漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「鬼キ」<おに> と「愧キ」「塊カイ」「魁カイ」「槐カイ」「醜シュウ」

2018年10月10日 | 漢字の音符
 キ・おに  鬼部

解字 甲骨文第一字と金文は「田(仮面)+人(ひと)」の象形。おそろしい顔の面をつけた人を表す。また、甲骨文第二字は、示(祭壇)を付けており神の前で仮面をつけて行なう祭祀を示している。おそらく鬼やらい(悪鬼を祓い疫病を除く)のような祭祀であろう。篆文から尻尾のような形でムが加わった。鬼の意味は多様であるが、古代文字で表されているのは、人に災いをもたらす悪霊であろう。そのほか、鬼は死者の魂、また、神として祀られた霊魂、の三つに大きく分けられる。
意味 (1)おに(鬼)。人に害を与えるもの。かいぶつ。ばけもの。悪い物、恐ろしい物、強い物を象徴する存在である。「邪鬼ジャキ」(邪悪な鬼) (2)おに。死者の魂。亡霊。「鬼籍キセキ」(過去帳)「鬼哭キコク」(死者の霊が恨めしげに哭くこと) (3)ひとがみ。神として祀られた霊魂。「鬼神キシン」 (4)強く大きい者。人間わざと思えない。「鬼才キサイ」 (5)[国]おに(鬼)。想像上の生物。角が生えふんどしをしている。「鬼が島」 (5)勇猛な者。「鬼将軍おにしょうぐん」 (6)残忍な者。「鬼婆おにばば
参考 鬼は部首「鬼おに・きにょう」になる。漢字の左辺や右辺(旁)また下部に付き、「おに」「霊的存在」などを表す。約14,600字を収録する『新漢語林』では22字が収録されている。
常用漢字 5字
 (部首)
 コン・たましい(鬼+音符「云ウン」)
 シュウ・みにくい(鬼+音符「酉ユウ」)
 (鬼+音符「未ミ」)
 (鬼+音符「麻マ」)
常用漢字以外
 バツ・(ひでり)(鬼+音符「犮ハツ」)
 ハク・たましい(鬼+音符「白ハク」) 

イメージ  
 「おに」
(鬼・愧・傀・醜) 
  強く大きい鬼から「おおきい」(嵬・隗・塊・槐・魁)
  「シュウの音」(蒐)
音の変化  キ:鬼・愧  カイ:傀・塊・槐・嵬・隗・魁  シュウ:蒐・醜

おに
 キ・はじる  忄部
解字 「忄(心)+鬼(おに)」の会意形声。この鬼は人に害を与える邪悪な鬼。邪悪な鬼が自分の行いをはずかしく思うこと。
意味 はじる(愧じる)。はじ。自分の見苦しい行ないをはずかしく思う。「慙愧ザンキ」(はじいる)「愧死キシ」(恥じ入って死ぬ。死ぬほどはずかしい)
 カイ  イ部
解字 「イ(ひと)+鬼(おに)」の会意形声。人に鬼が憑依(とりつく)した状態。人が鬼に操られるように動くこと。あやつり人形をいう。また、おおきい人の意もある。
意味 (1)あやしい。もののけ。 (2)くぐつ。でく。あやつり人形。「傀儡カイライ」(他人に操られる者)「傀儡くぐつ」(操り人形)「傀儡師カイライシ・くぐつシ」(各戸を回り人形を操って金品をもらった者。人形まわし) (3)おおきい。りっぱ。「傀偉カイイ
 シュウ・みにくい・しこ  鬼部
解字 「鬼(おに)+酉(=酒。さけに酔った)」の会意形声。酒に酔った鬼。音符は「酉ユウ」だが参考のため重出した。
意味 (1)みにくい(醜い)。けがらわしい。「醜悪シュウアク」「醜名シュウメイ」(悪い評判)「醜態シュウタイ」 (2)にくむ。きらう。 (3)しこ(醜)。みにくいものをののしる語。「醜女しこめ」「醜男しこお

おおきい
 カイ  山部
解字 「山(やま)+鬼(おおきい)」の会意形声。おおきく高い山。
意味 高くおおきい。「嵬峨カイガ」(高くけわしい山)「崔嵬サイカイ」(高くそばだつ)
 カイ  阝部
解字 「阝(おか)+鬼(おおきい)」の会意形声。おおきくけわしいおか。
意味 (1)けわしい(隗しい)。たかい。「隗然カイゼン」(けわしいさま)(2)人名。「郭隗カクカイ」(中国・戦国時代の燕の人)「隗カイより始めよ」(燕の昭王に賢者の求め方を問われ、賢者を招きたければ、まず凡庸な私(隗)を重く用いよ、そうすれば自分よりすぐれた人物が自然に集まってくる、と答えたという「戦国策」の故事から、大事業をするには、まず身近なことから始めよ。また、物事は言い出した者から始めよということ)
 カイ・かたまり  土部
解字 「土(つち)+鬼(おおきい)」の会意形声。土の大きいかたまり。のち、かたまりを言う。
意味 (1)土くれ。土のかたまり。「土塊ドカイ」(土のかたまり。土くれ) (2)かたまり(塊)。「金塊キンカイ」「肉塊ニクカイ」「凝塊ギョウカイ」(こりかたまったもの)
 カイ・えんじゅ  木部
解字 「木(き)+鬼(おおきい)」の会意形声。成長して大木となる樹。庭園や街路樹として植えられ、夏に木陰を提供する。日本では鬼の出入りするといわれる屋敷内の鬼門(東北の方角)に植えて災厄をさける木とされた。
意味 (1)えんじゅ(槐)。槐樹。マメ科の落葉高木。庭園や街路樹に植えられる。大木に育つ。 (2)周代の朝廷で三本の槐樹を植え、この樹下に座ることのできるのは最高位の三人の高官とされた。「槐位カイイ」(三人の高官の位。=三公・三槐サンカイ)「槐門カイモン」(大臣の別称)
 カイ・さきがけ・かしら  鬼部

魁星(「詞と星の名」より)
解字 「斗(ひしゃく)+鬼(おおきい)」の会意形声。原義は大きな柄杓(ひしゃく)。大きな天空の柄杓である大熊座の北斗七星に当て、特に枡の部分にあたる4つの星をいう。また、枡の部分の第一星を魁星カイセイと呼んだことから、さきがけの意となった。また、さきがけは先頭に立つ意であり、かしら・首領、すぐれる意となる。本来は斗が部首だが、なぜか鬼が部首になっている。
意味 (1)大きなひしゃく。 (2)おおきい。「魁偉カイイ」(大きく立派なさま) (3)北斗七星。「天魁テンカイ」「魁星カイセイ」(①北斗七星の第一星 ②科挙試験の首席合格者) (4)さきがけ(魁)。物事のはじめとなる。 (5)かしら(魁)。首領。「首魁シュカイ」 (6)すぐれたもの。「魁士カイシ」(すぐれた男子)

シュウの音
 シュウ・あつめる  艸部
解字 「艸(草)+鬼(シュウ)」 の形声。シュウという名の草。あかね草をいう。また、集シュウ(あつまる)・収シュウ(える)に通じ、あつめる意や狩りをする意がある。
意味 (1)あかね草。 (2)あつめる(蒐める)。「蒐集シュウシュウ」 (3)狩りをする。「蒐猟シュウリョウ
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


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