としての役割の一部を少々放棄しているように感じられました。ぜひ今一度、管理職の役割、そして評価の目的を整理していただきたいと思うのです。

さて、インタビューをさせていただいた中で最も大勢の方が指摘されたのが、マイナスのフィードバックが難しいということでした。行動改善を部下のやる気につながる表現で伝えるのは確かに簡単なことではありませんので、うまく伝えるためには訓練が必要です。

それでは、どのように伝えればよいのでしょうか。ここでヒントとなるのが、同じことを伝えるにしても、行動よりも人格のことを言われた方が身が引き締まるという理論です。具体的には、A「うそをつかないで」よりB「うそつきにならないで」や、A「裏切らないで」よりB「裏切り者にならないで」を例にして考えてみると、いずれもAは行動について訴え、Bは人格について訴えているのです。(「脳はなにげに不公平」池谷裕二 朝日新聞出版)

確かに「うそつきになるな」や「裏切り者になるな」の方が、直接気持ちに訴える部分が強いように思えます。もちろん、フィードバックは「人格と行動」だけに限ったものではありませんから、これだけですべてを解決することはできませんが、大きなヒントにはなりそうです。マイナスのフィードバックでお悩みの管理職の皆さんは、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

ただ、いずれにおいても、フィードバックを行う際にはその根拠となる情報をしっかり収集しておかないと、部下のやる気につながる適切なフィードバックはできません。どのように伝えるかのみならず、どのようにその根拠となる情報を収集するのかも、評価における大切なポイントになるのではないかと思います。

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第1,113話 自由と自律の中で進められる在宅勤務

2022年04月20日 | 仕事

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「出勤できていいですね」

これは、私の知り合いが隣人からかけられた言葉です。エッセンシャルワーカーであるこの知り合いは、本人の希望というわけではなかったようですが、2年前の第1回目の緊急事態宣言下からずっと出勤しているのです。そして先日、帰宅時にたまたまこの隣人と会い、その際にかけられたのが冒頭の言葉だそうです。知り合いが「どういうことですか?」と聞いたところ、隣人はこの2年間ほぼ在宅勤務だそうで、出勤している知り合いに対して「もう在宅勤務は疲れました。思うように仕事もはかどりませんし、出勤できる人がうらやましいです。」としみじみと言ったのだそうです。

新型コロナにより、多くの組織がテレワークなどの在宅勤務を導入して、はや2年が経過しました。それまでに比べれば「働き方改革」と言ってもいいような状況だと思っていますが、実際、通勤時間の削減などのテレワークのメリットは広く知れ渡るようになっています。しかし、一方でテレワークのデメリットとして、上司や部下などの同僚とのコミュニケーションの難しさはもちろんのこと、出社しないことにより本人のオンとオフの仕事の切り替えが難しく、仕事の生産性が上がらないということも注目されるようになっています。

日経BP総合研究所イノベーションICTラボが2020年10月に行った調査によると、テレワークを阻害する要因として「ずっと自宅にいると、心身を仕事モードに切り替えにくい」が2位(36.3%)でした。私自身これまで職場で働いていたときには、周囲に人がいるためそれが良い刺激になっていると感じていました。同僚が一心不乱にパソコンに向かっていたり、電話対応をしていたり、数人のメンバーが雑談をしていたり・・・。それらを見聞きしていると、少々仕事にのっていないようなことがあったとしても、雑音を含めたそうした刺激が自分を仕事モードにしてくれていると感じていました。

職場のようにオフィシャルな場で仕事をする場合には、あくびをしたくなったときには周囲を気にして自然と口を手で覆ったりします。しかし在宅で仕事をする場合は気にせず堂々とあくびをできてしまいます。この点は服装についても然りで、在宅勤務であれば極端に言えば寝間着のまま仕事をすることもできてしまうわけですから、確かにオンとオフの切り替えは難しく、仕事モードに切り替えにくくなってしまうことが少なくないのではないでしょうか。

