イリスの色いろのお話

イリスのエレガンス★コミュニケーション blog
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赤い壁に意義あり?!

2006-03-19 11:14:21 | Weblog
3月17日、千代田区の住民代表が、イタリア文化会館の赤い壁の色の塗り替えを求めて、石原東京都知事に陳情書を提出し、これを受けて都では景観保全を目的とした色彩の具体的なガイドライン策定に着手した、と報道されました。
イタリア文化会館は、千鳥ケ淵のほとりに昨年10月にオープンし、壁面に赤を用いたモダンな建物。
デザイナーの意図は、「漆器の赤」だそうですが、
周辺住民の方々には、「景観を壊す」として塗り替えを要望する声が以前からあがっていました。
私はこの問題を、昨年、私の所属する「公共の色彩を考える会」のMLで案内されて知り、現地を視察に行かなくては、と思いながら、行けずにいたところでした。
現地を見ずに評価はできないのですが、漆器は「JAPAN」という意味をもちますし、HPで外観をみると、格子のデザインをあしらっているところなど、親日的なアイデアではあったと思います。
塗り替えの要望が出たことは、イタリア人からすると、当惑、なのかもしれません。施工された色は、それでも千代田区との協議を繰り返したあと、当初より抑えた色だということですが・・・
石原都知事もおっしゃるとおり、「日本人の感性とは相いれないもの」であるようです。

色彩の見え方は、光や湿度に影響されます。湿度の高い日本では、中間色のわりと落ち着いた色が景観として馴染みやすいのは確かですね。
景観条例がつくられるようになっても、「周辺環境に配慮する」と記述されるだけで、具体的にどんな色にすればよいかというと、施工に関わる人の良識にまかされるわけです。
こと景観の色彩は、ファッションやメイクより話題になりにくく、「難しい」と敬遠される傾向にあります。
千鳥が淵というエリアは、落ち着いたまち並みであり、その風情を守ろうとした住民の方々のご意見は、やはり尊重されるべきなのでしょう。
この機に、都は、推奨される色や望ましくない色彩の例示や、派手な色を塗る事のできる面積、範囲の明示も検討しているとか。
カラーコーディネーターの仕事の中には、色彩調査を行ない、条例の策定をする専門家がいます。へたすると住民の感情論を問題にされてしまいますが、その根拠となる周辺環境の色彩調査のデータや、日本の伝統的な赤の例示などを示せば、論理的にも逸脱した色彩であると納得しやすいはずです。もちろん、問題が最初から起きなければなお、いいのですが。
ガイドラインの策定もよいけれど、やはり、常に色彩環境に気を配り、討論できる世の中であってほしいですね。

何より、色彩をとおして、その国の風土や文化も理解し合えることを、望みます!

*イタリア文化会館ホームページに外観が載っています。
http://www.italcult.or.jp/homepage_GPN.htm

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