痩せ細ったトマトは一人ではどうにもらなず、腰痛で戦力外通告を受けていた専務をレギュラーに呼び戻し、青もぎや追肥、遅れていた芽欠きや誘引を畳み掛けるように次々にこなし、ようやく復活の兆しが見えて来た。
やっと気持ちにも余裕が出て来た。そうだ、気晴らしに川に行こう。
行く前に、まずはテンカラ毛ばりを巻いてから。
冷えたビール(発泡酒だけど…)を飲みながら、喰い付く大きな岩魚や山女魚に強くしなるテンカラ竿、大物と格闘する釣りキチ三平に姿を重ね、ちょっと老眼気味(認めたくはない…)にしかめながら針に集中。
イイ気晴らしだ。
こだわりのテンカラ毛ばり、特製カディス。
これしか出来ないから、これしか作らない。だからこれで釣るしかない!
ある日の夕方、いざ川へ!
ま、行くとこはいつも決まっている。畑近くの里川だ。
夕方、早めにトマト作業を切り上げ、すでに下校していた次男坊を連れて向かった。
どうせ、私の場合帰る間際に最後の数ポイントで岩魚なんかちょちょいと釣れるだろうから、次男坊に先を譲って後方から指導しながら楽しませることにした。
次男坊にはまだテンカラは早いので、家の周りで集めたバッタをエサに竿を振らせた。
何度かあたりはあるが、やはり小学生には岩魚は難しいかなあ~、そろそろ俺の出番かな~、と思っていたそんな時。
次男坊、人生初の岩魚を釣り上げた!
まあまあ、釣り上げた岩魚も小学生サイズ。身の丈に合った岩魚。彼としては大満足で竿を畳む。
さ、大人の私が身の丈に合った岩魚を釣り上げてみせようと、残り少ないポイントへ美しいラインの弧を描きながら、特製毛ばりをあたかも飛翔する昆虫が静かに水面に舞い降りたかのように、毛ばりを着水させた。
パシャッ!
久しぶりの敏感な合わせに、一気に獲物は引き抜かれカツオの一本釣りが如く魚は宙を舞った…。
釣り上げたのは、小さなボヤでした…。とほほ~。泣
猫も喰わぬ雑魚中の雑魚、ボヤ(正式名:アブラハヤ)。俺さまの特製毛ばりに喰い付きやがって…
結局、この夕方は次男坊の小学生岩魚の勝ち。しかも、帰りの車内で息子に慰められる始末。
気晴らしのつもりが、さらにストレスに…。
でも、ご安心ください。
後日の夕方、いつもの里川で27センチの岩魚を見事釣り上げ名誉挽回、憂さをすっきりと晴らすことが出来たのでした。
目出度しめでたし