改訂しました。
敝 ヘイ・やぶれる 攵部

解字 甲骨文第1字は、布の象形である巾と道具を手に持った手の形である攴ボクに従い、布を打ってぼろぼろにして破るさま。第2字は布の破片を表す小点を加えた形[甲骨文字辞典]。しかし、意味は地名になっている。篆文は布の破片がハに変わり、巾の上下にハを配し横に攴を付けた。現代字は攴⇒攵に変化した敝になった。意味は、やぶれる意のほか、つかれる・自分への謙称となる。
意味 (1)やぶれる(敝れる)。やぶる。こわれる。ぼろぼろになる。「敝衣ヘイイ」(やぶれた着物)「敝履ヘイリ」(やぶれた履き物)「敝屋ヘイオク」 (2)つかれる。よわる。おとろえる。 (3)自分のことにつける謙称。「敝国ヘイコク」(自分の国の謙称)
イメージ
「打ってだめにする」(敝・弊・斃・蔽・瞥・鼈)
「形声字」(幣)
音の変化 ヘイ:敝・弊・斃・蔽・幣 ベツ:瞥・鼈
打ってだめにする
弊 ヘイ・やぶれる・ついえる 廾部
解字 旧字は「廾+敝(打ってだめにする)」の会意形声。この字は古くは敝ヘイの下に「犬」や犬の点がとれた「大」を付けており、意味は犬が打たれてだめになる意だが、敝とほとんど同じである。楷書から犬や大の代わりに廾が付いた弊があらわれ、この字が一般的になった。常用漢字になっているため敝の代わりにほとんど弊が使われる。廾には「両手の略体」の意味があり、攴(攵)ボク・うつの意味を両手で強めたものと考えたい。この字は新字体で左上部がハ⇒ソに変化する。
意味 (1)やぶる。やぶれる(弊れる)。「弊衣ヘイイ」(=敝衣。やぶれた衣)「弊履ヘイリ」(はき古した履物) (2)つかれる。「疲弊ヒヘイ」 (3)わるい。よくない。「弊害ヘイガイ」「語弊ゴヘイ」(誤解をまねきやすい言い方) (4)ついえる(弊える)。負けてくずれる。たおれる。 (5)自分を謙遜する語。「弊居ヘイキョ」(粗末な住宅。拙宅)「弊店ヘイテン」「弊社ヘイシャ」
蔽 ヘイ・おおう・おおい 艸部
解字 「艸(くさ)+敝(=弊。やぶれる)」の形声。やぶれたところが草でおおわれること。おおう・おおいかくす意になる。
意味 (1)おおう(蔽う)。おおいかくす。「隠蔽インペイ」「遮蔽シャヘイ」「蔽蒙ヘイモウ」(おおわれてくらい)(2)おおい(蔽い)。おおうもの。
斃 ヘイ・たおれる 攵部
解字 「死(しぬ)+敝(打ってだめにする)」の会意形声。打たれて倒れ死ぬこと。
意味 たおれる(斃れる)。たおれて死ぬ。「斃死ヘイシ」
瞥 ベツ 目部
解字 「目(め)+敝(打ってだめにする)」の形声。打たれて負傷した目。開けていられず見るときだけ、まぶたを開けてチラッと見ること。
意味 みる。ちらっとみる。「一瞥イチベツ」「瞥見ベッケン」(ちらりと見ること)
鼈 ベツ・すっぽん 黽部おおがえる

スッポン(市場漁業図鑑)

