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中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,173話 仕組みを根付かせるための、(株)キーエンスの根幹にあるものとは

2023年07月05日 | 仕事

「仕組みを作っても根付かない。時間の経過とともに、いつの間にか機能しなくなっている」

仕組みを作ってもそれがなかなか継続しないというのは、多くの組織に共通する悩みではないかと思います。職場で問題が生じた際に、解決策の一つとして挙げられることが多いのが「仕組みにする」であり、仕組みを万能薬のようにとらえている人も少なくないように感じます。

では、そもそも「仕組み」とは何なのでしょうか?辞書によると、「物事の組み立て、事をうまく運ぶために工夫された計画」とあります。つまり、組織において「仕組みにする」とは、たとえば異動や退職によって人が変わることがあっても、きちんと回るシステムを構築するといったことなのではないでしょうか。しかしこの「仕組み」、作ること自体も簡単ではありませんが、さらに大変なのは継続的に回し続け、きちんと組織に根付かせることです。

これに関して実際に仕組みを作り、それを徹底することにより驚異的な数字を出している会社があります。それは株式会社キーエンス(以下(株)キーエンス)で、時価総額14兆4,482億、平均年収 2183万円、売上高営業利益率55.4%、自己資本比率93.5%とのことです。(西岡杏(2022)「キーエンス解剖 最強企業のメカニズム」日経BP)

(株)キーエンスの仕組みは様々あるようですが、私が最も驚いたのは営業の仕組みです。その一部を紹介すると、毎夕先輩と後輩でペアを組み、顧客役と営業役に分かれて1000本ノックのようなロールプレイングを繰り返したり、5件以上のアポがないと外出が許されなかったり、さらに顧客との商談後には5分以内に外報と呼ばれる報告書を記入したりするのです。本書によると、こういった仕組みは営業のみならず、例えば代理店を通さない「直接販売にする」、「当日出荷にする」体制など、「付加価値を最大化する」という目標に向けた同社の仕組みはあらゆるところにあるそうです。

本書では、多くの企業では仕組みを構築したとしても維持継続が難しく、時間の経過とともに仕組みが壊れてしまうのに、(株)キーエンスがこれだけの仕組みを維持継続できるのはなぜなのかについても紹介されています。それによると、これらの仕組みをやりきる人材を育てる取組みや、そのベースにある風土、さらにはその源流をなす創業者の基本的な経営観や仕事観にも焦点が当てられています。ポイントは仕組みを表面的に真似するのではなく、そこに込められた「哲学」も真似するということだとされています。

しかし、入社してすぐにその哲学が浸透するわけではないことから、(株)キーエンスでは個人ではなくチームとしてより良い結果を残すことを目指して、部下の育成にも余念がないようです。こうした育成を通して社員に哲学がしっかり浸透し、それが組織の風土になっているのだと思います。このように(株)キーエンスでは個々の社員が自らやる気になるような内発的動機付けをしっかりと行い、同時に営業利益の一定割合を賞与として社員に還元するなど、外発的動機付けも徹底して行っているのだそうです。

どの組織もが(株)キーエンスのようになるのは簡単なことではないでしょうが、50年という社歴としてはそれほど長くはない時間の中で「哲学」をしっかり根付かせた(株)キーエンス。書籍を通して一部しか垣間見れていませんが、今後もますます目が離せない存在ではないかと感じています。

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第1,171話 採用活動はwin-winの関係

2023年06月21日 | 仕事

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「面接官の感じがとてもよかったので、それが入社の決め手となりました」

これは、新入社員が入社を決めた際の理由として紹介されることが多い言葉です。複数の組織から内定を得た人が、最終的に一つを選ぶ判断をする際の決め手となるのは、組織の規模や給料などより、面接官などの直接接触を持った人との相性や雰囲気といったものなのかもしれません。

これに関して、最近は採用業務を外部に委託する企業が増えているとのことです。矢野総合経済研究所の調査によると、2021年度に採用業務を外部に任せた「採用アウトソーシング」市場は、前年の2020年度と比べ15%増えており、今後ますます拡大する傾向にあるとのことです。外部委託をするのは、新卒採用だけでなく通年化した中途採用等の業務の増加にともなって、自社では対応が難しくなっていることが理由の一つにあるようです。

