者[者] シャ・もの 耂部おいがしら
解字 甲骨文第一字は、木に複数の点(炎)がついており、たき火を表す。第二字は、枝が伸びた木の象形に口を加えた字。この木は、第一字のたき火の枝で、それに口(話す)をくわえた者シャは、たき火を囲んで人が集まり、口々に話をするさまを表す。金文は、口に点が入り(点がないものも混在する)、曰(いう)の形になった。篆文以降の変化により、最終的に上部は耂(おいがしら)、下部は曰⇒白になった者シャとなった。意味は、たき火を囲んで人が集まり、口々に話をするさまを表す。しかし、本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)され、人や事物をさしたり、主語を提示したり、時を示す言葉にそえる助字などに用いられる。新字体で者の点がとれた者になった。同様に、新字体で音符として用いられる場合も点がとれる。
意味 (1)もの(者)。人物・事物・所などをさしていう。上の言葉を名詞化する。「作者サクシャ」「勇者ユウジャ」「前者ゼンシャ」 (2)主語を提示・強調する。~は。とは。 (3)時を示す言葉にそえる助字。「今者コンシャ」(いま。このごろ)
イメージ 「仮借カシャ(当て字)」のほか、たき火に人々が「あつまる・おおい」イメージがある。その他、「同音代替」などがある。
「仮借(当て字)」(者)
「あつまる・おおい」(諸・署・都・闍・賭・堵・屠・著・奢)
「形声字」(煮・暑・箸・緒・曙・儲・猪・潴・躇・薯・藷・楮)
「その他」(着)
音の変化
シャ:者・煮・奢 ショ:諸・暑・署・緒・曙・薯・藷 ト:都・闍・賭・堵・屠 チョ:著・箸・儲・猪・潴・躇・楮 チャク:着
あつまる・おおい
諸 ショ・もろもろ 言部
解字 金文は者の字であり、あつまる・おおい意。篆文から言が付いたが、もともとあった白(=曰。いう)に同じ意味の言(いう)をつけた字。者が仮借されて「もの」などの意味になったので言をつけて、元の意味を表した。結局、諸は者と同字ということになる。意味は、もろもろ・多くの。
意味 (1)もろもろ。多くの。「諸国ショコク」「諸兄ショケイ」(多くの兄。みなさん)「諸般ショハン」(それぞれ。いろいろ) (2)これ。
署 ショ・しるす 罒部
解字 「罒(=网。あみ)+者(=諸。もろもろ)」の会意形声。もろもろのものを網の目のように区分けし配置すること。また者(=著。書きつける)に通じ、書きしるす意がある。現代字は、网⇒罒に変化する。
意味 (1)割り当てる。手分けする。人を配置する。「部署ブショ」(役目を割り当てる。また、割り当てられた役目) (2)配置された役所。「税務署ゼイムショ」「消防署ショウボウショ」「官署カンショ」 (3)しるす(署す)。書きしるす。「署名ショメイ」
都 ト・ツ・みやこ 阝部
解字 「阝(城市)+者(あつまる・おおい)」の会意形声。阝は、もと邑ユウで城壁の中に人がひざまずいている形。(音符「邑ユウ」を参照)人々が住む城市を表し、右辺にくるとき、「おおざと」と呼ばれ阝の形になる。それに者(あつまる・おおい)がついた都は、多くの人が集まって城壁の中にすむ大きな都市の意味で、のちに「みやこ(都)」の意味にも用いられた。
意味 (1)みやこ(都)。天子の宮城のある地。「都市トシ」「都城トジョウ」 (2)みやこする。「遷都セント」「建都ケント」 (3)すべて。ことごとく。「都度ツド」(そのたびごと)「都合ツゴウ」(①すべて合わせる。②[国]ぐあい)
