イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

マッコリ・イン・トランスレーション ~オモビニを探してソウルフルな旅~ 7

2008年06月29日 23時46分51秒 | 旅行記
 それでも僕はかつての忠実な外野手としてのささやかな誇りを忠実にトランクの底につめ、港の石段に腰を下ろし、空白の水平線上にいつか姿を現すかもしれな韓国行きのスロウ・ボートを待とう。そして韓国の街の光り輝く屋根を想い、その緑なす草原を想おう。
 だからもう何も恐れるまい。クリーン・アップが内角のシュートを恐れぬように、革命家が絞首台を恐れぬように。もしそれが本当にかなうものなら......
 友よ、
 友よ、韓国はあまりにも遠い。

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外国にくると、そこを訪れることがあらかじめ決められていたような、宿命に似た不思議な感覚に包まれることもあるし、来るべきではない場所に間違って来てしまったような、自分のいる場所ではないところに突然放り出されてしまったような、茫漠とした違和感につきまとわれることもある。いったん彼の地に足を踏み入れてしまえば、ここに来ることは天のめぐり合わせだったのだと、後づけで自分を納得させることもできる。だけどやっぱり強烈な異質が迫ってきて、あまりにもすべてが違いすぎて、めまいがしそうにもなる。銀河鉄道に乗って、別な惑星に降り立ったみたいな気持ちがする。

姿を現すことはないと思っていたスロウ・ボートに乗って、ソウルに来てしまった――。

それにしても、僕は韓国のことを知らなさすぎる。路地をしばらく彷徨い歩いて、この国を形作っているものの基礎の基礎、土や石、原料のようなものを目の当たりにし、体で感じたような気がして、頭の芯からしびれてしまった。本当に面白い。

でも、そろそろ戻らなければ、と思って街の方を目指してしばらく進むと、本が、露店形式で売られていた。バーゲンのようだ。思わず本の虫の血が騒ぎ、群がる人の波に身を投じて、本を物色する。ブックハンターとしての本能が目覚める。ヲイヲイ、ハングル読めないッつーの。よく見ると、英語の本もごくわずか売っていた。なので、Esquire誌を一冊購入した。6000ウォン。高い! いや、ウォンは円の10倍くらいの相場なので、日本円の感覚だと、600円くらいか。それでも、韓国の物価にしては、そこそこ高い。レジでは、韓国人と間違われて韓国語で話しかけられる。I cannot speak Korean, I am sorry! で、よく見ると、そこは『KYOBO BOOK CENTER』という大きな書店の真ん前だった。ヤッタ!! 灯台下暗し。これはチャンスとばかり、吸い込まれるように中に入る。キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!! 相当に大きい!! 本もものすごくたくさんある。おそらく数十万冊はあるだろう。面白いのは、本の多くが棚ではなく台の上に平積みされていること。日本の書店だと、基本的にスペースを埋めているのは本棚で、その少し手前に平積みのスペースがある、という感じだけど、ここでは棚のない普通の「ザ・台」みたいな台の上に、本が平積みされている。なぜかは分からないけど、これも文化的な差異なんでしょうね。街を歩いていて、あまり小規模の書店は見かけなかったので、韓国の出版文化にやや不安を感じていたのだけど、どうしてどうしてこれほどの大書店があり、これだけ多数の書籍が出版されているのである。ハングルはまったくわからないので本の内容もほとんど推測するしかないのだけど、ちょっとびっくりするくらい本の数が多く、そして、翻訳本もかなりたくさんあるような気がした。印刷も綺麗だし、装丁にも工夫がこらされている。韓国にも翻訳を生業とする、翻訳LOVEな人たちがたくさんいるのですね。母国語をしゃべる人口が少ない国というのは、翻訳文化も活発になるものなのである(ような気がする)。

 韓国の本屋にいったら、やってみたいことがあった。それは、僕が翻訳をさせていただいたことがある書籍の、韓国語版を探してみることだ。『Head Rush Ajax』を探してみた。これなら、英語でもタイトルが書かれているはずだから、ハングルが読めなくてもわかるに違いない。あ、『Head Rush Ajax』あった、アッター!!!━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!! たしかにハングルで訳されている(当たり前だ)。でもなぜかびっくり。おお、兄弟。翻訳したのが誰かはわからないけど、ともかく、お前もこれ苦労しながら訳したんだね(涙)。俺とお前は、義兄弟だね。酒でも呑もうよ、兄弟!

 Foreign Booksのコーナーがあって、英語の本がかなり充実していた。そこで、Facts about Korea という本を買った。韓国の文化、社会、歴史などについて様々なことが書かれてある。わずかしかここには滞在しないけど、少しでも勉強しておきたい。もっとこの国のことを知りたい。殊勝にもそんなことを思ってしまったのだった。もちろん、『地球の歩き方』は持ってきていましたが。

ハングルの訳本手にとりああ兄弟お前も苦労したんだね(涙)

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