最近では、売り手市場になっていることや、国が人材の流動化を積極的に進めようとしていることなどもあり、採用業務にかかる時間は増えているようです。特に、採用に加えそれ以外の業務も兼務している担当者にとっては、大きな負担になっているであろうことは容易に想像できますので、外注化が増えてきているのも当然なのかもしれません。

実際に退職者の減少につながっているという例をはじめ、採用の外注化には様々なメリットがあるようです。それでは採用業務の中で外部委託をしているのは、具体的にどの部分なのでしょうか。

これも採用業務の全体、あるいはその中の一部分など様々な形があるようなのですが、そうした中でも私は面接だけは必ず自社の担当者が行うことが大切だと考えています。なぜなら、応募者側からすると面接官が「組織の代表」そのものになるからです。応募者は面接官とのやり取りを通じ、その組織の風土や雰囲気を想像することになるのであり、それが「この組織に入りたい」、「この組織は自分には合わない」という判断をする際の大きな要素になっているのではないでしょうか。

面接は、組織側からすると大勢の応募者の中から自組織で活躍してくれそうな人を選ぶ場の一つですが、同時に応募者側にとっても、内定を得られている複数の組織の中からどこに入りたいかを判断する場になるわけです。そのように考えると、採用業務における面接は双方が互いを選ぶ判断をする際の大切な機会であり、双方にとって多くのことを得ることができる場となることが望まれるのです。しかし、採用業務において面接を外部に委託してしまうと、少なくとも応募者側は判断の材料を得る場にはなりにくくなってしまうと思います。

今後、人(労働力)の流動化がますます盛んになると、採用活動はますます長期化することともいます。そのような中で、業務効率化の一環として外部委託することも一つの手段だとは思いますが、応募者を選ぶ側という視点だけではなく、応募者から選ばれる組織になるという視点、まさに採用活動はwin-winの関係であることを忘れないでいただきたいと思うのです。

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第1,170話 部下に遠慮してしまう上司が与えてしまう影響

2023年06月14日 | 仕事

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「圧をかけていると思われませんか?」

これは、先日弊社が監督職研修を担当させていただいた際に、受講者から質問された言葉です。研修では、監督職の役割をはじめ様々な内容について確認や練習をしていただきましたが、その一つとしてコミュニケーションにおける「質問の仕方」の演習をしていただきました。そのときに冒頭の質問を受けたのですが、その受講者が言うには「部下に指示した仕事の進捗状況を尋ねることは、部下へ圧力をかけることになってしまうと思います。ですから、質問したくてもしない方がよいのではないでしょうか。」とのことでした。

この研修では、他の受講者からも「部下を叱ったり注意をしたりするなんてとんでもない、そもそも叱ったり注意をしたりすることは、親が子どもに行うことであって、部下に行うことはよくない」、「部下に伝えたいことがあるのであれば、あくまで助言にとどめるべきだ」と考えているとの話もありました。

さらには、「喫煙のために離席する部下がいて、その都度記録をしたところ、離席時間は1日に2時間にも及ぶことがある。その間、問い合わせの電話が入っても、本人がその場にいないために、電話をかけてきた人を待たせてしまっている。そのことを指摘したいけれど、嫌われたくないのでついニコニコしてしまう。このままではいけないと思うけれど、どうすればよいのでしょうか」などの質問もありました。

この話を聞いて、皆さんはどのように考えますか?

部下を育成することは昔も今も簡単なことではありませんが、これらの話を聞いていて私がまず感じたことは、そもそも部下育成以前の話であり、上司があまりにも部下に対して腰が引けてしまっているのではないかということです。そして、そのために自分にはできない理由をつけているようにさえ感じられてしまいました。

それではなぜここまで腰が引けてしまうのでしょうか?