闍 ト・ジャ 門部
解字 「門(もん)+者の旧字(=都。みやこ)」の会意形声。都をとりまく城壁の門。二階になった城門をいう。
意味 (1)トの発音。うてな。二階になった城門。(2)ジャの発音。梵語の音訳字。「阿闍梨アジャリ」(梵語 acarya[師範]の音訳字。師範となる徳の高い僧)
賭 ト・かける 貝部
解字 「貝(財貨)+者の旧字(あつめる)」の会意形声。財貨を集中してつぎこみ勝負すること。新常用漢字なので、者に点がある。点なしの表記も可。
意味 (1)かける(賭ける)。 (2)かけ(賭け)。ばくち。「賭博トバク」(金品を賭けて勝負を争うかけごと)「博徒バクト」
堵 ト・ド・かき 土部
解字 「土(つち)+者の旧字(あつまる)」の形声。土をあつめて、突き固めた垣をいう。
意味 (1)かき。かきね。へい。「堵列トレツ」(垣根のようにずらりと立ち並ぶ)「環堵カント」(まるくとりまく垣)「田堵たと」(田の垣の意だが、平安時代に荘園の田の耕作を請け負った有力農民をいった。彼らはのちに田に自分の名をつけたので名田と呼ばれるようになった) (2)(垣で)ふせぐ。さえぎる。「安堵アンド」(堵のなかに安んずる。安住する。安心する)
屠 ト・ほふる 尸部
解字 「尸(=屍。しかばね)+者の旧字(あつまる)」の会意形声。多くの家畜を集めて殺すこと。
意味 (1)ほふる(屠る)。家畜を殺す。敵を殺す。「屠殺トサツ」(肉や皮を得るため牛や羊を殺すこと)「屠者トシャ」(屠殺する人)「屠蘇トソ」(年始に飲む薬用酒。屠蘇のいわれは、悪鬼を屠(ほふ)り魂を蘇生ソセイさせるという) (2)梵語Buddhaの音訳字。Buddhaは「浮屠フト」「浮図フト」「仏陀ブッダ」などと音訳され、いずれも仏教の意。「浮屠氏フトシ」(仏教徒)
著 チョ・チャク・あらわす・いちじるしい 艸部
解字 「艸(くさ)+者(多くのものが集まる)」の会意形声。本来は、草の繊維を織り合わせて(集めて)作られた布の衣で、転じて、衣を着る意。草の繊維から布を織り衣ができることから、多くの材料を集めてはっきりとした形が「あらわれる」意となる。日本では「いちじるしい」という訓になる。また、「あらわれる」から転じて、あらわす意となるが、この場合は文章を書きあらわす意味で用いる。なお、衣を着る意は、俗字である「着チャク」が受け持つようになった。著は成り立ちから言うと、箸チョの竹冠⇒艸に変化した字で、隷書(漢代)から見える比較的新しい字。
意味 (1)いちじるしい(著しい)。あらわれる。めだつ。「顕著ケンチョ」「著名チョメイ」(2)あらわす(著わす)。書きあらわす。「著作チョサク」「著述チョジュツ」(3)着る。着く。
奢 シャ・おごる 大部
解字 「大(ひと)+者の旧字(あつまる)」の会意形声。大は人の正面形。奢は、物がたくさん集まって、ぜいたくをする人。
意味 (1)おごる(奢る)。ぜいたくをして人にふるまう。 (2)ぜいたくをする。「奢侈シャシ」(度をこえてお金をつかうこと。身分不相応なぜいたく)「豪奢ゴウシャ」(ぜいたくで、はでなこと)「華奢カシャ」(はなやかでぜいたく)「華奢キャシャ」([国]①姿がほっそりとして上品。②作りが弱弱しく頑丈でない)
形声字
煮 シャ・ショ・にる・にえる・にやす 灬部
解字 「灬(火)+者(シャ)」の形声。灬(火)で物をにる(煮る)ことを煮シャという。物に水を加えて火で加熱すること。
