由美ちゃんの運転で、エイコちゃんの家に向かった。家に着くと、エイコパパがバーベキューの準備をしてくれていた。エイコママが野菜を切ってくれていた。今宵もまた、宴が始まるのだ。そんなワクワクする空気がみなぎっている。
紀ちゃんはすでに到着して、夕日パークに寄っていた僕たちの帰りを待っていた。これから続々とみんなが到着するはずだ。何から手を付けていいのかわからないけど、とにかくみんな宴会の準備を始めた。僕はさっそくにむしの準備をするべく、エイコちゃんの家の前にある浜田商業高校のグラウンドに出て、土の状態を確認したり、肩を温めるために軽い運動をしたりした。女性陣の冷ややかな視線を感じた。
コマッキーとかぺ君が到着した。ふたりはさっそく慣れた手つきでコンロの炭に火を起こし始めた。かぺ君はこういうときにものすごくハッスルする人なのだということがわかった。もうわし、この夏だけで何度バーベキューやったかわからんくらいなんよ、とかぺ君は言った。コマッキーも黙々と着火作業に集中している。こういうとき、浜っ子は実に男らしく、頼もしいものなのだ。なかなか上手く火は付かなかったのだけど、しばらく遠くで様子を見守ってくれていたエイコパパがさりげなく手伝ってくれたおかげもあって、無事に炭は燃え始めた。
そうこうしているうちに、清君がやってきた。愛娘のりおんちゃんを連れてタバサさんもやってきた。バーベキューの準備もだいぶ整った。かぺ君とふたりでグラウンドに行き、ゴムボールでキャッチボールをした。にむしのために、足の先で地面に土俵のような円をふたつ描いた。この円の間を攻めのチームが往復するのだ。かぺ君にあらためてにむしのルールの説明を受けながらキャッチボールをしつつ、冗談みたいに言っていたにむしが本当に実現しそうになっていることへの興奮を抑えきれなかった。
あまりにむしに気を取られていると、なんだかバーべーキュー隊に申し訳ない気がしたのでさりげなく庭に戻ってまた準備を手伝っていると、突然の参加者が訪れた。首にタオルを巻いて、手土産のビールを持っている。ヒロシ君だ。ヒロシ君とは小学校の1、2年で同じクラスだった。スポーツも勉強もクラスで一番の男前で、クラスのヒーローだった(ちなみに、かぺ君のアゴが血だらけになった事件のとき、かぺ君と休み時間に相撲を取っていたのがヒロシ君である)。エイコちゃんの家のすぐ近所に住んでいるので、せっかくだからと彼女が声をかけてくれたのだ。ヒロシ君自身も自宅で家族のみなさんとバーベキューを始めようとしていたところ、エイコちゃんとマキちゃんの突撃訪問のお誘いをもらってこちらに急遽参加することにしてくれたのだと言う。
突然のことにびっくりしてしまった。ヒロシ君自身も、中学や高校を卒業して依頼、他のメンバーともめったに会う機会はなかったようだったし、ちょっと面食らっているようだった。僕がいることにも驚いただろう。懐かしく、とても嬉しい。そしてまたまた、何を喋っていいのかはわからない。ともかく、バーベキューは始まろうとしている。だがその前に、僕たちにはやるべきことがある。そう、「にむし」だ。
全員でグラウンドに出た。すでに時刻は六時を過ぎ、日が暮れ始めている。かぺ君と清君が守備のふたりになり、残りが攻撃チームになって、さっき描いた輪の中に入った。タバサさんがビデオを回してくれている。エイコちゃんとマキちゃんを除いて、反対側の輪のなかに全員が入った。ヒロシ君も、さっきみんなと再会したばかりなのに、参加してくれた。いったい何がどうなっているのか、戸惑っているかもしれない。でもそれがおかしく、そして嬉しかった。
夕焼け色に染まり始めたグラウンドのうえで、かぺ君と清君がキャッチボールを始めた。
一回、二回、三回。攻撃側のチームは、息を殺して20メートルほど離れた反対側の円に行く気配を伺う。こっちにいる清君に向かって、かぺ君がボールを投げた。その瞬間、僕を含め何名かが盗塁をするランナーのようにサッと走り出した。ボールをキャッチした清君が、すかさず誰かに向かってボールを投げる。当たればアウトだ。ボールは外れ、遠くに向かって転がり始めた。そのスキに、かぺ君側の円に無事到達した僕たちは、また清君側の円に向かって走り出した。この感覚! 子供の頃に幾度となく味わった、スリルと興奮。
