漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「滕トウ」< 上にあがる >と「藤トウ」「騰トウ」「謄トウ」「勝ショウ」

2021年05月08日 | 漢字の音符
 トウ・わく・あがる  水部       
 
上段が滕、下段が朕。
解字 滕は「水(みず)+朕チンの変形(両手でさしあげる)」の会意。朕は天子の自称の意で使われる字であるが、もとはどんな字かというと、「月(舟形=盤。さら)+关ソウ(両手で物を奉ずるかたち)」である。关ソウは、金文でよくわかるように、貴重なものを両手でささげもつ形。これを月(盤)に入れてささげる形が朕で、上にあがる意味がある(天子に物をささげる意から転じて、天子の自称の意となった)。したがってこれに水がついた滕は、水が上にあがってくること。水がわく意となる。
 篆文で朕にあたる部分は滕でも同じであるが、楷書になると、両者の字形に変化が生じた。朕は右辺が关になったのに対し、滕は右辺が「ハ+夫」の形になった。両者は字形が変化しただけで、あがる意は変わらない。
意味 (1)わく。水がわきあがる。 (2)あがる。 (3)地名。山東省滕県。

イメージ 
 「水があがる」
(滕・藤・籐)
 「上にあがる」(勝・騰・謄・鰧・縢・媵)
音の変化  トウ:滕・藤・籐・騰・謄・鰧・縢  ショウ:勝  ヨウ:媵

水があがる
 トウ・ふじ  艸部
解字 「艸(草木)+滕(水があがる)」の会意形声。水がつるの中を上ってくるつる性の草木。
意味 (1)ふじ(藤)。「藤色ふじいろ」「藤棚ふじだな」「藤蔭トウイン」(藤棚の木陰) (2)つる状に生える木の総称。かずら。つる。「葛藤カットウ」(葛やつる性の木(藤)がもつれからむ。いざこざ) (3)[国]藤原氏のこと。源・平・藤・橘の4大貴種名族のひとつ。
 トウ  竹部
解字 「竹(たけ)+滕(水があがる)」の会意形声。水がつるを上がってくる竹に似たつる性の木。
意味 (1)とう(籐)。とうづる。ヤシ科のつる性の木。竹に似て自由に曲げて細工ができる。 (2)とう編みの器具。「籐椅子トウイス」「籐細工トウザイク

上にあがる
 ショウ・かつ・まさる  力部
解字 「力(ちから)+滕の略体(上にあげる)」 の会意形声。力を入れて物を持ちあげてたえること。長く持ちこたえた人は他の人よりすぐれており(勝る)、相手をしのぐ(勝つ)意となる。
意味 (1)たえる(勝える)。もちこたえる。 (2)まさる(勝る)。すぐれる。「健勝ケンショウ」(健康がすぐれる)「景勝ケイショウ」(景色がすぐれる) (3)かつ(勝つ)。かち(勝)。力を入れて相手をしのぐ。「勝利ショウリ」「勝算ショウサン
 トウ・あがる  馬部  
解字 「馬(うま)+滕の略体(上にあがる)」の会意形声。馬に乗る意。転じて、高くあがる意となる。
意味 あがる(騰がる)。のぼる。たかくあがる。「騰貴トウキ」(物価や相場のあがること)「沸騰フットウ」(沸き上がる)「高騰コウトウ」「騰勢トウセイ」(物価や相場などが騰がる勢い)
 トウ・うつす  言部
解字 「言(文字)+滕の略体(上にのせる)」の会意形声。言(文字)の上に紙をのせて写しとること。
解字 うつす(謄す)。原本をしきうつす。原本通りに書き写す。「謄写トウシャ」(書き写す)「謄本トウホン」(原本の内容を全部そのまま写し取った文書。また、戸籍謄本の略。対語は、抄本ショウホン。)
 トウ・おこぜ  魚部
 おこぜ
解字 「魚(さかな)+滕の略体(上にのせる⇒お供えする)」の会意形声。山の神にお供えする魚である「おこぜ」をいう。おこぜは醜い顔の魚であるため、女神である山の神は顔が不器量なうえ嫉妬深いので、醜いオコゼの顔を見ると、安心して静まるのだといわれる。
意味 おこぜ(鰧)。虎魚とも書く。カサゴ目の海魚のうちオコゼ類の総称。特に食用となるオニオコゼ(鬼鰧・鬼虎魚)をさすことが多い。頭は凹凸が激しく、背びれのとげが強大で奇異な姿をしている。本州中部以南の海底に分布し、山の神の供物にするなど山の神と関係のある伝承が多い。
 トウ・かがる・からげる  糸部
解字 「糸(ひも)+滕の略体=朕チン(貴重なものを月(盤)に入れて両手でささげもつ)」の会意形声。この文字で、月(舟月ふなづき=盤)は凾(はこ)の意。中に貴重なものを入れた凾を糸(ひも)で綴じること。かがる・からげる・とじる意となる。
意味 (1)かがる(縢る)。からげる(縢げる)。とじる。「金縢キントウ」(縢った金庫[金櫃かなびつ])。文書を保管する金庫)「縢書トウショ」(金縢の中の書)「緘縢カントウ」(緘も縢も、紐でとじる意。また、封をする意)「封縢フウトウ」(かがって封をする) (2)なわ。「縢履トウリ」(なわぐつ)「行縢コウトウ」(むかばき。脚絆)  
 ヨウ・おくる  女部
解字 「女+滕の略体=朕チン(貴重なものを月(盤)に入れて両手でささげもつ)」の会意形声。貴重な自分の娘を嫁ぎ先に送りだすとき、婚家に贈る品物をいう。また、嫁ぎ先に娘と一緒につきそう同姓の親族(姪めいや甥おい)をいう。
意味 (1)おくる。嫁入りの器をおくる。「媵爵ヨウシャク」(爵を贈る。爵は酒器) (2)(嫁入りの)つきそいの姪(めい)や甥(おい)「媵侍ヨウジ」(入嫁のときのつきそい)「媵臣ヨウシン」(入嫁した女のつきそい男)「媵婢ヨウヒ」(つきそいの侍女)
<紫色は常用漢字>

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