意味 (1)にる(煮る)。にえる(煮える)。「煮沸シャフツ」「煮海シャカイ」(海水を煮て塩をつくること)(2)[国]にやす(煮やす)。怒りの気持ちを激しくする。「業ゴウを煮やす」
暑 ショ・あつい 日部
解字 「日(太陽)+者(ショ)」の会意形声。ショは煮ショ・シャ(にる)に通じ、太陽の熱が、煮えるような熱さをいう。
意味 (1)あつい(暑い)。気温が高い。あつさ。「避暑ヒショ」 (2)夏。「暑中ショチュウ」(夏の暑いあいだ)「暑気ショキ」(夏のあつさ)
箸 チョ・はし 竹部
解字 「竹(たけ)+者の旧字(=煮。にる)」の会意形声。煮物のはいったナベから食べ物をとりだす竹の棒。はしをいう。新常用漢字なので、者に点がある。点なしの表記も可。
意味 はし(箸)。食物をはさむはし。「菜箸さいばし」「火箸ひばし」
緒 ショ・チョ・お 糸部
解字 「糸(いと)+者(=煮。にる)」の会意形声。マユを煮て、糸を引き出すこと。
意味 (1)いとぐち。物事の起こりはじめ。「緒戦ショセン」(戦いが始まったころ) (2)すじ。つづき。つながり。「一緒イッショ」 (3)こころ。「情緒ジョウチョ」 (4)ひも。お(緒)。「鼻緒はなお」
曙 ショ・あけぼの 日部
解字 「日(ひ)+署(ショ)」の形声。ショは緒ショ(物事のはじめ)に通じ、日(太陽)の昇るはじめ、即ち、日が昇る前をいう。
意味 あけぼの(曙)。あかつき。夜明け。「曙光ショコウ」(あけぼのの光)「曙鐘ショショウ」(夜明けの鐘の音)
儲 チョ・もうける イ部
解字 「イ(ひと)+諸の旧字(チョ)」の形声。チョは貯チョ(ためる)に通じ、人がお金をためること。また、たくわえの意から、まさかの時に用意しておく跡継ぎの王子をいう。日本では、もうける意で使う。
意味 (1)たくわえる。たくわえ。「儲蓄チョチク」(=貯蓄) (2)あとつぎ。皇太子。「儲君チョクン」(皇太子。もうけの君)(3)[国]もうける(儲ける)。
覚え方 信じることをする者は、儲かる。者は旧字。
猪[豬] チョ・い・いのこ・いのしし 犭部
解字 篆文は豬で、「豕シ(ぶた)+者(チョ)」の形声。チョは、貯チョ(ためる)に通じ、肉を体内にたくわえているブタの意。食肉用のブタをさす。楷書から、豕⇒犭に変化した猪になった。日本では、ブタの原種であるイノシシの意で用いる。
意味 (1)い(猪)。いのこ(猪子)。いのしし(猪)。豚の原種。山野に棲む。「猪突チョトツ」(猪のようにまっしぐらに突き進む)「猪首いくび」(首が猪のように太く短い) (2)ぶた。中国では、ぶたの意で使い、イノシシは野猪という。
潴 チョ 氵部
解字 「氵(みず)+豬(チョ)」の形声。チョは貯チョ(ためる)に通じ、水がたまること。また、豬(いのしし)が、ぬたを打つ(ねころがる)みずたまりと解釈することもできる。
意味 (1)みずたまり。沼。ため池。「潴水チョスイ」(たまりみず)(2)たまる。水がたまる。(3)地名。「三潴郡みずまグン」(福岡県の郡)「三潴町みずままち」(もと三潴郡に属した町。久留米市に合併した)
躇 チョ 足部
解字 「足(あし)+著の旧字(チョ)」の形声。チョは佇チョ(たたずむ)に通じ、足が前に出ずその場にたたずむこと。
意味 ためらう。たちどまる。「躊躇チュウチョ」(ためらう。決めかねてぐずぐずする)
薯 ショ・いも 艸部
解字 「艸(草)+署の旧字(ショ)」の形声。ショは同音の蔗ショ(いも)に通じ、いもをいう。
