漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「蚤ソウ」<のみ> と 「掻ソウ」「騒ソウ」

2024年08月22日 | 漢字の音符
 ソウ・のみ・はやい  虫部 zǎo            

解字 篆文は「又(手)に二点をいれて手指の爪を示した形(発音・ソウ)」+虫(むし)の形声。現代字の蚤は虫に噛まれて爪でかく形を表し、ノミの意。新字体で音符として用いられるときは、蚤 の二点がとれる。ソウ(早)に通じ、早い意でも使われる。
意味 (1)のみ(蚤)。人や動物の体表に寄生して血を吸う虫。「蚤の夫婦」(妻が夫より大柄な夫婦。ノミは雌のほうが雄より大きいことから)(2)はやい(蚤い)。つとに。「蚤寝晏起ソウシンアンキ」(夜はやく寝て朝おそく起きる。赤子や幼児のさま)「蚤起ソウキ」(早起き)「蚤歳ソウサイ」(=早歳。若いとき)

イメージ 
 「のみ」
(蚤)
  ノミに噛まれて「かく」(掻・騒)
音の変化  ソウ:蚤・掻・騒

かく
搔[掻] ソウ・かく  扌部 sāo
解字 本来の字体はで「扌(て)+蚤(かく)」の会意形声。蚤に噛まれて扌(手)で搔(か)くこと。現在は新字体に準じて二点を省く掻が一般的になっている。
意味 (1)かく(掻く)。「掻首ソウシュ」(頭をかく)「隔靴掻痒カッカソウヨウ」(靴を隔てて痒(かゆ)いところを掻く。思いどうりにいかないこと)「足掻(あが)く」(①馬などが前足で地面を掻く。②手足を動かしてもがく) (2)さわぐ。
 ソウ・さわぐ  馬部 sāo
解字 旧字はで「馬(うま)+蚤(かく)」の会意形声。馬が前足で土を掻くような動作でいら立つこと。転じて、さわぐ・さわがしい意となる。また、さわぎをうれえる意ともなる。新字体は騷⇒騒に変化。
意味 (1)さわぐ(騒ぐ)。さわがしい。ざわめく(騒めく)「喧騒ケンソウ」(やかましいこと)「騒動ソウドウ」「物騒ブッソウ」「騒擾ソウジョウ」(さわぎみだれる)(2)うれい(騒い)。うれえる。「離騒リソウ」(離は罹(かか)る、騒はうれい(憂い)。うれいにかかる意。楚の屈原の自伝的叙事詩のタイトル)

湖南省宜昌市にある屈原の像(中国のネットから)
(3)詩人。風流を解する人。(屈原の叙事詩『離騒リソウ』の文体を受けた詩を作る人の意)「騒客ソウカク」(詩人。風流人)「騒人ソウジン」(詩人。風流人)
「屈原クツゲン」とは(中国戦国時代の楚の政治家、詩人。秦の張儀の謀略を見抜き、踊らされようとする懐王を必死で諫めたが受け入れられず、楚の将来に絶望して5月5日の端午に汨羅江(べきらこう。湖南省の北東部を流れる川)に入水自殺した。後に彼を偲んで5月5日の端午に粽(ちまき)をつくり龍船競争(ボートレース)する習俗が生まれたとされる)
<紫色は常用漢字>

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