中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第901話 メルカリに見る決断力

2020年04月12日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

メルカリはスマホ向けフリマアプリの企業です。2018年7月、メルカリの役員さんはあるインタビューで(同社が)テレワークを原則禁止にしていることについて、次のように語っていました。

「顔が見えると、安心しますよね。ちょっと今日は顔が暗いなと思ったら声をかけたり、雑談レベルの相談に応じたり。(働く上での)心理的安全性が高くなると思ってます」※1

これだけなら「ついこの間の話じゃないか。きっと今は苦労しているだろうなあ・・」と想像してしまいます。ただし、このインタビューの中で次のように続けていました。

「『決めたから変えない』はない。タイミングや考え方でまた変えるかもしれません。ただし今はこれがベスト、ということです」

次に、2020年4月8日のメルカリのプレスリリースの一部を以下引用します。

「今後メルカリグループでは、まず東京・大阪・福岡拠点は原則オフィスを閉鎖する完全在宅勤務体制へと移行いたします。また仙台拠点でも原則在宅勤務とし、必要に応じて完全在宅勤務へ移行していきます。また、それに伴い自宅での勤務環境構築やオンライン・コミュニケーション(チーム・ビルディング)などのために6万円(半年分)の在宅勤務手当の支給を決定いたしました。」※2

これは、主要なオフィスを「閉鎖」し完全在宅勤務体制へ移行するという経営者の決意を表したものです。

この話を聞いて「接客業じゃないからできたんでしょ」、「IT系はテレワーク向きだよね」、「若い社員ばかりだから負担が少ないんじゃないの」などと思う経営者の方もいることでしょう。

そして「うちはメルカリみたいにはできないよ。なぜなら・・・」と、できない理由を探しはじめるかもしれません。

しかし、社員2千人弱の企業が一気に、しかも企業文化に直接影響する決断を下すことは簡単ではありません。メルカリ経営陣の素早く、しかも徹底的な意思決定は称賛に値します。

もし、あなたの会社が医療や物流など命や生活に直接関わる業種ではないとしたら、中途半端な施策は最前線で苦労されている人たちの迷惑になるだけです。

テレワークを実施するならトップが率先して、徹底的にやるべきです。それとも「それは無理だ」とお考えですか?「できない理由」を探しますか?

あなたが経営者なら、いまこそ決断力が試されている時だと思ってください。

※1  https://www.businessinsider.jp/post-171734

※2 https://about.mercari.com/press/news/article/20200408_message-from-ceo/

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第900話 テレワークの生産性を高めるには

2020年04月08日 | 仕事

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「『テレワークを始めます』」と会社からいきなり言われたのですが、まるでテレワークという大海に一人で放り出されたような気分で、今一つうまく進んでいません・・・」

これは、先月からテレワークをスタートしたある企業に勤める知り合いから聞いた言葉です。国が「緊急事態宣言」を発令したことにより、今後中小企業においてもテレワークの導入が加速することと思います。

テレワークの功罪については、このブログでも何度かふれていますが、テレワークには様々なメリットがあります。実際にテレワークが軌道に乗っている企業に勤める人からは、「テレワークなので、お客様との打合せもZoom会議です」、「会社はコールセンター業務もしていますが、PCで電話を受けているので、VPN接続すれば場所は関係ないですね」というような肯定的な声もたくさん聞いています。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、社員に丁寧な説明がないままにテレワークを導入してしまった企業も少なくないようです。いくら世の流れとは言え、具体的な説明がないままにテレワークを始めることになると、何をどのように進めたらよいのか迷ってしまう社員が出てくるのも無理らしからぬことです。

冒頭の知り合いに、いきなりテレワークが導入されてしまったことによる具体的な問題点を尋ねたところ、「いろいろありますが、一番困っているのは思うように仕事が進まない」ということでした。

テレワークは自分のペースで進められるというメリットがあるのですが、一方で仕事の生産性が下がってしまっているのか、なかなか予定通りに仕事が進まないとのことです。

確かに自宅などで一人で仕事をすることは、他者から邪魔をされることがないという良さがある反面、いかようにでも自分のペースで仕事ができてしまうので、つい緩んでしまうことがありえます。