意味 いも(薯)。いも類の総称。とくに、ヤマノイモ・ジャガイモをいう。「自然薯ジネンジョ」(ヤマノイモ)「馬鈴薯バレイショ」(ジャガイモの別称)
藷 ショ・いも 艸部
解字 「艸(草)+諸の旧字(ショ)」の形声。ショは蔗ショ(いも)に通じ、いもをいう。
意味 (1)いも(藷)。とくに、さつまいもをいう。「甘藷カンショ」(さつまいも)「甘藷先生カンショセンセイ」(青木昆陽を親しんでいう。救荒作物として甘藷栽培を勧めた) (2)さとうきび。イネ科の多年草。
楮 チョ・こうぞ 木部
解字 「木(き)+者の旧字(チョ)」の形声。チョは苧チョ(からむし)に通じる。からむしは苧麻チョマとも呼ばれ、繊維をとるために利用されるイラクサ科の多年草。楮チョは樹皮の繊維を利用する木で、主に和紙の材料となる。
意味 (1)こうぞ(楮)。クワ科の落葉低木。樹皮は和紙の原料になる。 (2)カジノキ。クワ科の落葉高木。樹皮は和紙の原料になる。 (3)紙。「楮墨チョボク」(紙と墨。転じて、紙に書く文字や詩文)「楮幣チョヘイ」(紙幣。おさつ)
その他
着 チャク・ジャク・きる・きせる・つく・つける 羊部
解字 著チョの俗字。著には、着る・着く意味があるが、もっぱら、著作(書き表わす)・著名(目立つ)の意味に専用され、「きる」「つく」意味は「着」が受け持つようになった。着は著を略して書いた形から変化してできた俗字。
意味 (1)きる(着る)。きせる(着せる)「着衣チャクイ」 (2)つく(着く)。くっつく。つける(着ける)。「着色チャクショク」 (3)ゆきつく。つく(着く)。「到着トウチャク」 (4)とりかかる。「着工チャッコウ」
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文第一字は、木に複数の点(炎)がついており、たき火を表す。第二字は、枝が伸びた木の象形に口を加えた字。この木は、第一字のたき火の枝で、それに口(話す)をくわえた者シャは、たき火を囲んで人が集まり、口々に話をするさまを表す。金文は、口に点が入り(点がないものも混在する)、曰(いう)の形になった。篆文以降の変化により、最終的に上部は耂(おいがしら)、下部は曰⇒白になった者シャとなった。意味は、たき火を囲んで人が集まり、口々に話をするさまを表す。しかし、本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)され、人や事物をさしたり、主語を提示したり、時を示す言葉にそえる助字などに用いられる。新字体で者の点がとれた者になった。同様に、新字体で音符として用いられる場合も点がとれる。
意味 (1)もの(者)。人物・事物・所などをさしていう。上の言葉を名詞化する。「作者サクシャ」「勇者ユウジャ」「前者ゼンシャ」 (2)主語を提示・強調する。~は。とは。 (3)時を示す言葉にそえる助字。「今者コンシャ」(いま。このごろ)
イメージ 「仮借カシャ(当て字)」のほか、たき火に人々が「あつまる・おおい」イメージがある。その他、「同音代替」などがある。
「仮借(当て字)」(者)
「あつまる・おおい」(諸・署・都・闍・賭・堵・屠・著・奢)
「形声字」(煮・暑・箸・緒・曙・儲・猪・潴・躇・薯・藷・楮)
「その他」(着)
音の変化
シャ:者・煮・奢 ショ:諸・暑・署・緒・曙・薯・藷 ト:都・闍・賭・堵・屠 チョ:著・箸・儲・猪・潴・躇・楮 チャク:着
あつまる・おおい
諸 ショ・もろもろ 言部
