漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「句ク」<ひとくぎり>と「駒ク」「狗ク」「枸ク」「佝ク」「拘コウ」「鉤コウ」「苟コウ」「蒟コン」

2023年11月19日 | 漢字の音符
  増補しました。
 ク・コウ  口部

解字 甲骨文は、ふたつのカギ形で口(くち・ことば)を囲ったかたち。言葉がカギ形で囲まれることから、一区切りの短い言葉の意。金文は、カギ形二つが接近し口の上方に移動、篆文はS形が絡まって口を包むように変化し、現代字は、カギ形二つが「勹ホウ」に変化した句になった。短い言葉から、文章や詩の一区切りの意で用いられる。音符になるとき、一区切りであることから「小さくまとまる」、カギ形の意味である「まがる」イメージを持つ。
意味 (1)言葉や文章のひとくぎり。「語句ゴク」(言葉のひとまとまり)「句点クテン」(句の終りにつける点)「句読点クトウテン」(文中の切れ目の符号。「。」が句点。「、」が読点) (2)詩歌の構成単位。「発句ホック」「結句ケック」 (3)俳句の略。「句会クカイ

イメージ 「一区切りの言葉・くぎり」、ひとくぎりであることから「小さくまとまる」、カギ形の意味である「まがる」イメージがある。
 「くぎりの言葉・くぎり」(句・齣)
 「小さくまとまる」(駒・狗)
 「まがる」(拘・佝・鉤)
 「形声字」(枸・蒟・苟)
音の変化 ク:句・駒・狗・枸・佝  コウ:拘・鉤・苟  ク・コン:蒟  セキ:齣

くぎりの言葉・くぎり
 セキ・こま  歯部
解字 「齒(はならび)+句(くぎり)」の会意。歯ならびの一つ一つのくぎりから、芝居や戯曲の一つ一つの場面をいう。現在は映画の1シーンやフィルムの1画面にも使う。
意味 こま(齣)。「一齣ひとこま」(①フィルムの1画面。②劇や映画の1場面。③一つの授業)「両齣リョウセキ」(二こま)「齣目セキモク」(折り目。こまとこまの間)

小さくまとまる  
 ク・こま  馬部  
解字 「馬(うま)+句(ちいさくまとまる)」の会意形声。からだの小さな馬。周代では肩の高さ五尺以上で六尺未満の子馬をいった。(当時の1尺は22.5cm)
意味 (1)こま(駒)。こうま。若い元気な馬。「若駒わかこま」「駒鳥こまどり」(鳴き声が馬のいななきに似る鳥)(2)若い馬が走るようす。「駒隙クゲキ」(年月が速く過ぎること。駒が走るのが隙間から見える短い時間)「白駒ハック」(白色の子馬。つきひ、光陰) (3)小さいものの呼び名。「将棋の駒」
 ク・コウ・いぬ  犭部
解字 「犭(いぬ)+句(小さくまとまる)」の会意形声。小さい犬が原義。のち、イヌの総称となった。また、いやしいものの例えとして用いる。
意味 (1)いぬ(狗)。こいぬ。「羊頭狗肉ヨウトウクニク」(羊の頭を掲げて犬の肉を売る)「狗尾草えのころぐさ」(狗えのこ=子犬、の尾のような穂を出す草) (2)いやしい者のたとえ。「走狗ソウク」(他人の手先となって使われる人)「狗盗クトウ」(こそどろ) (3)「天狗テング」とは(①日本で深山に棲息するといわれる想像状の怪物。顔が赤く鼻が高く翼をもつ。②中国古代の天文で、流星を言った。天狗星)