理由は様々ありそうですが、まず部下をはじめ周囲の人に嫌われたくない、自分に対して自信が持てないということがあるのではないでしょうか。

当人にとっては、4月に監督職に昇格し新たに部下育成が任務として加わったものの、経験がなかったり周囲にモデルとなる人がいなかったりなどで、監督職としてのイメージが全くつかめておらず、何をどうしてよいかわからずに不安で一杯ということなのかもしれません。

だからこそ、新任時の監督職研修で監督職の役割を学ぶことには大きな意味があるのですが、同時にいくら研修で講義を聞いたり、ロールプレイングなどの演習に取組んだり練習を重ねても、それは実践されなければ何の意味もないことになってしまうのです。実際に職場で部下に対し具体的に質問や指摘をし、改善を求めるといったことをしなければ、こちらの考えは伝わらず、行動を変えることはできないのです。

それでも苦手と思う方は、まずはあまり大上段に構えずトライしてみる。そして旨く行ったところ、いかなかったところを確認しながら、経験を積み重ねていっていただきたいと思うのです。

部下の指導や育成は上司の大事な役割です。嫌われたくないという理由で部下に指摘すべきことを放置してしまうようなことは、くれぐれもしてはいけないということです。それは見て見ぬふりをすることと同じ行為であり、その状態を続けると前向きに仕事をしている人のモチベーションまで下がることにもつながります。その結果、やがて職場全体の雰囲気が悪くなり仕事の生産性までも下がることになってしまいかねません。

上司の皆さん、嫌われることを恐れずに、勇気をもって部下に声をかけてみてください。

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第1,169話 部下を評価することは難しい

2023年06月07日 | 仕事

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「部下を評価することが苦手です」

これは、弊社が評価者研修を担当させていただく際に、管理・監督職の皆さんから聞くことが多い言葉です。実際に、上司が部下を評価することは昔も今も簡単なことではありませんが、一方で部下の側からすると「上司から的確に評価されない」結果、部下のモチベーションが下がってしまうことによる、離職の増加という問題が顕在化している組織も実際にあるのです。

人が他者を評価するということはそもそも大変なものですが、組織においてそれをさらに難しくしている原因は一体何なのでしょうか。様々な原因があるかと思いますが、その一つに管理職の中に「評価とは、最終的な数値の判断をすること」だと誤解をしている人が少なからずいることがあるように感じます。

評価には、その前段の段取りがあり、また評価をした後のフィードバックも必要です。つまり、前段、本番、後段の3つのステップを総じての「評価」なのだと私は考えています。しかし、前段と後段を省略して本番でいきなり数値評価だけをしようとしても、評価に関する材料がまったくないことから、感覚的な評価にならざるを得ないわけです。

では、評価の前段では何をすればよいのでしょうか。前段では、管理職は部下を観察したり、部下とコミュニケーションをとったりすることによって、部下が求められている役割を担えているのか。部下の強みや弱みは何か。部下自身は今後どのようになりたいと考えているのか。それは組織が求める役割に合致しているのか。管理職の自分としては部下にどのように成長してほしいと考えているのか。そのためには、マイルストーンをどのように設定するのかなど、様々な観点で見極める必要があるのです。

そのようなプロセスを経ることによって、はじめて評価の際の具体的な指標を設定しやすくなるのです。このプロセスを経ずにいきなり評価指標を設定しようとすると、精神論的なあいまいなものになってしまいがちです。

さらには、前段のステップで上記の観点に加えて何を、いつまでに、どのように行うのかといった定量化もしておけば、次のステップの評価をずっとスムーズに進めることができると思います。

そして後段のステップでは、どのようなに事柄に基づいて、どのような考え方で評価をしたのか、評価の根拠を明確に示すとともに、さらなる成長を目指すためにはどうすればよいかを、上司としての期待とともに共に考えていく姿勢を見せるというフィードバックが大変重要になってくるのです。

そうすることにより、部下が「しっかりと見守ってもらっている」「期待されている」ことを感じることができ、その結果「組織に貢献したい」と強く感じてエンゲージメントが高まり、離職率の低下を期待することができるのです。