もういい年をした大人になった仲間たちが、こんな子供の遊びに興じてくれていることがたまらなく嬉しい。まさか浜田に来て、みんなとにむしができるなんて思わなかった。走り出したら、あっという間にあの頃にタイムスリップした。清君がボールをキャッチすると、獲物を狙うハゲタカのような眼で僕にボールをぶつけにくる。至近距離から、独特の小さなモーションで放たれるボール。当時とまったく同じだ。実は清君は手加減してくれていたのかもしれないけれど、うまくジャンプしてかわし、どんどん先に進む。一往復したらいちむし。二往復したらにむし。とうとうはちむしまで行った。「はちむし!」と宣言したら、清君とカペ君の目つきが変わり、緊迫感がますます高まった。じゅうむしまで行けば攻撃チームの勝利だ。すでにダッシュしすぎで足がフラフラだった。でも気合いを入れて、もういっちょう! 走ったところで清君に思い切りボールをぶつけられた。アウト。コマッキーも、ヒロシ君も、紀ちゃんも由美ちゃんも、途中から参加したマキちゃんも全員アウトになったところで、にむしは終わった。子供の頃は延々と続けていたゲームも、一回やったらもうみんなクタクタで、お開きにしようということになった。
楽しかった。夢みたいだ。『フィールド・オブ・ドリームス』のトウモロコシ畑の世界にいるみたいだった。
エイコちゃんの家の庭に戻った僕たちは、ビニールシートのうえに座り、コンロで肉や野菜を焼き始め、そしてビールで乾杯した。一汗かいた後だったから、格別に美味しかった。肉の焼ける美味しそうな匂いが、すぐに漂い始めた。こうして、僕にとって浜田最後の夜の宴会が始まったのだった。
(続く)
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紀ちゃんはすでに到着して、夕日パークに寄っていた僕たちの帰りを待っていた。これから続々とみんなが到着するはずだ。何から手を付けていいのかわからないけど、とにかくみんな宴会の準備を始めた。僕はさっそくにむしの準備をするべく、エイコちゃんの家の前にある浜田商業高校のグラウンドに出て、土の状態を確認したり、肩を温めるために軽い運動をしたりした。女性陣の冷ややかな視線を感じた。
コマッキーとかぺ君が到着した。ふたりはさっそく慣れた手つきでコンロの炭に火を起こし始めた。かぺ君はこういうときにものすごくハッスルする人なのだということがわかった。もうわし、この夏だけで何度バーベキューやったかわからんくらいなんよ、とかぺ君は言った。コマッキーも黙々と着火作業に集中している。こういうとき、浜っ子は実に男らしく、頼もしいものなのだ。なかなか上手く火は付かなかったのだけど、しばらく遠くで様子を見守ってくれていたエイコパパがさりげなく手伝ってくれたおかげもあって、無事に炭は燃え始めた。
そうこうしているうちに、清君がやってきた。愛娘のりおんちゃんを連れてタバサさんもやってきた。バーベキューの準備もだいぶ整った。かぺ君とふたりでグラウンドに行き、ゴムボールでキャッチボールをした。にむしのために、足の先で地面に土俵のような円をふたつ描いた。この円の間を攻めのチームが往復するのだ。かぺ君にあらためてにむしのルールの説明を受けながらキャッチボールをしつつ、冗談みたいに言っていたにむしが本当に実現しそうになっていることへの興奮を抑えきれなかった。
あまりにむしに気を取られていると、なんだかバーべーキュー隊に申し訳ない気がしたのでさりげなく庭に戻ってまた準備を手伝っていると、突然の参加者が訪れた。首にタオルを巻いて、手土産のビールを持っている。ヒロシ君だ。ヒロシ君とは小学校の1、2年で同じクラスだった。スポーツも勉強もクラスで一番の男前で、クラスのヒーローだった(ちなみに、かぺ君のアゴが血だらけになった事件のとき、かぺ君と休み時間に相撲を取っていたのがヒロシ君である)。エイコちゃんの家のすぐ近所に住んでいるので、せっかくだからと彼女が声をかけてくれたのだ。ヒロシ君自身も自宅で家族のみなさんとバーベキューを始めようとしていたところ、エイコちゃんとマキちゃんの突撃訪問のお誘いをもらってこちらに急遽参加することにしてくれたのだと言う。