その結果、会社で仕事をするよりも余計な時間がかかってしまったり、ON・OFFの切り替えが難しくなったりと、トータルで考えると仕事の生産性が低くなってしまうということがあるようです。

それでは、「生産性が上がるテレワーク」にするのはどうすればよいのでしょうか。

もちろんいろいろな取り組み方があるとは思いますが、まずはメリハリをつけるために次のようなことから始めてみてはいかがでしょうか。

・始業と就業、休憩時間を会社にいるときと同様にする。

・1日の時間割を決めて、各々の作業の納期を見える化する。

・Zoomなどを使って、定期的に職場の人との接点を持つ。

・終業時には日報等で業務報告を行う。

・(予定通りに仕事が終わらなかったとしても)残業を禁止する。

・在宅であっても服装を出勤時と同様にして、オフィシャルの雰囲気を作る。

また、緊急事態宣言がでている現在は難しいかもしれませんが、テレワークの日数をはじめから限定して行うというのも一つの方法です。たとえば週に2日くらいは出勤し、残りをテレワークにするなどです。こうすると、それぞれにメリハリをつけることができ、いたずらに生産性が下がることを防げるはずです。

緊急事態宣言が出ているこれからの1か月間、テレワークでの生産性をどれくらい上げられるのか、この点は今だけでなく将来をも見据えた企業活動のあり方にも大きな影響がありそうです。

期せずして前倒しで一斉に始まったテレワークですが、各企業、そして社員一人一人が考えなくてはならない課題になっています。

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第896話 「お察し文化」はコミュニケーションを阻害する

2020年03月25日 | 仕事

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「大丈夫だとは思うのですが、万が一弊社の社員に感染してしまったら困りますの

で・・・。申し訳ないのですが・・・、そこのところをご理解いただいて。・・・」

これは先日、私の知り合いが打合せを予定していた相手方の企業の担当者から受けた電話でのやりとりです。

現在、多くの企業では新型コロナウイルス感染防止のために様々な取り組みをしていますが、その一つに社外からの訪問を見合わせているところがあります。

そうした中で、先方から打ち合わせの予定を変更してほしいという連絡をしてきたのですが、それをはっきり伝えることがためらわれたようです。遠回しな表現を繰り返されたとのことです。

もちろん、知り合いは前後の文脈から「今回の訪問を遠慮してほしい」と言いたいのだということはすぐに理解できたそうです。

しかし、敢えて「感染が心配ということですね。それではどうすればいいのでしょうか?」と質問してみたそうです。それを受けてようやく先方は「訪問をご遠慮いただきたい」という言葉を発したとのことでした。

たったこれだけのことを伝えるのに、先方は随分と回りくどい伝え方をしたわけですが、あなたはこのような言い方を他者からされたり、自身がしてしまったりという経験はありませんか?

自分の伝えたいことをはっきり言わずに「相手に察してほしい」というコミュニケーションでは、直接的な表現を避けることで摩擦を回避したいという考えです。そこで敢えて婉曲的な表現をしているわけです。

これは、一見相手をおもんぱかるような姿勢のようにも思えますが、暗黙のうちに「No」を伝えていることにもなります。

つまりこれはまさに「コンテクストに頼っているコミュニケーション」と言えます。コンテクストとは、文化や価値観、習慣などと訳されますが、日本人の中にはこの「コンテクストに頼ったコミュニケーション」が基本になっている人もいるではないでしょうか。

「言わなくてもわかるでしょう?」という暗黙の了解を求めるコミュニケーションは、言っている本人は相手に配慮しているつもりかもしれませんが、結果的に相手に察することを強要していることになります。同時に言いたいことをこちらから主体的に伝えるのではなく相手任せにするわけですから、受け身のコミュニケーションとも言えるでしょう。

そして、言われた方はたとえ同じ会社や身近な人であっても、必ずしも同じ文化や価値観、習慣を共有しているとは限りません。ましてや社外の人であれば、文化や価値観が異なることは当たり前です。よって「察する」ことができないこともあるでしょう。これでは、正確なコミュニケーションのやりとりはできません。

同時に、こうしたコミュニケーションは時に誤解を生んでしまう可能性もあります。効率という観点からも大いに問題であり、仕事の生産性を向上させるどころか、逆に阻害してしまうことにもなります。

