漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「争ソウ」<ひっぱりあらそう>「諍ソウ」「箏ソウ」「錚ソウ」と「浄ジョウ」

2024年06月22日 | 漢字の音符
 増訂しました。
[爭] ソウ・ショウ・あらそう  丨部はねぼう  zhēng

解字 甲骨文は、つな状のものに上と下から手の一端を付けた形。手で引きあらそう意。金文は上の手が三本そろった指になった。篆文は「下向きの手+横向きの手に 丨(つな)がついた」形。旧字は、「爫(下向きのに手)+ヨの出た形(手)+丨(つな)」になり、新字体は上がクに変化した争になった。手で引きあらそう形からあらそう意となる。部首は、手と手のあいだにあるつなを表わす(はねぼう)。
意味 (1)あらそう(争う)。きそう。「戦争センソウ」「争議ソウギ」(争い論ずる)「争点ソウテン」 (2)いさめる(=諍)。「争友ソウユウ」(忠告や意見をしてくれる友人)

イメージ  
 「あらそう」
(争・諍・崢)
 つなを引きあう形から「ひっぱりあう」(箏)
 「形声字」(浄・錚)
音の変化  ソウ:争・諍・崢・箏・錚  ジョウ:浄

あらそう
 ソウ・ショウ・いさめる・いさかい  言部 zhèng
解字 「言(ことば)+爭(あらそう)」 の会意形声。言葉で争うこと。いさめる、うったえる、言い争う意となる。
意味 (1)いさめる(諍める)。「諍臣ソウシン」(君をいさめる臣下)「諫諍カンソウ」(諫も諍も、いさめる意) (2)うったえる。「諍訟ソウショウ」(うったえる。うったえあらそう) (3)いさかい(諍い)。言い争う。「諍論ソウロン」(言い争い。=争論)
 ソウ・けわしい  山部 zhēng
解字 「山(やま)+爭(あらそう)」の会意形声。高さを爭うように山が、たかく・けわしいさまを崢ソウという。
意味 (1)けわしい。山の高くけわしいさま。「崢山ソウザン」(①高く険しい山。②抜きんでたさま) (2)「崢嶸ソウコウ」とは、①山の高くけわしいさま。②谷などの深いさま。③寒さがきびしいさま。④才能がすぐれるさま。

ひっぱりあう
箏[筝] ソウ・こと  竹部 zhēng
箏(ウィキペディアより)
解字 「竹(たけ)+爭(ひっぱりあう)」の会意形声。竹の上に双方から引っぱり合う弦を張った楽器。筝は新字体に準じた異体字。後漢の[説文解字]は、「弦を鼓(う)つ竹身の楽器なり」としているので、元は竹を共鳴箱とした楽器であったらしい。
箏は最初は竹の楽器か?
[説文解字]の解説を受けて多くの辞書は「昔は五弦で竹で作り、秦の蒙恬モウテンが改めて十二弦とし、木で作り形を変えた。唐以後十三弦を用いる」などと記している。私は箏が竹製であった名残が見つからないかネットで調べたが、中国ではまったく見当たらなかった。そこで、東南アジアに広げて検索すると、マレーシア・サラワク州のクチン族が竹筒琴と呼ばれる楽器を使っていることが分った。この楽器はまさに竹身に張った弦を鼓(う)っている。もう一つ、インドネシア・ロテ島のササンドゥという竹筒の箏といえる楽器が見つかった。中国で箏が竹から始まったのであれば東南アジアから、これと類似した楽器が伝わったのかもしれない。

マレーシア・サラワク州の竹筒琴(19秒。終わったら画面を上にあげると再度見れます)

インドネシア・ロテ島のササンドゥという竹筒箏(3分32秒。しばらく見ていると楽器が映ります)
意味 (1)こと(箏)。箏ソウのこと。一般的な箏は細長い木の共鳴箱に13本の絃が張られ、可動式の柱(じ)を置き音律を整える。指に「箏爪ことづめ」をはめて絃をはじく。「筝曲ソウキョク」(筝で演奏する曲)※なお箏は琴(こと)とも書くが、本来の琴キン(中国)は柱(じ)がつかず、左指で弦を押さえ、右指で弦を弾いて音を出す。
(中国のネットから) qín
(2)「風箏フウソウ」とは、①風で音がでる風鈴、②凧。

形声字
 ジョウ・きよい  氵部 jìng
解字 旧字は淨で「氵(水)+爭(ソウ・ショウ⇒セイ・ジョウ)」の形声。水が清らかなことを淨セイ・ジョウという。また、水にかぎらず、きよらかな状態を言う。のち多く仏教用語として用いる。新字体は浄で、発音はジョウとなる。
意味 (1)きよい(浄い)。きよらか。けがれがない。「浄財ジョウザイ」(寺や慈善事業などに寄付する清いお金) (2)きよめる。「浄化ジョウカ」「洗浄センジョウ」 (3)[仏]迷いから解脱した意で、仏教に関する言葉に用いる。「浄土ジョウド」(煩悩・迷いがない、仏・菩薩が住む国)「浄域ジョウイキ」(①極楽浄土。②社寺の境内)「浄福ジョウフク」(①清らかな幸福、②仏法によって授かる幸福)
 ソウ  金部 zhēng
解字 「金(金属)+爭(ソウ)」の形声。金属(青銅・鉄など)がぶつかって出る音、また金属が触れ合って出る音を錚ソウという。
意味 金属が打ち合って出る音の形容。「錚然ソウゼン」(金属を打って鳴る音の形容。また、箏の音にもいう。)「錚々ソウソウ」(①金属が打ち合う音のひびき。②箏などの澄んだ音の形容。③多くの者のなかで特にすぐれた人物)「錚々たる顔ぶれ」(特に優れている人々)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


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