漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「夌リョウ」と「陵リョウ」「凌リョウ」「稜リョウ」「菱リョウ」「綾レン」「崚レン」「薐レン」

2024年07月08日 | 漢字の音符
 リョウ  夂部 líng   


  上は夌、下は陵リョウ
解字 上の夌は篆文以降にできた音符字。源流は陵リョウで、この字の意味およびイメージを継承する。陵については下記の陵を参照してください。音符イメージは「苦労して登る」「かどだつ」「形声字」です。
意味 (1)おか。広大な丘。(=陵) (2)しのぐ。越える。(=陵・凌)

イメージ 
 「苦労して登る」
(陵・凌)
 丘がけわしく稜線が「かどだつ」(稜・菱・崚・綾)
 「形声字」(薐)

音の変化  リョウ:陵・凌・稜・菱・綾・崚  レン:薐

苦労して登る
 リョウ・みささぎ  阝部 líng

解字 甲骨文・金文とも、はしごを登る人をかたどっている。甲骨文[甲骨文編所収]は片足を地につけ片足を梯子(はしご)にかけている。金文は足をもつれさせながら苦労してはしごを登る姿を斜め二線をつけて描く。陵の甲骨・金文は、いずれも苦労して梯子を登るかたち。篆文にいたり[説文解字]は「大きな阜(おか)なり」とし阝となる字を丘陵の意とし、のち、みささぎ(陵墓)の意ともなった。
 しかし、甲骨文や金文は梯子を必死にのぼる形であり、上がる・のぼる意であることから、「力をこめて高いところに登る」(陵雲の志)「高く登り相手をしのぐ」(陵ぐ=凌ぐ)などの意味も本来持っている。この意味は、のちに凌の字が主に担うことになる。また、「おかす・あなどる」意は、陵が陵墓の意味をもつようになってから、神聖な陵墓に登ることは陵を犯すことであり、はずかしめることであるという意識がでたのではなかろうか。
意味 (1)おか。大きな丘。「丘陵キュウリョウ」(2)みささぎ(陵)。丘の形をした皇帝や君主の墓。「陵墓リョウボ」「御陵ゴリョウ」(3)しのぐ。のぼる。こえる。「陵雲リョウウン」(=凌雲。雲をしのぐ。天にのぼる)(4)おかす(犯)。あなどる。「陵辱リョウジョク」(=凌辱。あなどりはずかしめる)
 リョウ・しのぐ  冫部 líng
解字 「冫(こおり)+夌(=陵。大きな丘)」 の会意形声。大きな丘にある氷室(ひむろ)の意。のち、陵と通用し「しのぐ」「おかす」意味を中心に使われるようになった。
意味 (1)こおり。氷室。「凌室リョウシツ」(2)しのぐ(凌ぐ)。こえる。「凌雲リョウウン」(雲をしのぐ。天にのぼる)「凌駕リョウガ」(他のものをしのいで上に出る)(3)おかす。あなどる。「凌辱リョウジョク」(はずかしめを受ける)

角だつ
稜[棱] リョウ・かど  禾部 léng・líng             

解字 篆文は「木(木材)+夌(角立つ)」 の会意形声。木材の角立った所。かど。楷書は木⇒禾に変化した。稜は棱の異体字であり、棱の原義を継承する。
意味 (1)かど(稜)。すみ。多面体の面と面の交わるところ。「稜角リョウカク」「稜線リョウセン」(山の峰から峰へ続く線)「山稜サンリョウ」(山の尾根)(2)おごそかな威光。「稜威リョウイ」(天子の威光)
 リョウ・ひし  艸部 líng
  ②
①菱の実(「ジャムこばやし」のHPから)、②三菱のマーク
解字 「艸(草)+夌(角立つ)」 の会意形声。実の両端が角立つヒシの実。葉も菱形にちかい。
意味 ひし(菱)。ヒシ科の一年生の水草。池沼・河川に自生する。「菱形ひしがた」「菱花リョウカ」(ヒシの花)「菱餅ひしもち」(ひし形のもち。雛祭りに供える)「三菱みつびし」(菱形を三つ組み合わせたマーク。三菱財閥の流れを汲む企業グループのマーク)
 リョウ・たかい・けわしい  山部 líng・léng
解字 「山(やま)+夌(角立つ)」 の会意形声。峰が角立つ高い山。
意味 たかい(崚い)。けわしい(崚しい)。たかくけわしい山。「崚層リョウソウ」(たかく幾重にも重なるさま)「崚崚リョウリョウ」(けわしくそびえるさま)
 リョウ・リン・あや  糸部 líng
   
解字 「糸(いと)+夌(角立つ部分から下の傾斜)」の会意形声。織り目が傾斜して連続する斜文織をいう。また、綾取りでは角形の模様ができる。
意味  あや(綾)。(1)織り目が斜めに連続する絹織物。「綾織あやおり」「綾子リンズ」(紋織物の一種。=綸子)(2)模様を美しく織り出した絹織物。「綾錦あやにしき」(綾と錦。美しい着物などの形容)「綾羅リョウラ」(あやぎぬと、うすぎぬ。美しい贅沢な着物)(3)紐でつくる角形の模様。「綾取(あやと)り」(輪にした紐を左右の指にかけていろんな角形をつくる遊び)(4)文や言葉の飾り。入り組んだ仕組み。「言葉の綾あや」「事件の綾あや

形声字
 レン・リン  艸部 léng
解字 「艸(くさ)+稜(リン・レン)」 の形声。「菠薐草ホウレンソウ」に使われる字。由来ははっきりしないが、草冠を取った「波稜ハリン・ホウレン(唐音)」は、現在のネパール(経由地)または原産地のペルシャの地名で、ここから伝わった葉物の野菜を表すため、草冠をつけた「菠薐ホウレン」が成立したとされる。
意味 「菠薐草ホウレンソウ」とは、アカザ科の一・二年生葉菜。イラン原産とされる。16世紀頃日本に渡来した。広辞苑によると、菠薐ホウレンは唐音(鎌倉時代以降に中国からはいった字音)。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする