ヤオトン(穴住居)の窓
囱 ソウ・まど ノ部 cōng
①荒れ果てて放置された穴住居のヤオトン(中国のネットから)
②人が住んでいるヤオトン(ブログ「春風駘蕩舎」より)
解字 ヤオトン(中国語で窑洞yáo dòng)は中国北部の黄土高原に住む人々の伝統的な居住様式。中国の陝西省・甘粛省・遼寧省にひろがる黄土の層は非常に厚く、人々はこの地形を利用してヤオトンという住居を造り上げた。多くは高原の崖に面した所に穴を掘りこんだが、平らな所に大きな穴を掘り、その四方に住居を掘る形式もある。土の家なので夏は涼しく冬は暖かい。
①は崖に穴を掘ったヤオトンで、穴の上部に換気窓があり、窓の桟サンに交差線が交わる部分があり、篆文の窓穴の形を連想させる。②は平らな所に穴を掘り、その四方に住居を掘った陝西省のヤオトンで、換気や煙出しとしての窓が独立しており、文字の囱(まど)の形を表している。
意味 まど(囱)。けむりだし。
イメージ
「まど」(囱・窓)
「形声字」(悤・総・聡)
音の変化 ソウ:囱・窓・悤・総・聡
まど
窓[窗] ソウ・まど 穴部 chuāng
解字 篆文は窗で「穴(横穴)+囱(まど)」の会意形声。横穴住居(ヤオトン)の換気窓のこと。この字が旧字まで続いたが、現代字は「穴(あな)+忩の略体(ソウ)」で囱ソウを同音の忩ソウの略体に変えた形。窓は窗の俗字として使われていたが、第二次戦後、新字体として正字となった。窓にどうして心がつくのか? 疑問の残る字である。
意味 (1)まど(窓)。「窓外ソウガイ」「窓口まどぐち」 (2)窓のある部屋。教室。学校。「学窓ガクソウ」「同窓ドウソウ」
形声字
悤[忩] ソウ 心部 cōng
解字 篆文・旧字とも「心(こころ)+囱(ソウ)」の形声。ソウは匆ソウに通じ、心をつけた怱ソウの意味である、あわてる・いそぐ意となる。意味 あわてる(悤てる)。いそぐ(悤ぐ)。しかし、悤は意味と関係なく発音を表す音符字として用いられる。また、旧字の悤は現代字で忩に変化する。
忩ソウの正体は何か?
私の推測では忩ソウは悤ソウの俗字、すなわち略字であろう。なぜかというと悤は画数が11画あるのに対し、忩は8画である。画数が多い悤に代わり、囱(7画)の部分を公(4画)に略した忩が俗字として普及し、ついに正字にまで登りつめたのが、窓・総・聡である。窓になぜ心があるのか不思議に思ったが、こう考えると納得できる。しかし、略字の忩は正統派の文字ではない。
総[總] ソウ・すべる 糸部 zǒng
解字 篆文は總で「糸(いと)+悤(ソウ)」の形声。[説文解字]は「聚(あつ)めて束ねるなり」とし、糸束の末端を結んでまとめることをいう。また、まとめた糸を通じて全体を思うようにコントロールすること。旧字まで總のかたちだが、新字体は悤⇒忩に変化した総になる。
意味 (1)まとめる。ひとつにくくる。「総括ソウカツ」「総合ソウゴウ」(2)すべる(総べる)。全体を治める。統率する。「総理ソウリ」「総督ソウトク」(総べひきいる官)「総領事ソウリョウジ」(3)ふさ(総)。糸をくくった飾り。また、髪の毛を束ねること。「総角ソウカク・あげまき」(子どもの髪をつののように両側に束ねた髪)「総髪 ソウハツ」(髪の毛全体を後ろに垂らして束ねた髪形)
聡[聰] ソウ・さとい 耳部 cōng
解字 篆文は聰で「耳(みみ)+悤(ソウ)」の形声。[説文解字注]は「察する也(なり)。耳に従い悤ソウの聲(声)」とあり明察(事情・事態を見抜くこと)をいう。新字体は、悤⇒忩に変化。
意味 さとい(聡い)。かしこい。耳がよく聞こえてわかる。「聡明ソウメイ」「聡慧ソウケイ」(非常に聡明なこと)「聡智ソウチ」(さとくかしこい)
<紫色は常用漢字>
囱ソウの字を残したい。
※囱ソウはヤオトンの窓として黄土高原にすむ人々の生活様式を代表する字だが、現代字では忩ソウなどという意味のわからない俗字の全部および一部に置き換えられてしまったのは残念。本来ならばすべての旧字を正字とすべき音符群です。しかし、旧字としては残っているので使うのは個人の自由。窗ソウ・まど はヤオトンの窓そのものであるので、窗(まど)のようにルビをつけて使ったらどうでしょうか。
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
囱 ソウ・まど ノ部 cōng
