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漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「白ハク」<しろい>「伯ハク」「魄ハク」「舶ハク」「柏ハク」「泊ハク」「迫ハク」「箔ハク」「怕ハク」「粕ハク」「狛ハク」「拍ハク」「碧ヘキ」

2023年08月15日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ハク・ビャク・しろ・しら・しろい  白部

解字 甲骨・金文の形から、白骨化した頭骨の象形[字統]とも、どんぐり状の実の象形で木の実の白い中身を表す[学研漢和]とも言われる。私は「楽」の字に含まれる白がドングリと解字している(音符「楽ラク」を参照)ので、どんぐり派といえるがドングリの実が白いとは思えない。白は単純な図形であり、白に似た形は古文字の中にも希に見受けられる。現在の段階では白の字源は不明であるようだ。字形は篆文から上に線がでた形になり、現代字で白となった。白を含む字のほとんどはハクの音による形声字である。
意味 (1)しろ(白)。しろい。「白馬ハクバ」「白波しらなみ」 (2)しろくする。しらげる。「精白セイハク」「漂白ヒョウハク」 (3)きよい。けがれない。「潔白ケッパク」 (4)はっきりしている。あかるい。「明白メイハク」 (4)なにもない。「空白クウハク」 (5)もうす。告げる。「告白コクハク」「白状ハクジョウ」「建白ケンパク」(自分の意見を申し立てる)

イメージ 
 原義である「しろい」(白・魄)
 「形声字」(伯・舶・柏・泊・箔・迫・怕・粕・狛・拍)
 「ヘキの音」(碧)
音の変化   ハク:白・魄・伯・舶・柏・泊・箔・迫・怕・粕・狛・拍    ヘキ:碧

しろい
 ハク・たましい  鬼部
解字 「鬼(死者のたましい)+白(しろ)」 の会意形声。白はここで白骨、鬼はここで死者のたましい。魄ハクは白骨となった死者の「たましい」の意で、人が死ぬと「たましい」の魂コンは天にのぼり、魄ハクは地にとどまるとされた。
意味 (1)たましい(魄)。地にある死者のたましい。陰の精気で死後も地にとどまるとされる。「魂魄コンパク」(たましい。精霊。魂は天にあるたましい、魄は地にあるたましい)「落魄ラクハク」(おちぶれること。零落レイラク。) (2)地球の影によって生ずる月の暗い部分。「死魄シハク」(陰暦の朔日サクジツの月。⇔生魄セイハク)「生魄セイハク」(①陰暦16日の月。②たましい。生霊) (3)迫ハクに準じた用法。「気魄キハク」(強い精神力。=気迫キハク。)

形声字
 ハク・ハ  イ部
解字 「イ(人)+白(ハク)」の形声。甲骨文字は白の字を、首長・領主の意味で用いている[甲骨文字辞典]。金文も同じである。なぜ白が首長の意味になったのか不明であるが、首長は老人がなることが多いので、髭(ひげ)や髪の毛が白いのでハク(白)と呼んだのではなかろうか。イ(人)がついた伯は秦代になって出現した。また、伯は首長以外に年齢の上の者にも言うようになった。
意味 (1)かしら。おさ。「伯王ハオウ」(諸侯のはたがしら。=覇王) (2)おじ。おば。「伯父おじ」「伯母おば」 (3)一番上の兄・長兄。中国では兄弟の長子を伯、二番目を仲チュウ、末子を季と言った)「伯仲ハクチュウ」(①兄とその下の弟。②優劣のつけられないこと) (4)一芸に秀でた人の称。「画伯ガハク」「詩伯シハク
 ハク  王部
解字 「王(玉)+白(ハク)」の形声。ハクとよばれる玉。単独で使われず琥珀コハクとして用いられる。

