漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「利リ」<実った穀物を刃物で刈る>と「梨リ」「痢リ」「俐リ」「悧リ」「莉リ」「蜊リ」

2023年11月17日 | 漢字の音符
 リ・きく  刂部            

解字 甲骨文字は「禾(実って穂をたれた穀物)+刀(かたな)」。刀で、実った穀物の穂を刈り取る形。穀粒を表す小点を加えている。金文も同じ形で小点が刀の近くにある。篆文は小点がとれた「禾+刀」となり、現代字は刀⇒刂(りっとう)に変化した利になった。意味は刈りとる刀(現在は鎌)がするどい・よく切れる意と、実った穀物を無事に刈り取って結果がよい・収益がでる意となる。
意味 (1)するどい。よく切れる。「鋭利エイリ」 (2)よい。うまくいく。「有利ユウリ」「便利ベンリ」 (3)得なこと。りえき。「利益リエキ」「利息リソク」 (4)通じがよい。うまくはこぶ。「利尿リニョウ」(尿の通じがよい) (5)すばやい。かしこい。「利足リソク」(①足がはやい。②ききあし)「利発リハツ」(かしこい) (6)[国]きく(利く)。ききめがある。「利き酒」「腕利き」 

イメージ 
 「穀物を刈り取る」(利)
 意味(5)の「かしこい」(俐・悧)
 「形声字」(梨・痢・莉・蜊)
音の変化  リ:利・俐・悧・梨・痢・莉・蜊

かしこい
 リ  イ部
解字 「イ(ひと)+利(かしこい)」の会意形声。かしこい人。明代の『字彙ジイ』(1615年)にある比較的新しい字。
意味 かしこい。「怜俐レイリ」(かしこいこと)「俐亮リリョウ」(かしこくあかるい)
 リ  忄部
解字 「忄(心)+利(かしこい)」の会意形声。かしこい心。
意味 かしこい。さかしい。「怜悧レイリ」(かしこいこと)「悧口リコウ」(=利口)

形声字
 リ・なし  木部
解字 「木(き)+利(リ)」の形声。リという名の木。[説文解字]は梨の本字である棃をあげて果名(果物の名)とする。楷書で音符を利にした梨になった。果樹の梨(なし)をいう。
意味 (1)なし(梨)。果樹の名。また、その実。バラ科の落葉高木。白い花をつけ果実は大形で球形、外皮に斑点がある。「梨園リエン」(①梨の木の庭園。②演劇、演劇界のこと。唐の玄宗皇帝が宮中の梨の木の庭園で戯曲や音楽を学ばせた故事から)「梨花リカ」(梨の白い花。春の季語)「梨雪リセツ」(梨の花の白さを雪にたとえる。=梨花雪)「山梨やまなし」(バラ科の落葉高木) (2)地名。「山梨県やまなしケン」(日本の中部地方の県)
 リ  疒部
解字 「疒(やまい)+利(リ)」の形声。発音字典の[広韻・集韻]は「瀉シャ(腹がくだる)也(なり)。音は利」とする。下痢(はらくだり)の症状をいう。
意味 (1)はらくだり。「下痢ゲリ」(はらくだり) (2)伝染病。「赤痢セキリ」(赤い血便が出る伝染病)「疫痢エキリ」(幼児の急性伝染病)
 リ  艸部
解字 「艸(草木)+利(リ)」の形声。リという名の木。モクセイ科ソケイ属の植物(ジャスミン)のサンスクリット(梵語)名・mallikaマリカー(茉莉花)に当てる語に使われる。

水に浮かべた茉莉花の花(「ハルメク365 茉莉花の育て方」より)
意味 「茉莉花マツリカ」とは、モクセイ科の常緑小低木。ジャスミンの一種。花は芳香があり中国では乾燥させてお茶にする。「茉莉マツリ」(=茉莉花)「茉莉花茶マツリカチャ」(ジャスミンティー)
 リ・あさり  虫部
解字 「虫(かい)+利(リ)」の形声。虫は、ここでは貝の意。リという名の貝で蛤蜊コウリに用いられる。日本では最後にリがつく貝の「あさり」に当てる。
意味 (1)「蛤蜊コウリ」とは、蛤(はまぐり)の類の二枚貝で、シオフキガイを言う。また、ハマグリを言うこともある。 (2)[国]蜊(あさり)。浅蜊(あさり)・鯏(あさり)とも書く。淡水が混じる内湾の砂泥中にすむ二枚貝。潮干狩でよく獲れる。
<紫色は常用漢字>

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