冒頭のように、部下評価に対して苦手意識を持っている管理・監督職の皆さん。確かに評価には時間も手間もかかりますし、何より責任を伴うものではあります。しかし、きちんとステップを踏んだうえで部下とともに自身も成長する機会なのだと捉えていただき、前向きに取り組んでいただくようにお願いしたいと思います。

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第1,165話 挑戦しなければ、自分のパンチは相手に当たらない

2023年05月10日 | 仕事

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「受けないように避けてると、間違いなく相手からのパンチは当たらないから、ダメージはない。けれど、避けるってことは前に出ないから、自分のパンチも相手に当たらない」

これは、以前読んだ内館牧子氏の小説「今度生まれたら」(講談社)の中の台詞の一つです。「自分が前に出なければ相手にパンチは当たらない」というこの言葉は、私自身が一歩を踏み出すことをためらうようなときに、また自分を鼓舞するときに何度か反芻してきました。

5月も半ばになり、新入社員が今後の仕事を具体的に始める時期になりました。多くの新人が、それぞれの職場ではりきって仕事を覚えようとしていることと思います。

近年、若手と言われる年代の特徴の一つとして「成長欲求が高い」ことがありますが、弊社が研修を担当させていただいた際にも、ちょっとした会話からスキルや知識などの習得に余念がない人が多いことが感じられます。また、実際に入社前に仕事に役立つスキルや知識を身につけたいとの問合わせが入ることがあるという話を採用のご担当者から聞いたこともあります。「スキルや知識を身に付けることによって成長したい、そのために勉強したい」と考えることは素晴らしいことですので、年長者として若手のそのような気持ちをぜひ応援したいと考えています。

しかしながら、もう一方では「若手社員の挑戦意欲の低下」という傾向も顕著になっているようなのです。リクルートマネジメントソリューションズが、2022年3~4月に新入社員525人を対象に「働くうえで大切にしたいこと」を複数選択で尋ねた結果、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」は24,8%、「何があってもあきらめずにやりきること」は13,9%と、いずれもこれまでの調査で最低の数値だったとのことです。

言うまでもありませんが、挑戦とは「困難なことに挑むこと」です。自分が今持ち合わせているスキルや知識では及ばないかもしれないことに対して敢えて挑んだ結果として、苦労したり途中で失敗したりすることは当然にありえるものなのです。そして、そうした経験を通じて困難を乗り越えるためにはどうすればよいのか、次に同じような事柄が現れたときにはどのように対応すればよいのかということを、間違いなくその経験から身に付けることができるのです。

若手に限ったことではありませんが、成長とは経験したことがないことや、今の自分には少々ハードルが高いことに挑戦した結果として得られるものなのではないでしょうか。そしてその結果「何とか乗り切った」という感覚を得られたときに、はじめてこれまで目にできなかったような新たな景色(世界)が見えてくるのではないかと思うのです。

成長したいと考えることはとても素晴らしいことですので、ぜひ若手の皆さんには今後もその気持ちを大切にして、様々なことに挑戦を続けていただきたいと思います。その際には、はじめはあまり大上段に構えずに、まずは小さな事柄で構わないので、経験したことのないことや少し背伸びが必要なことに挑んでみることが大切なのではないでしょうか。

もちろん、成長への挑戦は若手に限ったことではありません。「パンチを相手に当てるため」にも、自戒の念を込めて私も引き続き挑戦を続けたいと思います。

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第1,162話 OJTリーダーに任命する人とは?