まずは、仕事の生産性を上げるためにも「文化や価値観、習慣はでそれぞれで異なるものだ」ということを念頭おくことが大切です。続けて含みを持たせずダイレクトに具体的に伝えることを意識し、実行することから始めてみてはいかがでしょうか。

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第884話 先入観を持たずに正しく評価する

2020年02月12日 | 仕事

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「出来が今一つの部下の悪いところはいろいろ目に入るけれど、良いところはねぇ。見つけようと思わないとなかなか見つからないんだよね」

これは弊社が管理職研修を担当させていただいた際に、受講者からよく聞く言葉です。

日々、部下の育成に取り組んでいる管理職にとっては、世話なしに順調に成長する部下がいる一方で、思うように育たない部下がいるのも現実であり、悩みの種なのです。

そうすると、冒頭の言葉のように成長が一進一退の部下に対してはマイナス点ばかりが目についてしまう一方、よほど意識していないと良い点が見つからないという気持ちになってしまうというのも頷けるところではあります。

さて、今年も春闘が始まりました。今回の春闘では、トヨタ自動車が個人の評価に基づく賃上げを要求したり、三菱UFJ銀行も評価に応じた配分など新たな賃上げの方法を提案したりという報道がありました。

これまでの一律の賃上げ要求を止める背景には、若手人材の確保が困難な中で企業が人材確保のために年功序列賃金を見直し、その分を若手に配分をするという考えなどがあるようです。

確かに採用に関しては売り手市場になって久しいですので、人材獲得の一手として賃金制度を見直ことが有効なことは確かです。

しかし、一方で個人の評価に基づくのであれば、上司が部下を公平に評価出来ることが前提になります。

冒頭の管理職のように、部下の悪いところばかりが目についてしまったり、反対に良いところばかりを注視したりするのでは正しい評価をすることは出来ません。その結果、マイナスの評価をされた人はやる気を失ってしまうことになります。

昨日、訃報がもたらされた元プロ野球監督の野村克也氏は監督としての手腕とともに、数々の名言を発したことでも有名です。その中でも私自身が特に印象的なのは、「固定観念は悪、先入観は罪」という言葉です。野村氏はこの言葉を「固定観念と先入観は百害あって一利なし」との意味で使われていたそうです。

野村氏は若手選手の育成だけでなく、「野村再生工場」と言われるように他球団で戦力外となった選手を復活させたことでも知られています。そうしたベテランに対しても他者の評価やそれまでの実績による先入観や固定観念を持つことなく接し、自分の目で現状をしっかりと判断し、良いところを最大限活かすべく指導していたのではないでしょうか。

ぜひ経営者や管理職の皆さんには、社員や部下を評価する際には固定観念や先入観を持って行うのではなく、仕事ぶりをしっかり観察しきちんと話を聴いたうえで、正しい評価をしていただきたいと思います。

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第875話 労働基準法改正という絶好のチャンス!

2020年01月12日 | 仕事

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いよいよ今年の4月から改正された労働基準法が中小企業にも適用されます。人事・総務担当の方々は社労士さんとしっかり話し合って対策を準備されていることでしょう。

しかし、4月1日は「労基法改正という大きな衝撃が来る日!」と身構えてしまう経営者の方も少なからずいらっしゃいます(そのような表現で脅かす社労士さんもいないわけではありません)。

もちろん、大きな制度上の変更ですから、そのご心配はごもっともです。

「社員に残業をさせなるなって、どうすればいいんだ?」、「有給休暇の時季指定なんて無理だ!」、「違反したら6か月以下の懲役または30万円以下の罰金だって!?」

そんな悩みに対して「午後7時になったら職場の照明を切って、サーバーも使えないようしましょう。入退室管理システムも導入しましょう。」といった提案をして、高価な投資をさせようとするシステム会社や、経営コンサルタントがいます。

ちょっと待ってください!労基法の改正は「危機」ではありません。「好機」なのです。

経営者、管理職の方にお聞きします。今までの貴社の仕事の進め方が「非常に効率的だった!」と自信を持って言い切れるでしょうか。おそらく、従来の仕事のやり方がそのまま維持されていて、非効率で無駄なこともたくさんあるはずです。

