いささか前の話であるが、ベイ・シティ・ローラーズのレスリー・マッコーエンが亡くなった。享年65歳。死因は不明とのこと。まだまだ若いのに残念だ。謹んでご冥福をお祈り致します。
それにしてもベイ・シティ・ローラーズ(以下BCR)である。特定の世代にとっては、避けては通れない存在だ。1970年代半ば、日本での彼らの人気は、ほんと凄かった。特に、1975年~1976年頃、彼らの曲がFM・AM問わずラジオから流れない日はなかった、と言い切ってしまってもいいのではなかろうか。現在50歳代半ばの洋楽ファンのほとんどは「サタデイ・ナイト」で“Saturday”の綴りを覚えたはずだ(笑) この「サタデイ・ナイト」を筆頭に、「バイ・バイ・ベイビー」「ロックンロール・ラブ・レター」などといった、当時の我々(もう言い切ってしまう)を虜にしたキャッチーで胸キュンなヒット曲たちは、今でも色褪せない名曲ばかりであり、タータンチェックというキーワードと共に、正に青春の象徴だった。あの頃、BCRはラジオのリクエスト番組では常にクイーンと人気を二分していたが、今となってはこの両者、あまりにも差がついてしまった。堂々たる“レジェンド”であるクイーンと、“あの人は今”みたいな存在のBCR。何が明暗を分けたのか^^;
僕自身も、一時期かなりBCRにご執心だった(笑) 完全にクイーンと同列だった時もある。デレクの方がロジャーよりも上手いのではなかろうか? なんて思ってた頃もあったけど、テレビで放映されたBCRのライブ映像をいくつか見てて、どれも口パクだったのに幻滅したりなんかもして、徐々にBCR熱は冷めていった。が、ライブの実力(笑)はともかく、ラジオで耳にするヒット曲は相変わらずキャッチーで好きだった。特に「夢の中の恋」とかね。でも、思えば、この曲が最後のヒットで、その後BCRは失速していったような気がする。BCRの顔だったレスリーが脱退した、なんて衝撃的なニュースも「ふ~ん」みたいに聞いてたなぁ。実質的にBCRの全盛期は、1974年頃から1977年頃までのほぼ4年間、という短いものだった。
20年程前の日本で、カーペンターズ、アバ、ビージーズといった、主に70年代の洋楽のスターたちの曲がテレビドラマ等に使われて注目を集めていた事があった。特にカーペンターズ人気はすさまじく、新編集のベスト盤が100万枚のセールスを記録したそうで、当時の若い世代(今なら40代かな。笑)に聴かれていたようだが、この次に来るとしたら、それはBCRではないか、と僕は密かに思っていた。キャッチーでどことなく哀愁の漂うBCRの曲は、ドラマの挿入歌には最適なのではないか、と。が、結果的にはBCRがドラマに使われる事はなく、ブーム再来もなかった(爆) 惜しいことをしたなぁ、と今でも思う(なんのこっちゃ)
と、かようにBCRは我々にとっては特別なのであった。そのBCRのレスリー・マッコーエンの訃報である。これは本来なら、フレディ・マーキュリーやカレン・カーペンターの死と同等の衝撃であってしかるべきなのである。思えば、BCRのメンバーは、アラン・ロングミュアーとイアン・ミッチェルが既に亡くなっているので、レスリーは3人目。悲しい現実である。
合掌
という訳で(は?)、最近買ったCDから。