2023年04月12日 | 仕事

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「何でこんな会社に入ったの?」

これは、弊社が公開セミナーを担当させていただいた際に受講者のAさんから聞いた言葉ですが、新入社員研修終了後に配属された部署の先輩からかけられたものだそうです。

Aさん自身は希望していた会社に入社できたこと、さらには配属される部署には特に希望はなかったため、どこに配属されても前向きに頑張ろうと考えていたのだそうです。

配属後に、OJTリーダーとして紹介されたのが3年上の先輩Bさんだったそうです。Bさんは仕事は丁寧に教えてくれる一方で、ランチタイムや移動中などにAさんが聞いてもいないのに自社の問題点を一方的に話すため、Aさんは入社早々に会社のマイナス面ばかりを知ることとなってしまったのだそうです。

Aさんの部署にはBさん以外の先輩のほか主任や、管理監督職として係長や課長もいたそうですが、仕事は基本的にBさんから習うことになっていたため、他の人とのコミュニケーションの機会はあまり多くはなかったとのことです。

Aさんはその後も「評論家」と化したBさんから、会社や仕事のマイナス点を聞かされ続けていたそうですが、結局1年後にBさんが退職することになり、ネガティブな話の洪水からようやく解放されたのとのことです。

Bさんが退職したときにはAさんは入社2年目で、ある程度自分だけで仕事を進めていけるようになっていたこともあり、Bさんの後任のOJTリーダーは任命されず、判断に迷ったときなどは内容によって直接主任や管理監督職に相談できるようになっていたとのことです。その結果、様々な人の考え方や仕事の進め方を知ることができるようになり、「勉強にもなったし仕事がとても楽しいと感じられるようになりました」と生き生きとした表情で語ってくれました。

この話を聞いて私が思ったのは、新入社員を受け入れた組織ではOJTリーダーを任命して新人の育成を進めることが一般的ではありますが、一人に限定してしまうことには前述のようなリスクもあるということです。

もちろん、申し分のない人がOJTリーダーに任命されるのであれば何の問題もないのですが、残念ながらそういう例はあまり多くはありません。そうすると、場合によっては新入社員はBさんのような人から仕事を習うことになり、Bさんのように組織のマイナス面を伝えたりすることで新入社員のモチベーションを下げてしまうことにもなるため、この点は問題です。

また、新人へのOJT担当を一人の人間に限ってしまうと、仮に双方の相性があまりよくなかったりしたときには、OJTがスムーズに進まないという問題も起こってしまいます。さらに言えば、教える側にもスキルや知識の得意・不得意分野といったものもあるはずです。

では、これを防ぐにはどうすればいいのでしょうか?前述のような問題を防ぐためには、OJTは一人の人間に限るのでなく、複数やチーム全体で担えるようにすることがお勧めです。そうすれば、各々の分野で一番得意な人から習ったり、様々な考え方や仕事の進め方を学んだりすることで、幅広い知識やスキルを身に付けることができるのではないでしょうか。

私は、これまで様々な組織のOJTの進め方について話を聴く機会がありましたが、OJTリーダーを一人に特定する組織がとても多いのと同時に、それ故の問題や課題が生じているところも多いと感じていました。

企業によっては、間もなく新入社員研修が終了し、来週早々には各部署へ配属するというところもあります。前述のような問題や悩みを抱えている組織は、ぜひOJTリーダーの任命のあり方について、今一度検討してみてはいかかでしょうか。

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第1,160話 入社式で記憶に残る社長の話にするには

2023年03月29日 | 仕事

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「具体的な内容は思い出せません」

これは、弊社が企業の新入社員フォロー研修を担当させていただいたときに、受講者から聞くことが多い言葉の一つです。

フォロー研修は、概ね入社半年後から1年未満のタイミングで実施されることが多いのですが、受講者の大半は入社式のときの社長の挨拶や訓示などの内容を思い出せないということが多いようです。

入社式で社長が訓示として話す内容は、組織の歴史・理念やパーパスをはじめ、企業をとりまく環境の変化、そして新入社員への期待と激励が中心です。将来その企業を背負って立つ存在になってもらうためにも、前向き姿勢や積極的な行動、たゆまぬ挑戦を求めるものが多いようです。

実際、私がこれまでにお会いしてきた社長は、いずれも入社式の訓示には相当の準備をして臨んでいらっしゃったようですが、冒頭の例のように少し時間が経つと残念ながら新入社員の記憶にはほとんど残っていないというのが現実のようなのです。