そして、日々の忙しさに負けて思い切った策を打ってこなかった・・・そんなところではないでしょうか。

4月からの「時間外労働の上限規制には罰則がある」ことは、もう嫌というほど聞かされていることでしょう。法律の改正ですから逆らうことは「違法」です。だったら、この強制力をプラスのパワーとして利用しない手はありません。

労基法改正という大義名分を使って、貴社の仕事の進め方を一気に変えるのです。

多くの経営者、管理職の方々は「無駄な残業をするな」と言っておきながら肝心の「残業の中身」を知りません。「お客様第一」ということは、何でもかんでもお客様の要求応えることだと誤解しています。

その結果、無駄な残業は一向に減らず、「第一」に扱ってきたはずのお客様からクレームが来ます。このままでは4月以降の貴社の仕事はガタガタになり、多少費用が減ってもそれをはるかに上回る利益の減少に見舞われます。

早い話が、倒産という会社の「死」に向かって崖から飛び降りるようなものです。いや、少しも大げさではありません。

逆に、今こそ仕事の進め方を徹底的に見直して、より効率的な仕事ができる仕組みを作っておけば、むしろ4月は飛躍のチャンス!となります。

当社は、すでに何社かの企業様にこうした「労基法改正をチャンスと捉えて飛躍する」ためのコンサルを行ってきました。また、現在も「話を聞きたい」という企業様もいらっしゃいます。しかし、当社のマンパワーから考えて、事前に打ち合わせをして、進め方を説明して・・・といったステップを踏んでいる余裕はありません。

そこで、次のとおり本件についてのセミナーを、緊急に開催することになりました。より詳しい内容につきましては次回のブログでお知らせいたします。申し訳ございませんが、先着8社様(1社から2名様まで)とさせていただきます。また、すでに昨年から施行対象になっているにも関わらず「あまり上手く行っていない」という大企業様も歓迎いたします。

   *****(緊急)セミナー開催のお知らせ*****

  「いよいよ労基法施行! 3つの策で進める中小企業の働き方改革」
  日時:2020年2月7日(金)18:30~20:30(18時15分より受付)
  場所:SHIP( 品川産業支援交流施設)第2会議室
      品川区北品川5-5-15 大崎ブライトコア4階  TEL 03-5449-6871
      (JR大崎駅より徒歩8分)https://www.ship-osaki.jp/access/     
  主催:株式会社人材育成社
      千代田区九段南3-9-11-802
      TEL 03-6272-6335 
  内容:仕事の進め方を大きく変える3つの具体策の紹介(実施方法について)
  料金:1名様・5,000円(消費税別)1月中のお申し込みに限り4,000円(消費税別)

お申込みは下記より(2月セミナーと記し)必要事項をご記入し、送信してください。

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2020年4月1日の改正労基法施行まで時間がありません。今こそ真剣に考え行動しましょう!

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第862話 小売、卸売、サービス業のための統計学のすすめ(2)

2019年11月26日 | 仕事

「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。 

さて、(1)大量のデータを扱う、(2)利益率が低い、という特徴を持つ小売業、卸売業、サービス業に焦点を当てた「統計学のすすめ」の2回目です。

働き方改革とは強制的に残業を減らすことだとばかりに、「19時にフロアの一斉消灯、サーバーの停止」といった強硬策を打ち出す企業もあります。しかし、実態は「オフィス消灯 続きは深夜のファミレス(朝日新聞2019年11月25日・朝刊・21p)」といった見えない残業が横行するケースも少なくありません。

なぜそのような事態になってしまうのかと言えば、「改革」の順番を間違えているからです。

まず仕事の効率化を推進すること。規制の強化はその次です。

「効率化しろと言うけれど、具体的に何をどうすればいいんだ?」そう言う社長さんは多いのですが、実はその言葉が効率化にブレーキをかけているのです。

効率化の第一歩はムダ(無駄)を省くこと・・・ではなく「ムダを見つける」ことです。なぜなら、目の前にあるムダだけを相手にしていてもキリがありません。次から次へと「新しいムダ」が生まれてくるからです。

