漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「毎マイ」<髪型を整える女>と「敏ビン」「繁ハン」「侮ブ」「梅バイ」「海カイ」「悔カイ」

2015年08月07日 | 漢字の音符
[每] マイ・バイ・ごと・つね  母部

歪梳(わいそ)苗族の女性の髪形
解字 甲骨文字は、カンザシをして頭髪をまとめた女の象形。金文から女⇒母になるが、金文には他に女の字形も存在する。したがって毎の字は、頭髪を飾った母というより女であって、必ずしも母の意味があるわけではない。しかし篆文から金文を引き継ぎすべて母となっている。意味は、頭髪を結った女が寝る前にカンザシをはずし、朝おきると又、髪を結うので「毎日」「そのたび」の意。転じて、つねに・いつも等の意となる。旧字は頭髪の部分が「𠂉」に変化したになり、さらに新字体で母⇒毋に変化した毎になった。
 中国では現在も少数民族で、櫛などを挿して髪をたばねる髪型を守る苗族の支族がある。
意味 (1)ごと(毎)。次々と生じる事柄をさし示す言葉。「日毎ひごと」「毎日マイニチ」「毎次マイジ」(2)つね(毎)。つねづね。いつも。「毎毎マイマイ」(いつも)(3)ひとりずつ(各)。「毎人マイニン・マイジン」(一人ずつ) 

イメージ
 「髪型を整える女」(毎・敏・繁)
 「形声字」(晦・海・悔・誨・侮・梅)
音の変化  マイ:毎  バイ:梅  ハン:繁  ビン:敏  ブ:侮  カイ:晦・海・悔・誨 

髪型を整える女  
 ビン・さとい  攵部     

解字 甲骨文は、カンザシをした女が頭に手をやり髪型を整えている形。手は自分の手とも他人の手とも解釈できる。篆文は、女が母に、手が攴になり、現代字はさらに攵に変化している。女が毎日髪をととのえるので、手早く髪をととのえる意で、はやい・すばやい意を表し、転じて、さとい意となる。
意味 (1)はやい。すばやい。とし(敏し)。「敏速ビンソク」「機敏キビン」  (2)さとい(敏い)。かしこい。するどい。「俊敏シュンビン」「鋭敏エイビン」「敏感ビンカン
 ハン・しげる 糸部
解字 「糸(糸飾り)+敏(女が髪を整える)」の会意形声。敏ビンは女が手早く髪をととのえる形で、それに糸がついた繁は、次々と髪に糸飾りをつけること。転じて、さかんになる・しげる意となる。
意味 (1)さかんになる。「繁栄ハンエイ」「繁盛ハンジョウ」 (2)しげる(繁る)。草木がしげる。「繁茂ハンモ」「繁殖ハンショク」 (3)回数が多い。しげく(繁く)。いそがしい。わずらわしい。「繁忙ハンボウ」「頻繁ヒンパン

形声字
 カイ・みそか・つごもり・くらい・くらます  日部
解字 「日(太陽)+每(マイ⇒カイ)」の形声。[説文解字]は、「月盡(つき)るなり。日に従い毎の声。(発音は)荒內切(クヮイ)」とし月が尽きて見えない夜で、陰暦の月の最終日をいう。月が出ないので「くらい」意味ともなる。マイの発音がどうしてカイ(クヮイ)になるのかは不明だが、カイ(クヮイ)は、「くらい」または「かくれる」意味となるので、漢字以前からあった「カイ(クヮイ)・かくれる・くらい」という発音を表すために、每マイの字を転音させたのであろう。毎マイに海カイ・悔カイなどの音がある。
意味 (1)みそか(晦日)。つごもり(晦。晦日)。陰暦で月の最終日。「大晦日おおみそか」(一年の最終の日。おおつごもり) (2)くらい(晦い)。「晦冥カイメイ」(くらやみ) (3)くらます(晦ます)。「晦渋カイジュウ」(文章や語句などがむずかしくて分かりにくい)「晦蔵カイゾウ」(自分の才能などを人にわからないようにかくす)
 カイ・うみ  氵部
解字 「氵(川)+毎(マイ⇒カイ)」の会意形声。川に面したカイという名の地名。現在は貴州省六曲河鎮に存在し、海眉カイビ村の名で残っている。六曲河は文字通り河が曲がりくねっている意で、海眉とは「眉まゆのような曲線の河に面した土地の意味と思われる。[漢字字形史字典]は、周代の金文に東方の地名として「海眉」が見え、あるいは海岸地域(海に面した土地の地名)の呼称が原義かもしれないとする。海の解字には諸説あるが、地名からの説明が分かりやすいと思う。
 なお[字統]は、「「氵(みず)+毎(=晦カイ。くらい)」の会意形声とし、「中国では自分たちの地・中華に対し、そこからはずれた四方の極地を晦冥カイメイの地(くらやみの地)とする観念があった。その地に氵(みず)がついた海は、晦冥の地にひろがる果てしない水のうみの意」とする。
意味 (1)うみ(海)。「海岸カイガン」「海洋カイヨウ」「海峡カイキョウ」「溟海メイカイ」(大海) (2)広く大きい。多くのものが集まる。「雲海ウンカイ」「樹海ジュカイ
 カイ・ゲ・くいる・くやむ・くやしい  忄部
解字 「忄(心)+毎(=晦。くらい)」の形声。カイは晦カイ(くらい)に通じ、心が沈んでくらい状態をいう。罪や過ちを犯し暗い気持ちになり、それを悔やむこと。
意味 くいる(悔いる)。くやむ(悔む)。くやしい(悔しい)。「悔悟カイゴ」(悔い改める)「後悔コウカイ」「悔恨カイコン」(後悔して残念に思う)「懺悔ザンゲ」(罪悪を自覚し悔い改める)
覚え方 こころ()で日、(くや)んで後コウカイ。  
 カイ・おしえる  言部
解字 「言(いう)+每(=悔。くいる)」の会意形声。言葉で相手を悔い改めさせること。
意味 おしえる(誨える)。おしえさとす。わからせる。「教誨キョウカイ」(教えさとす)「教誨師キョウカイシ」(刑務所で受刑者に対し徳性の育成を行なう宗教家)
 ブ・あなどる  イ部  
解字 「イ(人)+毎(ブ)」の形声。ブは毋ブ・ム(ない)、無ム・ブ(ない)に通じ、人を無視する態度をとり、さげすむこと。
意味 あなどる(侮る)。さげすむ。「侮辱ブジョク」(あなどり、はずかしめる)「侮蔑ブベツ」(あなどり、さげすむ)「軽侮ケイブ」(あなどって軽くみる)  
覚え方 ひと()を日、(あなど)りブジョク
 
 バイ・うめ  木部
解字 「木(き)+毎(バイ)」の形声。バイはバイ(うめの古字)に通じ、木をつけてウメの木、ウメの実を表す。
意味 うめ(梅)。うめの木。「梅花バイカ」「梅園バイエン」「梅雨バイウ・つゆ」(梅の実がなるころ降る雨)「入梅ニュウバイ
<紫色は常用漢字>

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