それでは、なぜ社長の訓示は新入社員の記憶に残らないのでしょうか。

疑問に思った私は、これを機に様々な企業の社長が過去に話された内容をあらためて確認してみました。すると、いずれの企業の社長も丁寧に話をされてはいるものの、その内容は「あるべき論」に終始し、「その会社らしさ」や「その人らしさ」といった特徴が感じられないことに気が付きました。もし別の企業の入社式で話をしたとしてもさほど違和感がない、どこでも通じるような内容が多かったのです。無難ではあるものの、さほどインパクトはないため、これではあまり記憶に残らないのも仕方がないのかもしれません。

それでは、どうすればよいのでしょうか?新入社員の記憶に残すために受けを狙ったり、突飛なことをしたりするのでは、本末転倒ということになってしまいます。

そこで私がお勧めしたいのは、「キーワードを絞って話をする」ということです。環境の変化や組織の理念、新入社員に求めることなどの中で、特にこれからの1年ほどで求めるキーワードを1つ、多くとも3つ程度に絞ったうえで、どのような経緯でそのキーワードを大切にしているのか、社長自身のエピソードを交えて話をするのです。もちろんキーワードを絞って話したからといって、全新入社員の記憶に残るかはわかりませんが、社長が自身のエピソードを交えて話した言葉や新入社員への想い・期待というものは、少なくとも通り一遍の内容よりはるかに心に響き、記憶に残るのではないかと思います。そして、それを聞いていたうちの何人かでも将来仕事をしている中で壁に突き当たり、進むべき方向性を見失ったりしたようなときに、入社式で聞いた社長の話しを思い出すことで、あらためて前に進もうとする原動力になるのであれば、訓示本来の意味があったと言えるでしょう。それこそ社長冥利に尽きると言えるのではないでしょうか。

今週土曜日は4月1日、早くも新年度が始まります。来週は入社式というところも多いと思いますが、各社の社長が入社式でどのような話しをされるのか、私自身も今から楽しみにしています。

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第1,155話 権限を与えてはいけない人とは

2023年02月22日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「パワハラの定義やパワハラの6類型(厚労省)には該当しないと思うのですが、上司が部下に対してパワハラだと思われる行為をしていて困っています」

これは先日、弊社が公開セミナーを担当させていただいた際に、受講者A氏から聞いた言葉です。A氏は製造業(中小企業)の生産課の課長ですが、役員でもある上司のB部長がA氏の部下のC氏をターゲットに、執拗な行為を繰り返しているとのことでした。

具体的に聞いてみると、B部長はパワハラの定義やパワハラの6類型についての知識は持ち合わせているため、それを踏まえパワハラにはならないと考えられるぎりぎりの行為を繰り返しているようなのです。しかし、それは周囲から見ても明らかな嫌がらせではあるため、C氏も周囲も辟易しているとのことでした。

A氏はこれまで何度もB部長に対してC氏との間を取りなしたり、やんわりといさめたりしているほか、C氏に対してもフォローをしているのだそうです。しかし、B部長がC氏への行為を止める気持ちが全くないため、事態は一向に改善しないとのことです。B部長がA氏の上司でなければ、もっと毅然とした対応をとることもできるでしょうし、B部長が役員でなければ人事部への相談もできることでしょう。しかし、A氏が勤めるのは中小企業であり、人事部=役員という組織のため、それも叶わないようでした。

弊社では「パワハラ防止研修」を担当させていただく際には、パワハラ解消に向け対応してもなお改善しないときには、加害者の行為を撮影したり録音するなど、パワハラの事実を収集しておくことの重要性について話をしています。しかし、冒頭の例ではB部長はパワハラに関する知識を承知の上で、パワハラに抵触しないぎりぎりの行為を繰り返しているため、「事実の収集」は残念ながらあまり役には立たないように思えます。

このような状況をふまえると、そもそもこの会社はなぜB部長のような人を役員にしたのかという思いを持たざるをえません。

もちろん、人は誰しも「様々な顔」を持ち合わせています。B部長は、自分よりも上の立場でさらに権限を持つ人に対しては「好い顔」をするのではないかと思いますが、立場が下の人に対してパワハラ的な行為をする人は、人事権を持っているような上司に対しては良い顔を見せ、一方の部下に対しては別のマイナスの顔を見せることが少なくないのではないでしょうか。