ムダが生まれてくる温床(巣)を見つけて、そこをつぶさなければなりません。

営業部門でよくあるケースを考えてみます。

夕方、若手営業担当のA君が客先から帰ってくると、お客様からのメールが何通か入っています。読んでみるとX社から「大至急○○を2ケース持ってきてくれ」、Y社から「XXを5ダース明日の夕方までに納品してほしい」、Z社から「新製品のサンプルを1つ都合つけてくれないか」、どれも突発的な割り込み仕事の依頼です。

同じ営業部の先輩Bさんを見ると、やはり同じような依頼を精力的にこなしています。それもイキイキとして。

A君は「自分も早くああいう風になりたいものだ」と思うのでした・・・って、イヤ、イヤ、これではだめです!ムダな残業の温床を自ら整えているようなものです。

まずムダを「見つける」ことから始めます。

お客様からの突発的な仕事の依頼は、1日に何件来ますか?1週間では?月別では?

「突発的な出来事」は本来滅多に起こらないものです。そういう事態が生じる確率は、統計学では「ポアソン分布」に従うことが知らています。

営業部で「お客様からの突発的な依頼」を記録してみると、ばらつきの形が見えてきます。これにより「来月の依頼はポアソンに従うとすれば大体○○件くらいだな」という予測ができます。

次に、突発的な割り込み仕事は「なぜ」生まれるかを調べます。お客様別の過去のデータを調べてみると、意外や意外、ばらつきに特徴があることがわかります。X社は月末に、Y社はコンスタントに、Z社は展示会などのイベントの後に、といった具合です。

そこまでわかってくれば突発的な依頼に「先手」を打つことができます。要はあらかじめ準備をしておけば良いのです。

統計学は、普段私たちの目の前に次々と現れる現象を俯瞰(ふかん:全体像を見ること)してくれます。時系列で現れるばらつきの形を示してくれるのです。

「効率化しろと言うけれど、具体的に何をどうすればいいんだ?」その答えは、統計学を使って全体像を見る、そして先手を打つことです。

統計学は営業の仕事に限らず、あらゆる仕事の役に立ちます。とはいえ、高校のときに数学と「さよなら」してしまった人には難しいかもしれません。

「やさしい」とか「初歩の」といったタイトルのついている統計学の本を書店で手に取ってパラパラとめくってみてください。文系人間にとっては、ちっとも「やさしくない」し「初歩でもない」ことは間違いありません。

しかし、ご安心ください。そんな人のために本を書きました。想定する読者はSBH48です。いえ、アイドルグループの名前ではありません。私大文系偏差値48の略です。

内容は、SBH48出身の営業担当者を主人公にしたストーリー形式になっており、一部マンガも載っています。もちろん、統計学の解説もしっかりと書いてあります。小売、卸売、サービス業のための統計学の入門書です。

「働き方の統計学: データ分析で考える仕事と職場の問題」1,980円・税込み(オーム社)は本日(11月27日)、全国の書店で発売されます。

ぜひ、書店で手に取って見てください。置いていないときはAmazonでどうぞ。

働き方の統計学: データ分析で考える仕事と職場の問題

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第861話 小売、卸売、サービス業のための統計学のすすめ(1)

2019年11月24日 | 仕事

「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。 

統計学と聞いて「数学」を思い出し、拒否反応を起こしてしまう経営者の方は多いようです。特に中小企業の社長さんには人気(?)がありません。

統計学を活用している業種といえば、真っ先に思い浮かぶのは製造業です。自分たちの作る製品の品質が会社の利益を大きく左右しますから、統計学の手法を使った品質管理は必須です。しかし、小売業や卸売業のような仕入販売を生業とする業種では、統計学を活用している会社は少ないようです。

ところが、仕入販売業は日々大量のデータを扱うため、社員、特に営業担当者が接する数字の量はむしろ製造業よりも多いと思います。そして、(残念ながら)他業種に比べれは利益率は決して高くありませんから、細かい数字もしっかり押さえる必要があります。

そこで、(1)大量のデータを扱う、(2)利益率が低い、という特徴を持つ小売業、卸売業、サービス業に焦点を当てた「統計学のすすめ」をこれから3回にわたって解説してまいります。付け加えるならば、「中小企業こそ今すぐに活用すべき内容」であることを強調しておきます。