タイマイ(ヤフー!きっず)
https://kids.yahoo.co.jp/zukan/animal/kind/reptiles/0013.html
解字 「黽(かめ)+敝(打ってだめにする)」の形声。黽モウ・ベンは、カエルやカメをあらわす象形でここではカメの意。鼈ベツは、亀の甲羅を打ってだめにし、甲羅がやわらかくなった亀。甲羅が普通の亀と違って軟らかいスッポンをいう。なお「鼈甲」はタイマイの背甲をいう。
意味 (1)すっぽん(鼈)。スッポン科の亀の総称。他の亀と異なり、甲羅表面は角質化していないので軟らかい。英語でSoft-shelled turtle(柔らかい甲羅を持つカメ)という。首が長くよく物をかむ。肉は美味。「鼈裙ベックン」(すっぽんの甲羅のまわりの肉。美味。その形が裙(もすそ)に似るから)(2)タイマイ(玳瑁)の背甲。甲羅は黄色と黒の斑紋が屋根瓦のように重なり美しい。各種装飾品の材料となる。江戸時代に玳瑁の使用がぜいたく品として禁止され、それをスッポンの甲羅と言い逃れたことから[漢字源]。「鼈甲ベッコウ」(①タイマイの背甲。くし・かんざし・眼鏡のふちなどに使用した。現在は輸入禁止となっている。②スッポンの背甲。薬用とした)
形声字
幣 ヘイ・ぬさ・みてぐら 巾部
解字 「巾(ぬの)+敝(ヘイ)」の形声。[説文解字]は「帛ハク(絹の布)也(なり)。巾に从(したが)い敝ヘイの聲」とする。この敝ヘイは発音だけ表し「打ってだめにする」イメージはない。意味は帛ハク、すなわち幣帛ヘイハクで「絹布など神に奉献する物の総称」という意味である。
敝に巾をつけただけで何故「神に奉献する物」の意味になるのか?
それはヘイという発音にあると考える。私が思いついたのは陛ヘイ(きざはし・天子の宮殿の階段)である。幣と陛は日本語でヘイで同音。中国語でもbì で同音。上古音と中古音は両字で少しことなるが語頭音は並biで表されており、ほぼ同じ発音といえる。
当時の中国人が幣ヘイの発音を聞いたとき思い浮かべる字の陛ヘイ(きざはし)は、天子の宮殿の階段である。そこに巾(ぬの)があれば天子の宮殿(すなわち神殿)に巾(ぬの)を供える意となる。神に供える絹布が原義で、転じて、貢ぎ物・財貨の意味になったと考えたい。
意味 (1)みてぐら(幣)。神に供える絹。「幣帛ヘイハク」(神にささげる白絹)「幣使ヘイシ(幣帛を奉じる使い)(2)みつぎもの。進物。天子にたてまつる礼物。「幣物ヘイブツ」「幣貢ヘイコウ」(みつぎもの)(3)財貨の意から、おかね。ぜに。「貨幣カヘイ」「幣制ヘイセイ」(貨幣に関する制度)「紙幣シヘイ」「造幣局ソウヘイキョク」(4)[国]ぬさ(幣)。ごへい(御幣)。神を祭る用具のひとつで串に白い紙を切ってはさんだもの。「幣束ヘイソク」
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
敝 ヘイ・やぶれる 攵部

解字 甲骨文第1字は、布の象形である巾と道具を手に持った手の形である攴ボクに従い、布を打ってぼろぼろにして破るさま。第2字は布の破片を表す小点を加えた形[甲骨文字辞典]。しかし、意味は地名になっている。篆文は布の破片がハに変わり、巾の上下にハを配し横に攴を付けた。現代字は攴⇒攵に変化した敝になった。意味は、やぶれる意のほか、つかれる・自分への謙称となる。
意味 (1)やぶれる(敝れる)。やぶる。こわれる。ぼろぼろになる。「敝衣ヘイイ」(やぶれた着物)「敝履ヘイリ」(やぶれた履き物)「敝屋ヘイオク」 (2)つかれる。よわる。おとろえる。 (3)自分のことにつける謙称。「敝国ヘイコク」(自分の国の謙称)
イメージ
「打ってだめにする」(敝・弊・斃・蔽・瞥・鼈)
「形声字」(幣)
音の変化 ヘイ:敝・弊・斃・蔽・幣 ベツ:瞥・鼈
打ってだめにする
弊 ヘイ・やぶれる・ついえる 廾部
解字 旧字は「廾+敝(打ってだめにする)」の会意形声。この字は古くは敝ヘイの下に「犬」や犬の点がとれた「大」を付けており、意味は犬が打たれてだめになる意だが、敝とほとんど同じである。楷書から犬や大の代わりに廾が付いた弊があらわれ、この字が一般的になった。常用漢字になっているため敝の代わりにほとんど弊が使われる。廾には「両手の略体」の意味があり、攴(攵)ボク・うつの意味を両手で強めたものと考えたい。この字は新字体で左上部がハ⇒ソに変化する。
意味 (1)やぶる。やぶれる(弊れる)。「弊衣ヘイイ」(=敝衣。やぶれた衣)「弊履ヘイリ」(はき古した履物) (2)つかれる。「疲弊ヒヘイ」 (3)わるい。よくない。「弊害ヘイガイ」「語弊ゴヘイ」(誤解をまねきやすい言い方) (4)ついえる(弊える)。負けてくずれる。たおれる。 (5)自分を謙遜する語。「弊居ヘイキョ」(粗末な住宅。拙宅)「弊店ヘイテン」「弊社ヘイシャ」
蔽 ヘイ・おおう・おおい 艸部
解字 「艸(くさ)+敝(=弊。やぶれる)」の形声。やぶれたところが草でおおわれること。おおう・おおいかくす意になる。
意味 (1)おおう(蔽う)。おおいかくす。「隠蔽インペイ」「遮蔽シャヘイ」「蔽蒙ヘイモウ」(おおわれてくらい)(2)おおい(蔽い)。おおうもの。
斃 ヘイ・たおれる 攵部
解字 「死(しぬ)+敝(打ってだめにする)」の会意形声。打たれて倒れ死ぬこと。
意味 たおれる(斃れる)。たおれて死ぬ。「斃死ヘイシ」
瞥 ベツ 目部
解字 「目(め)+敝(打ってだめにする)」の形声。打たれて負傷した目。開けていられず見るときだけ、まぶたを開けてチラッと見ること。
意味 みる。ちらっとみる。「一瞥イチベツ」「瞥見ベッケン」(ちらりと見ること)
鼈 ベツ・すっぽん 黽部おおがえる