以前、私はある組織で管理職昇格者をアセスメントする際の面接官を担当したことがあります。一次の筆記試験をクリアして管理職候補者として二次試験に臨んだ人の面接を担当したのですが、実はその人は日頃からパワハラを繰り返している人だったのです。しかし、面接においては質問に対し簡潔明瞭に受け答えをし、いかにもリーダーシップがありそうで管理職としての能力が高そうだと見受けられる人でした。面接の受け答えからだけでは、パワハラをしているとは想像もつかなかったのですが、後になってその話を聞き、改めて人間にはいろいろな顔があるものだと感じざるをえませんでした。

そのように考えると、ある人を人の上につける、例えば管理職に昇格させる際には、仕事の成果のみならず、同時にその人の「人間性」をも確認することが重要だと思わざるをえません。もちろん、その人の人間性を確認するということは決して簡単なものではありませんが、その結果として部下を傷つけるだけでなく、結果として組織にも損害を与えるような事態は絶対に避けなければなりません。人を傷つけることに疑問を持ったり、人の痛みを感じられない人間ではないか時間がかかってでも確認することが必要です。たとえ一般的にはパワハラにならないとしても、それに類する行為はされた人に必ず痛みを与えるものであり、その痛みを感じられないような人には権限を付与してはいけないとあらためて申し上げたいと思います。

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第1,153話 「どうする!」現状維持バイアスを克服するためには

2023年02月08日 | 仕事

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ご存じのとおり、2023年のNHK大河ドラマは「どうする家康」です。徳川家康は江戸幕府を開いた初代将軍であり、どっしりと構えた威厳のあるイメージを持っている人が多いのではないかと思いますが、そのイメージからすると「どうする」は少々意外に思えるタイトルかもしれません。

これまで既に5回放映されていますが、そこに登場する家康はたびたび直面するピンチに頭を抱えて悩み、家中の者を頼ったり、挙句には逃げ出してしまうこともあったりと、どうにも頼りない存在であり、上記のような家康像とは大きく異なります。脚本家の古沢良太氏によると、頼りない家康から天下人へとどのように成長していくのか、そこがこのドラマの見所だそうです。

古今東西、人は生きていくうえで絶えず様々な局面に遭遇し、その都度判断や対応を迫られています。まさに「どうする」の連続なわけですが、そうしたときにどのように対応するのか、そこでその人の人間性や器の大きさが問われるわけです。

以前、ビジネスの世界で独立して仕事をし成功している人達に何か共通するものはあるかについて数人でディスカッションをしたことがあります。そのときに多くの人が言った一つに、「決断のスピードが速い、行動に移すのが早い」ということがありました。確かに私の周囲でも、多くの成功者は「先延ばしにする」ことがほとんどないように感じます。メールの返事一本にしても、クイックレスポンスです。

さて、誰もが知っているビジネスの成功者の一人に、ソフトバンクの孫正義氏がいます。私は以前、同社の社長室長として孫氏のもとで働いた経験を持つ三木雄信氏の講演を聞く機会がありましたが、「孫氏はとにかく意思決定や行動のスピードが速い」と話されていました。

もちろん、成功のためポイントとして「即」決断し行動に移すことはとても重要なことだと思いますが、しかし同時に、それは決して簡単なものではないはずです。成功に向け決断と行動の必要性はわかっていても、その前の情報収集だけで満足してしまって、結局その先にはつながらないということも少なくないわけで、かほどに迅速な決断と行動とは難しいものなのです。

さらに、私たちが意思決定を迫られる多くの事柄において、メリットと同時にデメリットも引き受けなければならないような状況が少なくないのではないかと思います。いわゆるトレードオフを迫られるわけですが、そうなるとますます決断は困難となり、わざわざデメリットを引き受けるよりは現状を維持したほうが良いという「現状維持バイアス」が働くケースが出てくるのです。 しかし、当然ながらこの現状維持バイアスが働いている限り状況は今とは大きく変わらず、大きな成功もおぼつかないということにもなってしまうのです。

