漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「黍ショ」 <きび> と 「香コウ」 <かおり>

2017年07月01日 | 漢字の音符
  ショ <きび>

 ショ・きび  黍部          

解字 甲骨文は穂の部分が多数に枝分かれした穀物の象形であり、キビを表している。それに水を加えた形が黍の字になる[甲骨文字辞典]。水の意味については諸説があり、①降水量の多い夏の作物を意味した。②酒を造るのに適した穀物なので酒の意、などがある。私はキビ酒を連想で覚えられるので水=酒がよいと思う。金文は「禾(穀物が実ったかたち)+水(みず)」 の会意になり、篆文以後は禾の下に∧が付いた黍になった。黍は甲骨文字から存在しているように、中国で最も古くからある穀物の一つで、主に北方で栽培されていた。もち種と、うるち種がある。黍は皮を取り去った後、大黄米ともいい黍を原料とした酒は「黄酒」という。黍は部首となる。
参考 黍は部首「黍きび」となる。文字の左辺に付き、①きびの意、②もちきびの「粘る」意を表す。主な字に、
 レイ・くろ(「黍+刀の変形」の会意)
 ネン・ねばる(黍+音符「占セン」)
 チ・もち(黍+音符「离リ・チ」)がある。
意味 きび(黍)。イネ科の一年草。五穀のひとつ。「黍団子きびだんご」「黍酒きびざけ」「蜀黍・唐黍もろこし」(熱帯アフリカ原産の黍に似た穀物。15世紀ごろ中国経由で伝わったので蜀・唐がつく。高黍たかきびともよばれる)「玉蜀黍とうもろこし」(トウモロコシ。ポルトガル人から16世紀に伝わった。玉のように実が並んだもろこしの意)


   コウ <かおり>
 コウ・キョウ・か・かおり・かおる  香部

解字 篆文は 「黍(きび)+甘(口に含む)」 の会意。甘は口にものを含んだ形で、長く口中で含み味わう意からうまい・あまい意となる。香は、ふかしたモチ黍を口に含んだときに匂う香りをいう。また、黍=きび酒とみて、キビ酒を口に含んだときの香りと見てもよいと思われる。現代字は甘⇒日に変化した香になった。香は部首となる。
参考 香は部首「香かおり」となる。文字の左辺や下部に付いて、かおりの意味を表す。主な字に、
 フク・かおり(香+音符「复フク」)
 ケイ・かおる(香+音符「殸ケイ」)の2字がある。
意味 (1)かおり(香り)。かおる(香る)。かぐわしい。「香気コウキ」「香水コウスイ」「芳香ホウコウ」「香辛料コウシンリョウ」(香りと辛みを与える調味料) (2)こう。香りを出す焚きもの。「香道コウドウ」「焼香ショウコウ
<紫色は常用漢字>

<参考>
 ケイ・キョウ・かおる  香部
解字 「香(かおり)+殸(つたわる)」 の会意形声。殸ケイは「声(石板)+殳(たたく)」の会意。石の板を紐でぶら下げ、棒でたたいて音を出すさまを表わし、音がつたわる意。馨は、香りがつたわる意。
意味 かおる(馨)。かおり。「芳馨ホウケイ」(芳しいかおり)「素馨ソケイ」(モクセイ科の常緑小低木。ジャスミンの一種)
音符「殸ケイ」へ


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