スッポン(市場漁業図鑑)

タイマイ(ヤフー!きっず)
https://kids.yahoo.co.jp/zukan/animal/kind/reptiles/0013.html
解字 「黽(かめ)+敝(打ってだめにする)」の形声。黽モウ・ベンは、カエルやカメをあらわす象形でここではカメの意。鼈ベツは、亀の甲羅を打ってだめにし、甲羅がやわらかくなった亀。甲羅が普通の亀と違って軟らかいスッポンをいう。なお「鼈甲」はタイマイの背甲をいう。
意味 (1)すっぽん(鼈)。スッポン科の亀の総称。他の亀と異なり、甲羅表面は角質化していないので軟らかい。英語でSoft-shelled turtle(柔らかい甲羅を持つカメ)という。首が長くよく物をかむ。肉は美味。「鼈裙ベックン」(すっぽんの甲羅のまわりの肉。美味。その形が裙(もすそ)に似るから)(2)タイマイ(玳瑁)の背甲。甲羅は黄色と黒の斑紋が屋根瓦のように重なり美しい。各種装飾品の材料となる。江戸時代に玳瑁の使用がぜいたく品として禁止され、それをスッポンの甲羅と言い逃れたことから[漢字源]。「鼈甲ベッコウ」(①タイマイの背甲。くし・かんざし・眼鏡のふちなどに使用した。現在は輸入禁止となっている。②スッポンの背甲。薬用とした)
形声字
幣 ヘイ・ぬさ・みてぐら 巾部
解字 「巾(ぬの)+敝(ヘイ)」の形声。[説文解字]は「帛ハク(絹の布)也(なり)。巾に从(したが)い敝ヘイの聲」とする。この敝ヘイは発音だけ表し「打ってだめにする」イメージはない。意味は帛ハク、すなわち幣帛ヘイハクで「絹布など神に奉献する物の総称」という意味である。
敝に巾をつけただけで何故「神に奉献する物」の意味になるのか?
それはヘイという発音にあると考える。私が思いついたのは陛ヘイ(きざはし・天子の宮殿の階段)である。幣と陛は日本語でヘイで同音。中国語でもbì で同音。上古音と中古音は両字で少しことなるが語頭音は並biで表されており、ほぼ同じ発音といえる。
当時の中国人が幣ヘイの発音を聞いたとき思い浮かべる字の陛ヘイ(きざはし)は、天子の宮殿の階段である。そこに巾(ぬの)があれば天子の宮殿(すなわち神殿)に巾(ぬの)を供える意となる。神に供える絹布が原義で、転じて、貢ぎ物・財貨の意味になったと考えたい。
意味 (1)みてぐら(幣)。神に供える絹。「幣帛ヘイハク」(神にささげる白絹)「幣使ヘイシ(幣帛を奉じる使い)(2)みつぎもの。進物。天子にたてまつる礼物。「幣物ヘイブツ」「幣貢ヘイコウ」(みつぎもの)(3)財貨の意から、おかね。ぜに。「貨幣カヘイ」「幣制ヘイセイ」(貨幣に関する制度)「紙幣シヘイ」「造幣局ソウヘイキョク」(4)[国]ぬさ(幣)。ごへい(御幣)。神を祭る用具のひとつで串に白い紙を切ってはさんだもの。「幣束ヘイソク」
<紫色は常用漢字>
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