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MFCオーナーのブログ

渋谷陽一を悼む

2025年07月22日 23時29分58秒 | 時事・社会ネタ
またしても訃報である。音楽評論家でありDJであり雑誌『ロッキン・オン』の創刊者でもある渋谷陽一氏が亡くなった、享年74歳。2023年に脳出血で倒れ、ずっと闘病していたというのを、今回の訃報に接して初めて知った。非常に残念というか、ぽっかりと心に穴が開いた気分。謹んでご冥福をお祈り致します。

当ブログでも何回もネタにしているが、僕は渋谷陽一に多大な影響を受けた一人である。思想的な事は正直言うとあまり理解していないが、間違いなくロックを聴き始めた頃の師匠であり、水先案内人であった。特定の世代にとっては、1970年代の半ば頃、NHK-FMで毎週日曜日の夜8時から放送されていた『ヤング・ジョッキー』は忘れがたい番組だろう。僕もご多聞に漏れず、毎週欠かさず『ヤング・ジョッキー』を聞いていた。この番組と渋谷陽一のおかげで、憂鬱なはずの日曜の夜が、どれだけ楽しく充実したひとときであったことか。時報に続いて、ジングルも何もなく、いきなり「こんばんは、渋谷陽一です」で始まるオープニングを今でも鮮明に覚えている。

『ヤング・ジョッキー』は、その時点での新譜を紹介するのがメインだったと思うが、フツーにリクエスト特集もあったし、渋谷陽一が一人で好きな事を喋り好きな音楽をかけ続ける事もあった。個人的には、この”渋谷陽一のロック夜話”というタイトルで、彼が好きな事を喋るコーナーが好きで、ほんと、色々な事を教えて貰ったものだ。ハードロックとかプログレとか、リスナーから人気投票を募り、そのランキングを紹介していく企画も良かったな。あと、夏休みとかに、『ヤング・ジョッキー』とは別枠の特別番組『渋谷陽一のロック講座』とかを放送してたのもよく聞いてた。ほんと、あの頃は楽しかった。

渋谷陽一は、評論家でもあったけど、好きでないとか面白くない、とかも正直に言う人でもあり、そこがまた良かったと思う。ま、好みの問題ではあるのだが、このバンドを評価出来ない理由というのを論理的に説明したりもしてて、それはそれで非常に勉強になった。反面、レッド・ツェッペリンのファンを公言してて、番組でもそれを隠す事はせず、一種盲信的なファンとしての一面を見せていたのも楽しい。喋りだけでなく実は選曲のセンスも良く、ツェッペリンにしてもしょっちゅう番組でかけてたけど、有名曲はあまりかけず、一般には知られていないアルバム・トラックなんかをよくかけていて、実際、「ワントン・ソング」や「夜間飛行」も『ヤング・ジョッキー』で初めて聴いた。ツェッペリンだけでなく、前述の人気バンドランキングや講座でも、有名なアーティストの知られざる曲を好んで選曲してたように思う。

音楽だけでなく、その発言にも結構影響されたりもした。後年、彼の著作も何冊か読んだが(けど、『ロッキン・オン』はあまり読んでない^^;)、実は慧眼な人である。僕なりの”渋谷陽一語録”は、当ブログのあちこちに引用してますので、良かったら探してみて下さい(笑) ま、全ての発言に共鳴した訳でもないし、反発した事もある。けど「ロックは最新のものが一番価値がある」という言葉には、今でも実は呪縛されてたりするのだ。

思い出すのは、フォリナーの1978年の『ダブル・ビジョン』のLPのライナーノーツを渋谷陽一が書いてたこと。当時としてもめちゃ意外だったけど、さすがにライナーだけに、批判的な事は書かないよな、なんて思って読んでみたら、確かに当たり障りのない文章だった。ただ、渋谷陽一らしいな、と思ったのは、「フォリナーは守備範囲が広い。どんな曲でもこなす。なのでアルバムがバラエティに富んでいる。一科目だけ満点取ってあとは落第点ばかり、というバンドが多い中、フォリナーはどの科目でも全力投球で85点以上取る。その手堅さめ真面目さがフォリナーを成功に導いたのだ」という意味の事を書いてたことで、なるほど、そういう見方もあるのか、と思ったな。その頃既に僕はフォリナーのファンだったけど、正直な所、そこまで考えてなかった^^;

後年、自分は評論家というより編集者なのかもしれない、みたいな発言もあったようだが、確かに、直感的に捉えた物を論理的に表現できる、という人だったと思う。そういえば、「産業ロック」という言葉も、僕は渋谷陽一が言ってるのを聞いたのが最初だ。秀逸な表現だよな、と今でも思う。テレンス・ドレント・ダービーがデビューした時、これはアメリカで絶対売れる、と宣言し、本当に売れてしまった、というエピソードもある。

とにかく、惜しい人を亡くしました。渋谷陽一に導かれて、ロックを聴きまくっていた10代の頃、正に僕にとって青春だっと思う。彼がいなければ、ここまでロックにのめり込んでいたかどうか。恩師だね。本当に感謝しています。

安らかにお眠り下さい。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ローリングウエスト)
2025-07-23 22:02:31
渋谷陽一さんの訃報、心より哀悼申し上げます。懐かしき洋楽を語れる大物レジェンドは、もう湯川れいこ・小林克也・ピーター・バラカンなどが残っていますが、いよいよ時の経過を感じます。ビーチボーイズのブライアン・ウイルソンに続き、オジー・オズボーンも亡くなり、今年はいよいよさらに超大物の訃報が続々と入って来るのかもしれないと思っています。
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謹んでご冥福をお祈り致します。 (MFCオーナー)
2025-07-23 23:10:28
♪ローリングウエストさん

渋谷陽一氏の訃報、本当にショックでした。ことロックに関しては、恩師が亡くなったのに等しいです。自分にとって、またひとつの時代が終わった、そんな気分です。
今日接したオジー・オズボーンの訃報にも驚きました。ついこないだサバスのライブやったばかりなのに...そのライブも、ラストライブと銘打たれていたようですが、一月もしないうちに亡くなるなんて...
ほんと、今年も大物がたくさんいなくなってしまうのかもしれません。キース・エマーソンとグレッグ・レイクが同じ年に亡くなったのを思い出してしまいました。避けられない事とはいえ、本当に寂しく悲しいです。
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