しかし、今後も好むと好まざるにかかわらず、在宅勤務をはじめとしたテレワークは今後続いていくわけですから、どうすれば仕事モードのスイッチを入れることができるのかを自分自身で見つけていく必要があると思います。

以前から組織において求められる人材像に、「自律型人材」があります。自律型人材とは、自分が何をすべきかを考え、他者から指示されなくても主体的に責任感をもって仕事を進めて、成果を出せる人材のことですが、テレワークで成果を上げていくためには、まさに自律型人材になることが必要だということです。

今後も在宅勤務中心の生活を続けていく上では、自身にあった方法で自らを律していくことが不可欠であり、この意味で自由と自律は背中合わせなのだということを改めて感じています。

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第1,092話 時間へのこだわり

2022年01月26日 | 仕事

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2020年の日本の時間当たりの労働生産性(日本生産性本部)は、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中23位と順位を下げたとのことです。この数十年はほぼ20~21位で推移していましたが、ここにきて1970年以降最低の順位になったそうです。

新型コロナウイルス感染拡大下の2021年4~6月期の労働生産性でも、38カ国中半数以上がコロナ以前(19年4~6月期)と比べてプラスだったのに対して、日本はマイナス2.8%だったそうです。その要因の一つには、「柔軟な働き方への準備不足」があるとのことです。(2022年1月17日 日本経済新聞)

ところで、この労働生産性の国際比較で14位に位置しているのが北欧フィンランドで、毎年ほぼこの順位をキープしています。このたび、「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」(堀内都喜子 ポプラ社) を読む機会がありましたが、それによるとフィンランドでは午後4時には仕事が終わり、残業もほとんどしない(仮に残業をしたら、その分の時間をまとめて休暇として取得する)し、有給休暇の消化率も100%。さらに、夏季には1か月以上の長期連続休暇をとる。このように休暇にこだわっても、1人あたりのGDPは日本の1.25倍、最新の幸福度ランキングも2年連続で世界一とのことです。

なぜこのような結果を出せているのかについては、休みに対する考え方の違い、アウトドアやサウナへの愛着、硬派で諦めない強い気持ちを表す「シス」、フィンランドのシンプルで心地よいライフスタイルを表す言葉である「ムカヴァ」、サスティナブルな社会づくりなど、フィンランドのもともとの文化や志向や価値観などによるところが大きく影響していることが紹介されています。具体的なノウハウなどによるものではなく、文化や価値観などによるものが大きいと考えられますが、それらは一朝一夕で築けるものではないことから、残念ながら日本人には簡単に真似できるものではないということかもしれません。

さて、それでは今後私たち日本人はどうすればもっと生産性を上げることができるのかを考えてみましょう。私が日々様々な研修を担当させていただいている中で感じるのは、「時間や納期について、今よりもっと意識してみることが必要ではないか」ということです。研修では個人やチームで様々な演習に取り組んでいただいていますが、その際に納期管理(演習の終了時間を守ること)の重要性をはじめにお伝えしても、それを徹底する人やチームがある一方で、全くこだわらずにマイペースで演習を進める人やチームも少なくありません。それは成果の完成度を追求するあまり、納期(時間)への意識が希薄になってしまっているのだろうとは思いますが、まずは「与えられた時間の中で最大限の結果を出すことに、もっとこだわりを持ってほしい」と感じることが多々あります。

言うまでもありませんが、時間はとても大切な経営資源の一つです。価値を生み出すためには経営資源は最大限に有効活用するべきものであり、反対に価値を生み出すことに使われなかった時間は結果として経営資源の無駄遣いをしたことになってしまうのです。

コロナ禍においてテレワークが日常のものになりましたが、同時に生産性の問題を抱えている例も少なくないようです。一人一人が「時間」という経営資源を有効活用することをしっかり意識して、取り組んでいくことが必要だと考えています。

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