それでは、私たちが「どうする」と決断を迫られた場合、先延ばしや現状維持バイアスを克服するためには、どうすればよいのでしょうか。あらゆる情報を得たうえで、それでもなお判断に迷ったときには、勇気をもってあえて変化を取るという選択も大切だと私は思うのです。現状維持より変化を選択することはリスクも想定され、大変なエネルギーがいることです。しかし敢えてそれをすることによって、「どうする家康」のように世界が広がっていくのではないでしょうか。

もちろん、これは大変に難しい問題で軽々にどちらと言えるものではありませんが、家康が数々の「どうする」においてどう決断し行動するのか。それを通じて成長していく姿を見られるとともに、何らかのヒントが得られることも楽しみにしています。

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第1,150話 加藤清正のリーダーシップ

2023年01月18日 | 仕事

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「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」 

これは、太平洋戦争時の海軍軍人 山本五十六の言葉です。人材育成において引用されることが多い言葉ですが、ここには人材育成のポイントとなることが示されています。

この言葉は、もともとは江戸時代中期の米沢藩の藩主 上杉鷹山の言葉「してみせて 言って聞かせて させてみる」が語源という説のほか、さらに遡れば中国の史記にも同様の意味の言葉があるとも言われています。こうした言葉が生まれる背景には、古今東西、人材を育成することは決して簡単なものではないということがあるのではないでしょうか。

日本において「人材育成」に熱心だった歴史上の人物は様々いますが、本日は部下(職人)への細かい気遣いをしていたと言われる加藤清正について取り上げます。

ご存知の人も多いかと思いますが、加藤清正は安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、肥後熊本藩の初代藩主、虎退治や築城の名手として広く知られています。秀吉の子飼いから肥後の有力大名になりました。秀吉の九州平定に従い肥後国領主となった佐々成政が失政により改易されると、肥後北半国19万5,000石を与えられて隈本城に入り、後の天正19年(1591年)頃よりこれに改修を加え、熊本城としたのです。

その改修の際、加藤清正は築城職人に対して「大工の新左衛門の病気はどうだ?病気が良くなったら重ねて煩わないように、すべてに精を出して働くことは無用だ」や、「朝鮮から帰国した大工たちには10日間の休みを与えてから、城の建築に従事させること」など、細かい気遣いが感じられる発言をしていたと伝えられています。

歴史を振り返ると、配下の者を叱咤激励して城を築いた武将はたくさんいたでしょう。しかし、そういう中で加藤清正は19万石の大大名でありながら、直接接点を持つことが少なかったであろう職人に対してまで「大工の新左衛門」というように具体的な名前を挙げ、病状を気遣う気配りを見せていたのです。

このように自らの配下をとても大切にしていたと考えられる加藤清正ですが、その一方で城づくりにおいては一切の妥協をせず、作り終えたものに対して「本丸北の櫓は北側が下がってみえる。壊してやり直すこと」などやり直しを命じていたとの話もあります。指示についても、自ら筆を執り「馬屋を立てる場所の地割を厚い紙に書いて送れ。こちらから指示をするので、建てる用意をしておくこと」など実に具体的に行っていたようで、「うまくやれ」などといった曖昧な指示をすることはなかったのです。

我が国にも古今様々なリーダーがいたわけですが、19万石と言えば今なら大企業とも言える規模のはずです。そうした大きな組織のトップであっても部下を細やかに気遣いつつ、一方では仕事上の指示を具体的にしつつ妥協をしないという点で、加藤清正のリーダーシップには学ぶべき点が多いと思います。

こうした加藤清正の姿勢は、もしかすると「人たらし」と言われる一方で配下の武将を時に飴と鞭で巧みに支配した豊臣秀吉をロールモデルとしていたのかもしれません。様々なタイプのリーダーがいる中で、部下育成を含めたリーダーシップの一つのモデルとして、大いに参考にすべきものではないでしょうか。

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