畑が終わり、やっと自由な時間ができた。
農業に没頭していた頭と身体は、いきなりスイッチONにはならないものだ。スキーが始まる前のこの期間に、頭と身体の遅れを取り戻さなくてはならない。
というわけで、この時期恒例の初冬の尾白山へ向かった。
ただの登山では面白くないので、宮沢入川を遡行することにした。
林道終点からしばらくは砂防ダムの連続で、広河原も歩きやすい。左岸には平行して杣道もあったが、沢の方が高速道路だ。
しかし、地形図通り両岸の登高線が狭くなると、峡谷・ゴルジュのようになってくる。いつの間にか杣道も消えていた。
今日の足元は舞茸採りや猟で使うスパイク長靴。小さなステップを見つけへつりながら、また小さく高巻きしながらこなしていく。
しかし、さらにゴルジュ帯となり高巻きもいやらしい感じ。
お湯を飲みながら脳内会議を開き、計画を変更し、ここから山頂へダイレクトにつながる主尾根、通称「ヘビゾネ」を目指して登高することに決めた。
この先が見たかった…。狩猟の大先輩たちが話してくれたこの奥にある過去の産業遺産を、この目で確かめたかった。
それはまた、別の機会に別のルートで挑戦しよう…。
だいぶ上の岩場から、しばらくじっと俺を見ていたクラッぽ。
V字谷の直登は、あっという間に標高を稼ぐ。息も切れる。
途中にあったミズナラの大木の根元には、腐れてしまった白房の舞茸が数株も!
もったいねえ~
やっと主尾根「ヘビゾネ」に取り付いた。昨夜の雨はここでは雪だったようだ。
さほど密でもない藪をぐいぐい登る。が、霧氷やら湿雪やらが身体にまとわりつき、雨に打たれたように全身びちゃびちゃ。
この0℃前後の藪こぎは始末が悪い。
辿ってきたヘビゾネを振り返る。地元猟師の通称だ。麓からうねうねと大蛇のように山頂へ突き上げる尾根(そね)のこと。
所どころヒメコマツの大木が林立する。豪雪地帯ではやせた尾根に集中して存在する。遠くから見ると馬のたてがみのように生えている。
山頂まで100mほど。ここからが逆毛の密藪となり、スピードダウン。
全身びちょびちょ。遡行と藪歩き5時間15分で山頂へ。
登山道方面もすっかりガスの中だったが、明るくなって来たぞ!
少し休んでいると、一気にガスが晴れましたー!
日が差すと、ぱらぱらと一気に樹氷が溶けだした。
陽が傾き、今夜の幕場へと向かう。
今夜のテン場は、毎年恒例のブナ森で。ウィスキーをちびりちびり、NHKラヂオ深夜便を子守唄に寝に落ちた。
真夜中にシカ?カモシカ?の来訪が二度ほどあったが、声を出して追っ払た。
翌朝、消化不良の睡眠で目覚め。エアマットに穴が開いていた…。冷たいはずだ。
東の空、七ヶ岳方面の朝焼けがキレイ!
日の出とともに、山を下りた。
さて、冬に向けて遅れている準備を急ごう。
2019-20 テレマークスクール&スキーガイド和泉屋AK.T