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たたなづく青垣山ごもれる

2006-05-15 10:26:44 | 日本語・古事記・歴史・日本人
このところお天気の思わしくない日が続いていましたが,昨日の日曜日は久方の五月らしい一日でした.日曜日は母の見舞いが日課ですが,歩いて行くことにしました.花の季節はすっかり終わって何処も彼処も新緑に覆われていました.それでふと心に浮かんだのが,日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の望郷の歌.

 大和は 国のまほろば たたなづく 青垣 山ごもれる 大和しうるわし

ああ,美しいなあというのが感想です.いまの季節の緑は人の心を洗いますよね.それにしても,日本武尊の故郷を慕うお心が伝わってきます.そして思うのが,異郷の地に屍を曝しておられる戦没者の方々のことです.異郷に果てることを余儀なくされた方々の望郷の念がひたひたと伝わってきます..「青山(セイザン)いづくんぞ 墳墓の地」という言葉がありますが,それは聖人ですっかりこの世の真実を諦めた人間のさとりです.マクロビオティックでは身土不二といいます.私は遺骨収集は残された国と国民の義務だと思います.

土は地面にあるものだというのが,大方の日本人の常識ですが,土曜のNHKのマヤ文明探訪番組で,土というものが如何に貴重なものかを目の当たりにしました.土というのは,簡単に言えば動植物の屍骸が積み重なったものです.だから土は繰り返し繰り返し生命になり土に戻りしているのです.身土不二ということの実態と,そして誰もが持つ望郷の念の意味を改めて思わせられました.日本武尊は望郷の歌を残して能煩野でなくなられましたが,そこから白鳥となって故郷に帰られたと伝わっています.

たたなづく という音の持つ魅力に、初めてであった時この歌のとりこになりました.ブログを始めた時にもご披露したように,私の日本語探訪は 「タナバタ」という音に始まりました.タナバタ、タナダ、タタナヅク・・・・古事記に残された古代歌謡は日本人の心の故郷です.戦後急激に切れてしまった日本人の心の音をもう一度取り返したいものだと思います.そういう意味では邦楽が中学に取り入れられてきたことを喜ばしく思っています.

皆様上智大学の渡辺昇一先生をご存知ですよね.渡辺先生の名著「日本史から見た日本人」三編,その中の古代編で弟橘姫への熱い思いを語っておられます.そこで弟橘姫の有名な歌を胸詰まらせて(多分?)紹介しておられます.

 さねさし 相模の小野に もゆる火の 火中(ほなか)に立ちて 問ひし君はも

渡辺先生は,日本武尊のように熱い心をもっておられるに違いないと思いました.とてもすばらしい歴史書です.私達の体は日本の土となり日本の農産物となってまた日本人の体に生まれ変わります.そういう日本人のための国の歴史というものは、歌という響きの中に伝えられていくと思います.和歌は身土不二の、もう一つ別の心土不二です.和歌に親しんで下さい.下手でもなんでも構いません.“ウタ”ならよいのです.心の底から出て来た響きならよいのです.自分で出来なくても,共鳴する歌人のウタと仲良しになれます.日本にはたくさんの和歌や詩がありますから!


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