解字 金文は者の字であり、あつまる・おおい意。篆文から言が付いたが、もともとあった白(=曰。いう)に同じ意味の言(いう)をつけた字。者が仮借されて「もの」などの意味になったので言をつけて、元の意味を表した。結局、諸は者と同字ということになる。意味は、もろもろ・多くの。
意味 (1)もろもろ。多くの。「諸国ショコク」「諸兄ショケイ」(多くの兄。みなさん)「諸般ショハン」(それぞれ。いろいろ) (2)これ。
署 ショ・しるす 罒部
解字 「罒(=网。あみ)+者(=諸。もろもろ)」の会意形声。もろもろのものを網の目のように区分けし配置すること。また者(=著。書きつける)に通じ、書きしるす意がある。現代字は、网⇒罒に変化する。
意味 (1)割り当てる。手分けする。人を配置する。「部署ブショ」(役目を割り当てる。また、割り当てられた役目) (2)配置された役所。「税務署ゼイムショ」「消防署ショウボウショ」「官署カンショ」 (3)しるす(署す)。書きしるす。「署名ショメイ」
都 ト・ツ・みやこ 阝部
解字 「阝(城市)+者(あつまる・おおい)」の会意形声。阝は、もと邑ユウで城壁の中に人がひざまずいている形。(音符「邑ユウ」を参照)人々が住む城市を表し、右辺にくるとき、「おおざと」と呼ばれ阝の形になる。それに者(あつまる・おおい)がついた都は、多くの人が集まって城壁の中にすむ大きな都市の意味で、のちに「みやこ(都)」の意味にも用いられた。
意味 (1)みやこ(都)。天子の宮城のある地。「都市トシ」「都城トジョウ」 (2)みやこする。「遷都セント」「建都ケント」 (3)すべて。ことごとく。「都度ツド」(そのたびごと)「都合ツゴウ」(①すべて合わせる。②[国]ぐあい)
闍 ト・ジャ 門部
解字 「門(もん)+者の旧字(=都。みやこ)」の会意形声。都をとりまく城壁の門。二階になった城門をいう。
意味 (1)トの発音。うてな。二階になった城門。(2)ジャの発音。梵語の音訳字。「阿闍梨アジャリ」(梵語 acarya[師範]の音訳字。師範となる徳の高い僧)
賭 ト・かける 貝部
解字 「貝(財貨)+者の旧字(あつめる)」の会意形声。財貨を集中してつぎこみ勝負すること。新常用漢字なので、者に点がある。点なしの表記も可。
意味 (1)かける(賭ける)。 (2)かけ(賭け)。ばくち。「賭博トバク」(金品を賭けて勝負を争うかけごと)「博徒バクト」
堵 ト・ド・かき 土部
解字 「土(つち)+者の旧字(あつまる)」の形声。土をあつめて、突き固めた垣をいう。
意味 (1)かき。かきね。へい。「堵列トレツ」(垣根のようにずらりと立ち並ぶ)「環堵カント」(まるくとりまく垣)「田堵たと」(田の垣の意だが、平安時代に荘園の田の耕作を請け負った有力農民をいった。彼らはのちに田に自分の名をつけたので名田と呼ばれるようになった) (2)(垣で)ふせぐ。さえぎる。「安堵アンド」(堵のなかに安んずる。安住する。安心する)
屠 ト・ほふる 尸部
解字 「尸(=屍。しかばね)+者の旧字(あつまる)」の会意形声。多くの家畜を集めて殺すこと。
意味 (1)ほふる(屠る)。家畜を殺す。敵を殺す。「屠殺トサツ」(肉や皮を得るため牛や羊を殺すこと)「屠者トシャ」(屠殺する人)「屠蘇トソ」(年始に飲む薬用酒。屠蘇のいわれは、悪鬼を屠(ほふ)り魂を蘇生ソセイさせるという) (2)梵語Buddhaの音訳字。Buddhaは「浮屠フト」「浮図フト」「仏陀ブッダ」などと音訳され、いずれも仏教の意。「浮屠氏フトシ」(仏教徒)