以前にも書いたが、僕はロバート・プラントのソロは、ほとんど聴いていない。興味はあったけど機会がなかったというか。ただ、「ビッグ・ログ」のPVを当時見た事があって、良いとも悪いとも判断つかない、という印象だったのだが、ロバート・プラントのソロはツェッペリンとは全く違うものだ、というのは感じていた。そりゃそうだよね。ファンとしては、ツェッペリンの顔だったロバート・プラントに、解散したツェッペリンの幻影を求める訳だが、本人はやりたくないだろう。あの頃はまだまだ若かったし、それなりに志向はあったろうし、ツェッペリンのボーカルというイメージも払拭したかっただろうし、元ツェッペリンという看板なしでもやれる自信はあったろうし。そんな事を僕は、ロバート・プラントのソロ・アルバムのジャケットや「ビッグ・ログ」に感じていた訳だ。思い起こせば、ロバート・プラントがソロ活動を開始したのとほぼ同時期に、ジミー・ペイジも初ソロ作(映画のサントラだけど)を発表してた記憶があるのだが、その評判はあまり芳しくなかったのではなかったか。ファンが求めるスタイルとはかけ離れていたようだ。この当時、おそらくペイジもプラントも似たような心境だったのだろう。
ジミー・ペイジもロバート・プラントも、初ソロを出したのは1982~83年頃かと思うが、それから時は流れて1988年、巷ではちょっとしたツェッペリン・ブームが起こっていた。何がきっかけだったのか分からない。ホワイトスネイクやキングダム・カムがとてもツェッペリン的な音楽を発表したこと(これについては、個人的に異論あり。ホワイトスネイクの「スティル・オブ・ザ・ナイト」のアレンジがツェッペリンの「ブラック・ドッグ」に似てただけのこと)、アトランティックの40周年記念コンサートで再結成レッド・ツェッペリンが演奏したこと、等々諸説あるし、別にどうでもいい事でもあるのだが、このツェッペリン・ブームに乗ったのか、もしくはそれがブームを起こすきっかけとなったのか、同じ時期に発表されたジミー・ペイジとロバート・プラントのアルバムが、ツェッペリンの再生として話題になった。ジミー・ペイジの『アウトライダー』とロバート・プラントの『ナウ・アンド・ゼン』である。
僕はジミー・ペイジの方は未聴だが、ロバート・プラントはシングル・カットされた「トール・クール・ワン」はラジオで聴いて知ってた。ジミー・ペイジがギター弾いてるせいか、確かにツェッペリン的と言えなくもない感じだった。ただ、それ以前に聴いた「ビッグ・ログ」に比べると、「トール・クール・ワン」の方がハード・ロックっぽい感じで、ロバート・プラントはこの路線の方が合っているのでは、となんとなく思った。
ロバート・プラントは、最近30年以上に及ぶソロ・キャリア(ツェッペリンより長くなってしまった)を包括したベスト盤を発表した。ここ2~3年、ようやく僕もロバート・プラントのソロを少しづつ聴き始めたので、買おうかなと思ったのだが、これには「トール・クール・ワン」が入っていない事に気づいた。それなら、もっと前のベスト盤にしようかな、なんて思ってたら、中古でこの『ナウ・アンド・ゼン』を見つけたので買ってしまったという次第。
という訳で初めて聴いてみた『ナウ・アンド・ゼン』予想以上に素晴らしい。なんというか、とてもロック的アプローチだ。「ビッグ・ログ」あたりの印象とは違う、正に硬派なロック、しかもボーカル中心の作り。ツェッペリンが解散せず、そのまま活動を続けていたら、こんなアルバムを作ったのでは、と思わせる。ツェッペリン的な音ではないけどね。多少、80年代という時代を感じさせる部分はあるものの、曲の出来もいいし、良いアルバムと思う。ジミー・ペイジは「トール・クール・ワン」の他「ヘブン・ノウズ」でも良い感じでギター弾いてるし。ボーナス・トラックとして、「トール・クール・ワン」を含む3曲のライブ・テイクが収録されているが、これがまた素晴らしい。特に「トール・クール・ワン」では、ツェッペリンの曲のフレーズが挿入されたりなんかして、なかなかに楽しい。
ま、なんというか、もっと早く聴いてれば良かった、という気になった。70年代でも80年代でも、まだまだ聴いてないのは多い。生きてるうちに、あとどれだけ聴けるかな(爆)