漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「邕ヨウ」<やわらぐ・ふさぐ> と「雍ヨウ」「擁ヨウ」「壅ヨウ」「廱ヨウ」「癰ヨウ」「甕オウ」

2024年08月24日 | 漢字の音符
 難解な字形群です。何とかまとめてみました。
 ヨウ・やわらぐ・なごむ 邑部 yōng


 上は邕ヨウ、下は邑ユウ
 下の邑ユウは、「囗(かこい)+人のひざまずいた形)」の会意。囗は城壁をめぐらした形。これに人のひざまずいた形を合わせた邑ユウは、城壁の中に人々が住むまちを表す。また、一般の村里の意でも使われる。
 上の邕ヨウの金文は「邑+川」で、周囲を川(みず)で囲まれたまち・むらの意。篆文は川が邑の上につき、現代字は川⇒巛に変化した邕ヨウになった。意味は、①周囲を川や堀で囲まれたまち・むら。②(周囲を囲って)ふさぐ。③(周囲を囲まれて中にいる人は)やわらぐ。なごむ意がある。
意味 (1)四方を川に囲まれたまち・むら。(2)やわらぐ。仲よくする。「邕穆ヨウボク」(邕も穆も、やわらぐ意)「邕邕ヨウヨウ」(和らぐさま)(3)ふさぐ(邕ぐ)。周囲を水でふさぐ。

イメージ
 「川に囲まれた地域」

 意味(2)の「やわらぐ」雍・廱擁・甕
 意味(3)の「ふさぐ」
 「形声字」
音の変化 ヨウ:邕・雍・廱・擁・壅・癰  オウ:
 
やわらぐ・おだやか
雍[雝] ヨウ・やわらぐ 隹部 yōng

解字 甲骨文字第一字は「隹(とり)と四角形二つ」からなり、人口の池を配した祭祀施設を表す文字であり隹は池に鳥が集まった様子であろう」(甲骨文字辞典)とする。同書はさらに「第二字は隹の横に流れを表す水の略体をつけた形。意味は①施設名、②先王の名、など。後代には辟雍ヘキヨウとも称されている」とする。金文は甲骨文の水をはっきりと描き、四角形を〇二つに変えた(第二字は〇ひとつ)。意味は、水が池や沢となる安全なところに渡り鳥が飛来し産卵もできてやわらぐことで「和雍ワヨウ」の語がある。また、ふさぐ(=壅)意がある。篆文は雝で「隹(とり)+邕ヨウ(やわらぐ)」の会意形声。隷書(漢代)で形が大きく変わり、現代字の雍ヨウとなった。なごやか・おだやかの意であるが、同音の壅ヨウに通じ、ふさぐ意もある。
意味 (1)なごやか。おだやか。「雍和ヨウワ」(なごやか)「雍穆ヨウボク」(平和でおだやか。穆もなごやかの意)「雍容ヨウヨウ」(ゆったりとしている)(2)ふさぐ。(=壅ヨウ)「雍蔽ヨウヘイ」(隠蔽する)(3)地名。「雍州ヨウシュウ」(①古代中国の九州のひとつ、②日本の山城国(京都)の別称。「雍州府志ヨウシュウフシ」(山城国の地誌)(4)「辟雍ヘキヨウ」とは、古代中国の周代における大学。建築物のまわりを水で囲む「雍」の特徴がある。貴族の子弟が学ぶ場所として機能していた。
 ヨウ・ユ・やわらぐ  广部 yōng
解字 「广(やね)+雝(やわらぐ)」の会意形声。广(やね)の下で雝(やわらぐ)こと。
意味 (1)やわらぐ(らぐ)。「廱和ヨウワ」(やわらぎなごむ)「廱廱ヨウヨウ」(なごむ)(2)古くは同音の壅ヨウに通じ、ふさぐ・ふさがる意があった。
 ヨウ・いだく  扌部 yōng
解字  古い字体は「扌(手)+雝ヨウ(やわらぐ)」で、[説文解字]は「抱く也。手に従い雝の聲(声)」とし抱く意。現代字は「扌(手)+雍ヨウ(やわらぐ)」の会意形声。手でやわらぐ状態にすること、すなわち、手で抱きかかえること。 
意味 (1)いだく(擁く)。だきかかえる。「抱擁ホウヨウ」(だきあう。抱も擁も、だく意)(2)まもる。たすける。「擁護ヨウゴ」(かかえてまもる)「擁立ヨウリツ」(助けあって、おし立てる)
 オウ・かめ  瓦部 wèng
解字 「瓦(やきもの)+雍(=擁。だきかかえる)」の会意形声。抱きかかえる程の大きさの陶器のかめをいう。

仕込甕(甕作りメーカーのHPから)
意味 (1)かめ(甕)。もたい(甕)。液体をいれる容器。「甕天オウテン」(かめの中の天地。狭い世間)「醸甕ジョウオウ」(醸造用の甕)「酒甕シュオウ」(酒がめ)「水甕みずがめ」(2)[国]みか(甕)。酒をかもす大きなかめ。「甕原みかのはら」(京都府木津川市の旧加茂町北部の地名)

ふさぐ
 ヨウ・ユ・ふさぐ  土部 yōng
解字 「土(つち)+雍ヨウ(ふさぐ)」の形声。土でふさぐことを壅ヨウという。
意味 (1)ふさぐ(壅ぐ)。ふさがる。「壅遏ヨウアツ」(ふさぎとどめる。遏はとどめる意)「壅隔ヨウカク」(ふさぎへだてる)「壅塞ヨウソク」(壅も塞も、ふさぐ意)「壅閉ヨウヘイ」(ふさぎとざす)

形声字
 ヨウ・ユウ・はれもの  疒部 yōng
解字 「疒(やまい)+雝(ヨウ)」の形声。腫れ物ができる病を癰ヨウという。
意味 できもの。悪性のできもの。「癰腫ヨウシュ」(悪性のはれもの)「癰疽ヨウソ」(癰も疽も悪性のはれものの意)。
<紫色は常用漢字>

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