著 チョ・チャク・あらわす・いちじるしい 艸部
解字 「艸(くさ)+者(多くのものが集まる)」の会意形声。本来は、草の繊維を織り合わせて(集めて)作られた布の衣で、転じて、衣を着る意。草の繊維から布を織り衣ができることから、多くの材料を集めてはっきりとした形が「あらわれる」意となる。日本では「いちじるしい」という訓になる。また、「あらわれる」から転じて、あらわす意となるが、この場合は文章を書きあらわす意味で用いる。なお、衣を着る意は、俗字である「着チャク」が受け持つようになった。著は成り立ちから言うと、箸チョの竹冠⇒艸に変化した字で、隷書(漢代)から見える比較的新しい字。
意味 (1)いちじるしい(著しい)。あらわれる。めだつ。「顕著ケンチョ」「著名チョメイ」(2)あらわす(著わす)。書きあらわす。「著作チョサク」「著述チョジュツ」(3)着る。着く。
奢 シャ・おごる 大部
解字 「大(ひと)+者の旧字(あつまる)」の会意形声。大は人の正面形。奢は、物がたくさん集まって、ぜいたくをする人。
意味 (1)おごる(奢る)。ぜいたくをして人にふるまう。 (2)ぜいたくをする。「奢侈シャシ」(度をこえてお金をつかうこと。身分不相応なぜいたく)「豪奢ゴウシャ」(ぜいたくで、はでなこと)「華奢カシャ」(はなやかでぜいたく)「華奢キャシャ」([国]①姿がほっそりとして上品。②作りが弱弱しく頑丈でない)
形声字
煮 シャ・ショ・にる・にえる・にやす 灬部
解字 「灬(火)+者(シャ)」の形声。灬(火)で物をにる(煮る)ことを煮シャという。物に水を加えて火で加熱すること。
意味 (1)にる(煮る)。にえる(煮える)。「煮沸シャフツ」「煮海シャカイ」(海水を煮て塩をつくること)(2)[国]にやす(煮やす)。怒りの気持ちを激しくする。「業ゴウを煮やす」
暑 ショ・あつい 日部
解字 「日(太陽)+者(ショ)」の会意形声。ショは煮ショ・シャ(にる)に通じ、太陽の熱が、煮えるような熱さをいう。
意味 (1)あつい(暑い)。気温が高い。あつさ。「避暑ヒショ」 (2)夏。「暑中ショチュウ」(夏の暑いあいだ)「暑気ショキ」(夏のあつさ)
箸 チョ・はし 竹部
解字 「竹(たけ)+者の旧字(=煮。にる)」の会意形声。煮物のはいったナベから食べ物をとりだす竹の棒。はしをいう。新常用漢字なので、者に点がある。点なしの表記も可。
意味 はし(箸)。食物をはさむはし。「菜箸さいばし」「火箸ひばし」
緒 ショ・チョ・お 糸部
解字 「糸(いと)+者(=煮。にる)」の会意形声。マユを煮て、糸を引き出すこと。
意味 (1)いとぐち。物事の起こりはじめ。「緒戦ショセン」(戦いが始まったころ) (2)すじ。つづき。つながり。「一緒イッショ」 (3)こころ。「情緒ジョウチョ」 (4)ひも。お(緒)。「鼻緒はなお」
曙 ショ・あけぼの 日部
解字 「日(ひ)+署(ショ)」の形声。ショは緒ショ(物事のはじめ)に通じ、日(太陽)の昇るはじめ、即ち、日が昇る前をいう。
意味 あけぼの(曙)。あかつき。夜明け。「曙光ショコウ」(あけぼのの光)「曙鐘ショショウ」(夜明けの鐘の音)
儲 チョ・もうける イ部
解字 「イ(ひと)+諸の旧字(チョ)」の形声。チョは貯チョ(ためる)に通じ、人がお金をためること。また、たくわえの意から、まさかの時に用意しておく跡継ぎの王子をいう。日本では、もうける意で使う。