さて、2019年4月から働き方改革関連法が施行されました。残業時間の「罰則付き上限規制」は大企業に対してはすでに実施されており、中小企業も2020年4月から実施されます。残業が多い社員ほど評価されるといった、「時間の量」で測る管理はできなくなります。

言うまでもなく、営業担当者にとって顧客と接する時間は何よりも大切なものです。「お客様とは何度も会って、徐々に信頼関係を築いていくのが営業の仕事だ」そう信じている社長さん、管理職の方は多いことでしょう。

では、それが否定されることになるのでしょうか?統計学の話を絡めて考えてみましょう。

お客様との信頼関係は営業の基本であり、原理原則といえるものです。人であれ企業であれ、相手を信用することが、商品やサービスを買う前提です。そして、相手を信頼するからこそ継続して取引をするのです。ドラッカーは「企業の目的は顧客の創造である」と言っています。顧客(customer)とは継続して取引を続ける相手であり、それは信頼を得ることで創造(create)される対象であるというわけです。

では、信頼関係を築いていく方法は「何度も会う」以外にはないのでしょうか。私は決してそうは思いません。もちろんお客様と面と向かって(face to face)会うことは大事なことです。

ただし、会って時間を過ごすこと自体が大事なのではありません。お客様の抱える問題や要望に対して適切な答えを提示することが本当に大事なことです。

「そんなことはわかっている」とおっしゃるかもしれませんが、お客様の要望の背景には様々な要因が潜んでいます。「顧客ニーズを把握せよ」というのは営業の鉄則です。しかし、ニーズを直接聞きだすことができても、その背景にある要因までリーチしなければ、本当にニーズを把握したとは言えません。

あるスーパーが仕入れた商品の売れ行きが良くなかったとします。スーパーは、従業員を残業させたり、その商品を卸した商社から営業担当者を派遣させて、閉店まで販売活動を手伝わせるとします。しかし、それで成果が得られるのでしょうか。

それよりもスーパーが持っている過去のデータ、例えば月別、曜日別、時間別のデータを調べ、抱き合わせが可能な他の商品との棚割り、他店の売り上げ動向などと比較して「何が売上に影響しているのか」を探るべきです。

具体的にはそうしたデータを集めてグラフ化するだけではなく、売上と関連がありそうなデータ同士の相関を調べてみることです。

相関とは「一方が変わればもう一方もそれに連れて変わるという関係」です。単純な例としては「最高気温が高いとアイスクリーム類の売上が増える」といったものです。気温(原因)が売上(結果)に影響を与えています。

相関関係は、原因が1つだけではなく、複数である場合も考えられます。また、原因が直線的に結果に影響を与えているとは限りません。

「アイスクリームの売上には気温以外に何かの要因が影響しているのではないか? そしてその影響はどの程度確かなのか?」

こうした疑問に答えるのが統計学であり、その道具として使うのは(おそらく)皆さんのパソコンに入っているExcelです。

むやみに残業をして(させて)売上を増やそうとするよりも、統計学を使って「打ち手」を考えることに時間を使った方がより大きな成果が望めます。

営業部門のマネージャーの方は、ぜひ部下の営業部員に初歩的な統計学の知識を身につけさせてください。現状のままで「残業規制」を行っても、残業時間は減るかもしれませんが利益は増えません。

営業活動の「量から質」への転換は、統計学なくしては難しいのです。

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第818話 パワハラの予防・解決には、部下にもパワハラの知識を

2019年06月26日 | 仕事

「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。

最近では、新聞やテレビなどでパワーハラスメント(以下パワハラ)に関する話題が取り上げられない日はないのではないかと思えるくらい、パワハラの問題がクローズアップされています。(このブログでもこれまでに何度もパワハラについて言及しています。)

それにともない、官民問わず様々な組織でパワハラの予防・解決に向けた様々な取り組みが行われています。

実際に、弊社でも昨年からパワハラに関する研修を担当させていただく機会がうなぎのぼりに増えています。

この研修の対象者は圧倒的に管理職が多いのですが、弊社では管理職以外に部下となる社員・職員も一緒に受講していただくことをお勧めしています。

その理由は、「パワハラに対する知識は、管理職だけが持てば良いからではない」からです。

ここで、改めてパワハラの定義を確認してみましょう。厚生労働省では、次のように定義しています。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