突然のことにびっくりしてしまった。ヒロシ君自身も、中学や高校を卒業して依頼、他のメンバーともめったに会う機会はなかったようだったし、ちょっと面食らっているようだった。僕がいることにも驚いただろう。懐かしく、とても嬉しい。そしてまたまた、何を喋っていいのかはわからない。ともかく、バーベキューは始まろうとしている。だがその前に、僕たちにはやるべきことがある。そう、「にむし」だ。
全員でグラウンドに出た。すでに時刻は六時を過ぎ、日が暮れ始めている。かぺ君と清君が守備のふたりになり、残りが攻撃チームになって、さっき描いた輪の中に入った。タバサさんがビデオを回してくれている。エイコちゃんとマキちゃんを除いて、反対側の輪のなかに全員が入った。ヒロシ君も、さっきみんなと再会したばかりなのに、参加してくれた。いったい何がどうなっているのか、戸惑っているかもしれない。でもそれがおかしく、そして嬉しかった。
夕焼け色に染まり始めたグラウンドのうえで、かぺ君と清君がキャッチボールを始めた。
一回、二回、三回。攻撃側のチームは、息を殺して20メートルほど離れた反対側の円に行く気配を伺う。こっちにいる清君に向かって、かぺ君がボールを投げた。その瞬間、僕を含め何名かが盗塁をするランナーのようにサッと走り出した。ボールをキャッチした清君が、すかさず誰かに向かってボールを投げる。当たればアウトだ。ボールは外れ、遠くに向かって転がり始めた。そのスキに、かぺ君側の円に無事到達した僕たちは、また清君側の円に向かって走り出した。この感覚! 子供の頃に幾度となく味わった、スリルと興奮。
もういい年をした大人になった仲間たちが、こんな子供の遊びに興じてくれていることがたまらなく嬉しい。まさか浜田に来て、みんなとにむしができるなんて思わなかった。走り出したら、あっという間にあの頃にタイムスリップした。清君がボールをキャッチすると、獲物を狙うハゲタカのような眼で僕にボールをぶつけにくる。至近距離から、独特の小さなモーションで放たれるボール。当時とまったく同じだ。実は清君は手加減してくれていたのかもしれないけれど、うまくジャンプしてかわし、どんどん先に進む。一往復したらいちむし。二往復したらにむし。とうとうはちむしまで行った。「はちむし!」と宣言したら、清君とカペ君の目つきが変わり、緊迫感がますます高まった。じゅうむしまで行けば攻撃チームの勝利だ。すでにダッシュしすぎで足がフラフラだった。でも気合いを入れて、もういっちょう! 走ったところで清君に思い切りボールをぶつけられた。アウト。コマッキーも、ヒロシ君も、紀ちゃんも由美ちゃんも、途中から参加したマキちゃんも全員アウトになったところで、にむしは終わった。子供の頃は延々と続けていたゲームも、一回やったらもうみんなクタクタで、お開きにしようということになった。
楽しかった。夢みたいだ。『フィールド・オブ・ドリームス』のトウモロコシ畑の世界にいるみたいだった。
エイコちゃんの家の庭に戻った僕たちは、ビニールシートのうえに座り、コンロで肉や野菜を焼き始め、そしてビールで乾杯した。一汗かいた後だったから、格別に美味しかった。肉の焼ける美味しそうな匂いが、すぐに漂い始めた。こうして、僕にとって浜田最後の夜の宴会が始まったのだった。
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『28年ぶりの再会だとしても、許すのは9むしまでだ!』
にむし録184節
原住民たちは浜商グランドに集まっていた。にむしをするために。
私と清が守備を行い、キャッチボールを行う。ボールが1往復した時点で皆がスタートを切った。私の側に到着した者たちは次のスタートに向けて円から片足を出している。これだっ! 始める前ほとんどの者がルールを忘れていたが、身体が覚えてる!!