琥珀のペンダント(ウィキペディア「琥珀」より)
意味 「琥珀コハク」に用いられる字。琥珀とは、地質時代の樹脂などが埋没して出来た一種の化石。中国で虎が死後に石になったものだと信じられていたことに由来する。黄色味を帯び透明ないし半透明で、装身具などに利用される。
 ハク  舟部
解字 「舟(ふね)+白(ハク)」の形声。ハクという名の舟。比較的新しい字で、宋代の[広韻]は「海中大船」とする。海を渡る大きな船をいう。
意味 ふね(船)。海を渡る大きな船。「舶来ハクライ」(外国から舟で運ばれてきたもの)「船舶センパク」(大型の船)
 ハク・ビャク・かしわ  木部
解字 「木(き)+白(ハク)」の形声。ハクという名の木。[説文解字]は「椈キク(このてがしわ)也(なり)」とする。漢代の[春秋緯]は「諸侯の墓、柏を樹える」と墓の木としている。日本では、カシワの木をいう。
意味 (1)このてがしわ(柏)。ヒノキ科の常緑高木。墓のまわりに植えることが多かった。「柏酒ハクシュ」(邪気をはらうため元旦に飲む酒。このてがしわの葉を入れた酒)「柏城ハクジョウ」(天子の墓地。御陵) (2)ヒノキ科の常緑樹の名。「柏槙ビャクシン」(イブキの一品種) (3)[国]かしわ(柏)。栢ハク・ヒャクは異体字。ブナ科の落葉高木。葉は大きく食物を包むのに用いる。「柏餅かしわもち」(柏の葉でくるんだ餅) (4)「柏手かしわで」(両方の手のひらを打ち合わせて鳴らすこと=拍手かしわでとの混同)
 ハク・とまる・とめる  氵部
解字 「氵(水)+白(ハク)」の形声。[甲骨文字辞典]は「泊は甲骨文字からあり、ハクという名の川を意味した。この字は一旦亡失し、古文(春秋戦国)で浅瀬を意味して同形の形声文字が作られ、さらに後に舟が停泊する意味に転用された」とする。おそらく船が先端を浅瀬に乗り上げて泊まり、船がとまる意から、転じて、宿泊する意となったのであろう。
意味 (1)とまる(泊る)。船がとまる。「停泊テイハク 」 (2)とまる(泊る)。人がやどる。「宿泊シュクハク」「外泊ガイハク
 ハク   竹部
解字 「竹(たけ)+泊(ハク)」の形声。ハクは薄ハク(うすい)に通じ、金や銀をたたいて薄くのばしたものをいう。薄いので竹刀で切る。また、竹を細工して編み、薄くのばしたすだれをいう。
意味 はく(箔)。(1)金属をたたいて紙のように薄くのばしたもの。「金箔キンパク」「銀箔ギンパク」 (2)竹で編んだすだれ。「簾箔レンパク」(簾も箔も、すだれの意)
 ハク・せまる  之部
解字 「辶(ゆく)+白(ハク)」 の形声。ハクは薄ハク(相手との距離が少ない。肉薄ニクハク)に通じ、相手との間隔をつめること。543年に編纂の[玉篇]は「逼迫ヒッパク也」。北宋(1008年編纂)の[広韻]は「急也」とする。
意味 (1)せまる(迫る)。さしせまる。「迫力ハクリョク」(圧迫する力)「迫撃ハクゲキ」(敵に迫って攻撃する) (2)追いつめる。苦しめる。「迫害ハクガイ」「逼迫ヒッパク」(追い詰められて、ゆとりがない) (3)おどしつける。おびやかす。「脅迫キョウハク
 ハ・ハク・おそれる  忄部
解字 「忄(心)+白(ハク)」の形声。ハクは迫ハク(おどしつける)に通じ、脅迫されて、心でおそれること。宋代の[集韻]も「懼(おそれ)る也」とする。
意味 おそれる(怕れる)。こわがる。「恐怕キョウハク」(恐も怕も、おそれる意)「害怕ガイハク」(こわがる)
 ハク・こま・こまいぬ  犭部
解字 「犭(いぬ)+白(ハク)」の会意形声。ハクは迫ハク(おどしつける)に通じ、吠えて羊を誘導する牧羊犬をいう。日本では神社の前に置かれ、魔よけにする「こま犬」を表す字となる。[説文解字]は「狼の如くして善く羊を駆る。犬に従い,白の聲(声)」とし、牧羊犬とする。日本では高麗犬(こまいぬ)とも言い、魔よけの像として用いられる。
茨木神社(大阪府茨木市)の狛犬
意味 こま(狛)。こまいぬ(狛犬)。獅子や犬に似た獣で、像として神社の入口などに守護獣として一対で向き合う形で置かれる。
 ハク・かす  米部
解字 「米(米の原酒)+白(ハク)」の形声。ハクは迫ハク(押しつける=圧迫)に通じ、原酒(もろみ)を押しつけて絞り、板のように薄くした酒粕をいう。[説文解字]は「糟粕ソウハク(酒のしぼりかす)。酒滓(さけかす)也」とする。
意味 (1)かす(粕)。かもした酒をしぼってこしたカス。「酒粕さけかす」「糟粕ソウハク」(①酒かす。②残りかす) (2)[国]かす(粕)。良い所をとり去ったのこり。役に立たないもの。
 ハク・ヒョウ・うつ  扌部  
解字 「扌(手)+白(ハク)」 の形声。ハクは搏ハク(うつ・たたく)に通じ、手を打つこと。後漢末の辞典[釋名]も「搏(たた)く也。手を以って其の上を搏く也」としている。
意味 (1)うつ(拍つ)。手でたたく。「拍手ハクシュ」「拍手かしわで」(神を拝む時、手のひらを打ち鳴らすこと) (2)リズムや音数の単位。「拍子ヒョウシ

ヘキの音
 ヘキ・みどり・あお  石部
解字 「王(たま)+石(いし)+白(ヘキ)」の形声。ヘキは白ハクの転音で、発音のみ表す。碧ヘキは、ヘキという名のあおや、みどり色の石で、これが宝石のようなので王(玉)がつく。
意味 (1)あお色の美しい石。「碧玉ヘキギョク」 (2)みどり(碧)。あお(碧)。「碧眼ヘキガン」(あおい目。西洋人)「碧海ヘキカイ」(あおい海)「碧空ヘキクウ」(あおい空)「紺碧コンペキ」(深みのある濃いあお色)
覚え方 おう()が、しろ()い、いし()を、みどり()に変えた。
<紫色は常用漢字>

<参考> 白は部首「白しろ」になる。字の上下左右に付いて白い意などを表す。常用漢字で5字で以下のとおり。
 白ハク・しろ (部首) 
 的テキ・まと(白+音符「勺シャク」)
 百ヒャク(一(ひとつ)+白(ヒャク・ハク))
 皇コウ・オウ(白+王)の会意
 皆カイ・みな(白+比)の会意、などがある。
  このうち、皇コウ・皆カイは音符になる。

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

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