意味 (1)たくわえる。たくわえ。「儲蓄チョチク」(=貯蓄) (2)あとつぎ。皇太子。「儲君チョクン」(皇太子。もうけの君)(3)[国]もうける(儲ける)。
覚え方 信じることをする者は、儲かる。者は旧字。
猪[豬] チョ・い・いのこ・いのしし 犭部
解字 篆文は豬で、「豕シ(ぶた)+者(チョ)」の形声。チョは、貯チョ(ためる)に通じ、肉を体内にたくわえているブタの意。食肉用のブタをさす。楷書から、豕⇒犭に変化した猪になった。日本では、ブタの原種であるイノシシの意で用いる。
意味 (1)い(猪)。いのこ(猪子)。いのしし(猪)。豚の原種。山野に棲む。「猪突チョトツ」(猪のようにまっしぐらに突き進む)「猪首いくび」(首が猪のように太く短い) (2)ぶた。中国では、ぶたの意で使い、イノシシは野猪という。
潴 チョ 氵部
解字 「氵(みず)+豬(チョ)」の形声。チョは貯チョ(ためる)に通じ、水がたまること。また、豬(いのしし)が、ぬたを打つ(ねころがる)みずたまりと解釈することもできる。
意味 (1)みずたまり。沼。ため池。「潴水チョスイ」(たまりみず)(2)たまる。水がたまる。(3)地名。「三潴郡みずまグン」(福岡県の郡)「三潴町みずままち」(もと三潴郡に属した町。久留米市に合併した)
躇 チョ 足部
解字 「足(あし)+著の旧字(チョ)」の形声。チョは佇チョ(たたずむ)に通じ、足が前に出ずその場にたたずむこと。
意味 ためらう。たちどまる。「躊躇チュウチョ」(ためらう。決めかねてぐずぐずする)
薯 ショ・いも 艸部
解字 「艸(草)+署の旧字(ショ)」の形声。ショは同音の蔗ショ(いも)に通じ、いもをいう。
意味 いも(薯)。いも類の総称。とくに、ヤマノイモ・ジャガイモをいう。「自然薯ジネンジョ」(ヤマノイモ)「馬鈴薯バレイショ」(ジャガイモの別称)
藷 ショ・いも 艸部
解字 「艸(草)+諸の旧字(ショ)」の形声。ショは蔗ショ(いも)に通じ、いもをいう。
意味 (1)いも(藷)。とくに、さつまいもをいう。「甘藷カンショ」(さつまいも)「甘藷先生カンショセンセイ」(青木昆陽を親しんでいう。救荒作物として甘藷栽培を勧めた) (2)さとうきび。イネ科の多年草。
楮 チョ・こうぞ 木部
解字 「木(き)+者の旧字(チョ)」の形声。チョは苧チョ(からむし)に通じる。からむしは苧麻チョマとも呼ばれ、繊維をとるために利用されるイラクサ科の多年草。楮チョは樹皮の繊維を利用する木で、主に和紙の材料となる。
意味 (1)こうぞ(楮)。クワ科の落葉低木。樹皮は和紙の原料になる。 (2)カジノキ。クワ科の落葉高木。樹皮は和紙の原料になる。 (3)紙。「楮墨チョボク」(紙と墨。転じて、紙に書く文字や詩文)「楮幣チョヘイ」(紙幣。おさつ)
その他
着 チャク・ジャク・きる・きせる・つく・つける 羊部
解字 著チョの俗字。著には、着る・着く意味があるが、もっぱら、著作(書き表わす)・著名(目立つ)の意味に専用され、「きる」「つく」意味は「着」が受け持つようになった。着は著を略して書いた形から変化してできた俗字。
意味 (1)きる(着る)。きせる(着せる)「着衣チャクイ」 (2)つく(着く)。くっつく。つける(着ける)。「着色チャクショク」 (3)ゆきつく。つく(着く)。「到着トウチャク」 (4)とりかかる。「着工チャッコウ」
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