①荒れ果てて放置された穴住居のヤオトン(中国のネットから)
②人が住んでいるヤオトン(ブログ「春風駘蕩舎」より)
解字 ヤオトン(中国語で窑洞yáo dòng)は中国北部の黄土高原に住む人々の伝統的な居住様式。中国の陝西省・甘粛省・遼寧省にひろがる黄土の層は非常に厚く、人々はこの地形を利用してヤオトンという住居を造り上げた。多くは高原の崖に面した所に穴を掘りこんだが、平らな所に大きな穴を掘り、その四方に住居を掘る形式もある。土の家なので夏は涼しく冬は暖かい。
①は崖に穴を掘ったヤオトンで、穴の上部に換気窓があり、窓の桟サンに交差線が交わる部分があり、篆文の窓穴の形を連想させる。②は平らな所に穴を掘り、その四方に住居を掘った陝西省のヤオトンで、換気や煙出しとしての窓が独立しており、文字の囱(まど)の形を表している。
意味 まど(囱)。けむりだし。
イメージ
「まど」(囱・窓)
「形声字」(悤・総・聡)
音の変化 ソウ:囱・窓・悤・総・聡
まど
窓[窗] ソウ・まど 穴部 chuāng
解字 篆文は窗で「穴(横穴)+囱(まど)」の会意形声。横穴住居(ヤオトン)の換気窓のこと。この字が旧字まで続いたが、現代字は「穴(あな)+忩の略体(ソウ)」で囱ソウを同音の忩ソウの略体に変えた形。窓は窗の俗字として使われていたが、第二次戦後、新字体として正字となった。窓にどうして心がつくのか? 疑問の残る字である。
意味 (1)まど(窓)。「窓外ソウガイ」「窓口まどぐち」 (2)窓のある部屋。教室。学校。「学窓ガクソウ」「同窓ドウソウ」
形声字
悤[忩] ソウ 心部 cōng
解字 篆文・旧字とも「心(こころ)+囱(ソウ)」の形声。ソウは匆ソウに通じ、心をつけた怱ソウの意味である、あわてる・いそぐ意となる。意味 あわてる(悤てる)。いそぐ(悤ぐ)。しかし、悤は意味と関係なく発音を表す音符字として用いられる。また、旧字の悤は現代字で忩に変化する。
忩ソウの正体は何か?
私の推測では忩ソウは悤ソウの俗字、すなわち略字であろう。なぜかというと悤は画数が11画あるのに対し、忩は8画である。画数が多い悤に代わり、囱(7画)の部分を公(4画)に略した忩が俗字として普及し、ついに正字にまで登りつめたのが、窓・総・聡である。窓になぜ心があるのか不思議に思ったが、こう考えると納得できる。しかし、略字の忩は正統派の文字ではない。
総[總] ソウ・すべる 糸部 zǒng
解字 篆文は總で「糸(いと)+悤(ソウ)」の形声。[説文解字]は「聚(あつ)めて束ねるなり」とし、糸束の末端を結んでまとめることをいう。また、まとめた糸を通じて全体を思うようにコントロールすること。旧字まで總のかたちだが、新字体は悤⇒忩に変化した総になる。
意味 (1)まとめる。ひとつにくくる。「総括ソウカツ」「総合ソウゴウ」(2)すべる(総べる)。全体を治める。統率する。「総理ソウリ」「総督ソウトク」(総べひきいる官)「総領事ソウリョウジ」(3)ふさ(総)。糸をくくった飾り。また、髪の毛を束ねること。「総角ソウカク・あげまき」(子どもの髪をつののように両側に束ねた髪)「総髪 ソウハツ」(髪の毛全体を後ろに垂らして束ねた髪形)
聡[聰] ソウ・さとい 耳部 cōng
解字 篆文は聰で「耳(みみ)+悤(ソウ)」の形声。[説文解字注]は「察する也(なり)。耳に従い悤ソウの聲(声)」とあり明察(事情・事態を見抜くこと)をいう。新字体は、悤⇒忩に変化。
意味 さとい(聡い)。かしこい。耳がよく聞こえてわかる。「聡明ソウメイ」「聡慧ソウケイ」(非常に聡明なこと)「聡智ソウチ」(さとくかしこい)
<紫色は常用漢字>
囱ソウの字を残したい。
※囱ソウはヤオトンの窓として黄土高原にすむ人々の生活様式を代表する字だが、現代字では忩ソウなどという意味のわからない俗字の全部および一部に置き換えられてしまったのは残念。本来ならばすべての旧字を正字とすべき音符群です。しかし、旧字としては残っているので使うのは個人の自由。窗ソウ・まど はヤオトンの窓そのものであるので、窗(まど)のようにルビをつけて使ったらどうでしょうか。
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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。