この定義では、「職場内の優位性を背景に・・・」とありますが、多くの場合優位にあるのは管理職の方ですから、一般的にはパワハラは圧倒的に上司側から部下に対して行われてしまうことが多いのです。

とはいえ、中には下位者から上位者へ対してパワハラが行われてしまうこともあります。弊社が過去に相談を受けた事例では、異動してきた上司が気に入らないとのことで、部下が結託して上司に嫌がらせを行い、上司を心の病に追い込んでしまったという話もあります。

このようにパワハラは管理職、部下の双方の側で行われてしまう可能性があります。問題なのは管理職にも部下にも「パワハラであるかどうかの判断は、受けた側ができる」と間違った解釈をしてしまっている人がいることです。

厚生省では「パワーハラスメントの6類型」を次のように示しています。

(1)身体的な攻撃

(2)精神的な攻撃

(3)人間関係からの切り離し 

(4)過大な要求 

(5)過小な要求 

(6)個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること

実際に、冒頭の例のような誤解を放置してしまったある企業で、上司が仕事のやる気が少々落ちていると思われる部下に「頑張れよ!」と穏やかな口調で肩をポンとたたいたことに対して、部下がそれをパワハラととらえ「パワハラを受けたので、退職します」と人事部に駆け込んだという話も聞きました。

この例は言うまでもなく、パワハラとは明らかに異なります。しかし、同時にパワハラと指導との線引きの判断に悩んでいる、部下にパワハラと受け取られてしまうことを必要以上に恐れて、本来必要な指導を控えてしまう管理職の話も本当によく聞きます。

しかし、弊社が行う管理職を対象にしたパワーハラスメント防止研修のなかで受講者から受ける質問の99%は、「それのいったいどこがパワハラなのか?どう考えても指導ではないのか」と言わざるを得ないようなものばかりです。つまり、管理職と部下双方がパワハラの正しい知識や線引きの事例などをきちんと理解していないが故に、特に管理職の側で不必要にパワハラを恐れてしまっている人が多いということです。

こうしたことを防ぎ、必要な指導がきちんとなされるためにも、双方がパワハラに関する正しい認識を持ち、共有することはとても重要なことです。

パワハラは絶対に許されない、してはいけない行為です。しかし、それを恐れるあまり、するべきことをしない管理職が少なからずいるという問題も、同じように放置してはならない大きな問題だと考えています。

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No.815 経営者が知っておくべき会計

2019年06月16日 | 仕事

「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。 

中小企業の社長さんの中には、会社の数字に弱いことを隠さない人が意外に多くいます。「営業一筋できたからね」、「技術的な計算は得意なんだが」、「経理がしっかりしているから大丈夫」・・・そうおっしゃいます。しかし、話を聞いているうちに「経理なんて数字を計算してるだけだろう?社長はそんなみみっちことを気にしている暇なんてないよ」といった、ちょっと見下したような本音が透けてきます。

ある社長さんはこう言いました。「決算数字なんて結果だろ?通知表が悪かったら次の年に頑張る、それだけだよ」・・・確かに非常に前向きではあります。

しかし、来年は今年の延長線上にはありません。学校の勉強のようにレールが敷かれているわけではないからです。

社長さんが言うところの「経理の数字」というのは、ほぼ決算書の損益計算書のことを指しているようです。しかし、会計は決算書だけではありません。管理会計という経営に直結するものもあります。

管理会計は、未来に向かって意思決定をするために必要な情報を提供します。新しく販路を開拓するにはどれくらいコストがかかるのか、新製品の原価はいくらくらいで何個売れば黒字になるのか、投資先が複数あるときはどちらを選ぶべきか、等々。

会社の経営が航海だとすれば、管理会計は羅針盤のような働きをします。管理会計を知らずして経営することは羅針盤なしで荒海を進むようなものです。

当社では随時「経営者のための管理会計セミナー」を開いています。

一度真剣に管理会計を学んでみませんか。

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