始まってほどなくして私はゆみちゃん、のりちゃんをあっさりとアウトにした。(このゲーム及び私が女、子供に容赦無いことは言うまでもない!)
その日の清のボールは荒れていた。何度も私の頭上を越えて行き私はボールを追って走った。犬のように‥。あらぬ方向へボールを投げられ、主人に取ってこいと命ぜられた犬のように…。その間に着々と走者は往復を重ねる。
バテ始めた小松とひろしを清がアウトにしたが、まだ生きの良い走者が一人いる。こっちゃんだ!伊達にランニング好きではない!スタミナに自信ありだ!!
往年の元佐(抜群の身体能力を持つにむしの申し子)の様に涼しげにスウェーで、美しいジャンプで私の剛腕から放たれるボールを華麗にかわし、8むしまで到達していた。10むしまで行かれりゃ全員復活!何としても阻止しなければ…。
そしてその時が訪れた!
私からの返球をキャッチし清がこっちゃんを狙う。必殺のタイミングを見計らってこっちゃんは高々とジャンプし、ボールは彼の足もとを空しく飛んでいくはずだった!
清はこの瞬間を待っていたのだ!!
こっちゃんは忘れていた。幼少の頃いたいけな少年たちが清の前に何度も散って行ったことを!このゲームが始まり、走者となった時点で清の獲物になっていることを!!
清の眼が獲物を狙う狩人のそれに変わる。美しく中に舞うこっちゃんにもう逃げ場は無い。
こっちゃんは幼少の頃と同じように清の前に散った。9むしで…。
女子だから、久しぶりの再会だから、つっかけ履いてきてるから…なーんてことは関係なく真剣勝負しとったね
ウチの兄(S40年生まれ)もにむしやってたらしいよ。ボール一個であんだけ盛り上がれるってすごいわ!
第二回の大会いつにする?
集まり次第、第二回大会です。
今度はこっちゃんをオレがアウトにしたいし、元佐の華麗な走りも見たいね。
飛んで空中で身体が「死に体」になったところを清君に狙われた。完全にやられたよ。そしてこれはいつものパターンだった。
第二回目は元佐君の往年の跳躍力を見たい!
今度こそ絶対じゅうむし行くぞ~
次回のにむしは早々と打ちのめされないように身体鍛えとく〓
私も打ちのめすかぺくんを
とはのりの初コメント★
今のりとご飯食べながら携帯からのコメントのいれかたをレクチャーしとります、これからはのりからのコメントもあるでしょうo(^-^)o
男子は女子にも容赦なくボールを当てとったね(笑)次回は必ずじゅうむし達成しよう!元佐くんばりにジャンプ!
夜遅いと魔物が出るから気をつけて帰りなさいよ~。(ノリママ発言より引用)
ふたりとも魔物に気をつけて無事帰れるとイイネ!
夜這いは違う~
王将のトップ10メニューってあるんだまたたらさんと食べてみる。たらさん魔物に気をつけてね~〓
王将トップ10気になります
食べたいな~