東野圭吾の『容疑者Xの献身』は、彼の全作品中5指に入る傑作と言っても過言ではない。ま、この作品で東野圭吾は今さらながら(笑)の直木賞を受賞したが、そんなのは単なる付け足しに過ぎない程の名作である。と、僕は思う。
その『容疑者Xの献身』が映画化される。去年、『探偵ガリレオ』がテレビドラマ化されたが、その映画版という感じらしい。キャストもほぼ同じようだ。という事は、テレビドラマで主役を務めた福山雅治がメインの内容になるのだろう。ちょっと違うような気もするが、まぁいいでしょう(笑)
近頃は、映画の公開前に、専用サイトをオープンするのが当たり前になっているようで、『容疑者Xの献身』も、専用サイトがある。これを見る限りでは、原作の内容に忠実なようだ。つーか、『容疑者Xの献身』は東野圭吾ならではの、緻密な構成と秀逸なトリックが肝のミステリーであるので、映画化するにあたって、原作にはないエピソードや登場人物を加える訳にはいかないわな(笑)。テレビの方は見てないので、原作にはない柴咲コウの役どころがどんなものなのか、やや気にはなるが。
ストーリーは、おそらく皆さんだいたいはご存知だろう。天才数学者だが高校教師をしている男が、アパートの隣人母娘の犯罪を隠蔽すべく知恵を絞る話だ。恐るべき頭脳を持つ男が生み出した完全犯罪を崩す事が出来るのか、というミステリー的側面と、何故この天才数学者は、危険を冒してまで隣人母娘を救おうとするのか、という一種の人間ドラマが交錯する、極上のストーリー展開である。正に東野圭吾の面目躍如。この天才数学者を演じるのが堤真一、という事で、原作のイメージからするとカッコ良すぎる気がしないでもないが(笑)、実力はある人と思うし、どんな芝居をするか、楽しみでもある。
東野作品って、これまでにもいくつか映画化されている。『秘密』『ゲームという名の誘拐(映画名:G@ME)』『レイクサイド(映画名:レイクサイド・マーダーケース)』『手紙』など。『白夜行』『時生』はテレビドラマになったし、秋から『流星の絆』もドラマになるらしい。なんというか、僕のような素人が言うのも何だが、東野作品って、映像化しやすいような気がする。読んでいても、風景が浮かんでくるし、登場人物も混乱しないように書かれていて、人間関係とか把握しやすいし、構成もきっちりしていて、現在と過去の書き分けもはっきりしている。まるで台本のようでもあるので、小説を冒頭からそのまま映像にしていけば、映画として完成するんじゃないか、とすら思える。僕ですら、映像のイメージが浮かぶくらいだから、専門家からすれば、これほどやりやすい素材はなかろう。但し、映像を作る側の勝手な思いこみを許さないような部分があるような気もするが。
ちなみに、東野圭吾自身は、「小説と映像作品は全く別のものであるので、映像化の際自分は一切注文をつけない」という主義だそうな。ただ、あまりにも科学的にあり得ないエピソードを付け加えられるのは困るそうだが(笑)。彼は、かなり理詰めで小説を書くタイプだそうだが、映像作家の中にはひらめきで作る人も多くいて、その辺で意見が異なるケースも多いらしいのだが、後で考えてみると、映像として見る場合には、専門家のアイデアの方が面白い、と思える事も多く、そこでまた迷いが生じたりもするらしい(笑) だから、基本的にお任せにしてるのだろう。
個人的には、他の東野作品では、『天空の蜂』あたり映画化して貰いたいな。遠隔操作で乗っ取られた超大型ヘリを巡る攻防を描いた作品だ。飛行中のヘリから子供を救い出すシーンなんて、読んでいても手に汗握るくらいだから、映像になったら凄い迫力だろう。サスペンス&スペクタクル巨編として、いい線いくんじゃなかろうか。
あと、ミステリーとしては異色の『どちらかが彼女を殺した』とか『私が彼を殺した』といった所も、映像化すると面白いのではないかな。この2作品共、犯人が明かされず、読者が推理する、という内容になっている。小説と同じくラストは、「犯人はあなたです」と刑事が指さした所で終わり、なんてどうでしょう?(笑) 映画にするなら、懸賞金付き犯人当てクイズなんてキャンペーンも出来そうで、話題性十分と思うけどね(笑)
という訳で、『容疑者Xの献身』10月4日より公開である。見たい...