まがる
 ク・コウ  イ部
解字 「イ(ひと)+句(まがる)」の形声。背のまがった人。
意味 背の曲がった人。「佝僂病クルビョウ」(ビタミンDの欠乏による小児の骨の発育異常)
 コウ・ク・かぎ  金部
解字 「金(金属)+句(まがる)」の形声。先のまがった金属製のものをいう。
意味 (1)かぎ(鉤)。物をひっかけたり止めたりする先の曲がった金属製のもの。まがった形のもの。「自在鉤じざいかぎ」(囲炉裏などの上からつるし、鉄瓶・鍋などを掛け、自在に上下させることのできる鉤)「鉤鼻かぎばな」(鼻筋がカギのように曲がっている鼻。わしばな) (2)かける。ひっかける。「鉤裂(かぎざ)き」(衣服などが鉤に引っ掛かり裂けること)
 コウ・とらえる・こだわる  扌部
解字 「扌(手)+句(=鉤。かぎ)」の形声。カギ(鉤)を手に持ち、引っかけてつかまえること。
意味 (1)とらえる(拘える)。つかまえる。とどめる(拘める)。とどめておく。「拘束コウソク」(とらえて束縛する)。「拘留コウリュウ」(とらえて留める。また、とらえ留める刑罰) (2)こだわる(拘る)。「拘泥コウデイ」(こだわって執着する) (3)[国]かかわる(拘わる)。打消しの助動詞をともなう。「~にも拘わらず」

形声字
 ク  木部
解字 「木(き)+句(ク)」の形声。クという名の木。ミカン科やナス科の低木の名、および[まがる]イメージでも用いる。
意味 (1)「枸橘からたち」(ミカン科の落葉低木。和語は、唐たちばなの略。生垣としてよく用いられる。枳殻キコクとも書く) (2)「枸杞クコ」(ナス科の落葉低木。果実・根・葉は生薬になる)「枸杞酒クコシュ」(枸杞の果実を焼酎に漬け込んで熟成させた薬酒)「枸杞茶クコチャ」(枸杞の葉を茶にしたもの) (3)まがる。「枸木コウボク」(曲木)
 ク・コン  艸部

コンニャクの花(「HIROMI PHOTO」より)

コンニャク芋(「こんにゃく豆知識」より)
解字 「艸(植物)+立(たつ)+句(ク・コン)」の形声。ク・コンという名のまっすぐ立つ花をつける植物の意。コンニャク芋の花は、芋が大きくなった5~6年目にイモから槍が立つように伸びて咲く特徴がある。普通、コンニャク芋は3年目に収穫するので、収穫を放棄するなどした畑以外、花はめったに見られないが、蒟ク・コンは、その花の特徴を文字にしたと思われる。発音のコンは慣用読み。
意味 「蒟蒻コンニャク・クジャク」に使われる字。蒟蒻とは、サトイモ科の多年生作物。地下茎は蒟蒻芋コンニャクいもと呼ばれ、普通3年目のものを収穫し食用とする。蒟蒻芋を粉末にし水を加えてこね、これに石灰乳を加え煮沸し、固めて豆腐のような食品にする。なお、蒻ジャク・ニャクは「艸(くさ)+弱(やわらかい)」で、蒟蒻芋からできた食品がやわらかい意と思われる。
 コウ・ク・いやしくも  艸部
解字 「艸(くさ)+句(コウ)」の形声。ここで艸(草冠)は草の意味でなく、コウ(句)という発音のさまざまな意味を表すための用い方。主に仮定の助字などに用いる。したがって苟の意味は多彩である。
意味 (1)いやしくも(苟くも)。かりにも。もしも。(2)かりそめに(苟に)。かりそめ。しばし。「苟且コウショ」(その場かぎり。かりそめ)「苟安コウアン」(一時の安楽をむさぼる)「苟言コウゲン」(一時のがれの言葉) (3)おろそかにする。「苟禄コウロク」(勤めを怠りながら俸禄をむさぼる) (4)まことに(苟に)「苟(まこと)に日に新たなり日日(ひび)新たにして 又(また)日に新たなり」(日々新しいことに挑戦し、日々新しい発見を求め、日々成長できるように努力しなければならない」(経書「大学」)
<紫色は常用漢字>

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