フィナーレだ。
出演者全員で、締めの歌を合唱。
マイクの数は限られていて、司会のみの数本しか用意されていない。
それでも大部屋扱いの自分は、舞台上段隅で余韻に浸りながら歌っていた。
いつか、この観客全員を自分にむかせたい。
しかしそんな夢心地な気分が、だんだん覚醒していく。
観客1300人の、顔が、体が、瞳が、自分から見て左端一点に集中されていくのが見える。
舞台中央ではなく。
左端にだ。
異様な光景。
観客が注目している先には、黒くでかい男が左右前後に揺れている。
そして、その男の放つオーラに吸い寄せられるが如く、
ある者は、歓喜の雄叫びをあげ、
あるものは、高揚感一杯の笑顔を作り、
ある者は、心酔しきって拝め奉る仕草をし、
老若男女全てがこの男の、虜となり陶酔しきっている。
彼は本日の役回りで、決してカッコいいイケテル立場ではなかったはずだ。
厳密に言えば、分厚い着ぐるみを着て汗だくで前フリをし、司会者より目立つ発言を避け、自分達のネタでは一言三言しゃべるだけで、終始控えめのスタイルを貫いていた。
そして、私服もまったく垢抜けでなく、訛りに訛っている。
なのにだ。
何故、この男が、こんなにも大勢の人間の心を一瞬の内に、鷲づかみに出来るのであろう。
誰か答えを教えてくれ!!
[解答]
「だって賢太郎じゃない」
出演者全員で、締めの歌を合唱。
マイクの数は限られていて、司会のみの数本しか用意されていない。
それでも大部屋扱いの自分は、舞台上段隅で余韻に浸りながら歌っていた。
いつか、この観客全員を自分にむかせたい。
しかしそんな夢心地な気分が、だんだん覚醒していく。
観客1300人の、顔が、体が、瞳が、自分から見て左端一点に集中されていくのが見える。
舞台中央ではなく。
左端にだ。
異様な光景。
観客が注目している先には、黒くでかい男が左右前後に揺れている。
そして、その男の放つオーラに吸い寄せられるが如く、
ある者は、歓喜の雄叫びをあげ、
あるものは、高揚感一杯の笑顔を作り、
ある者は、心酔しきって拝め奉る仕草をし、
老若男女全てがこの男の、虜となり陶酔しきっている。
彼は本日の役回りで、決してカッコいいイケテル立場ではなかったはずだ。
厳密に言えば、分厚い着ぐるみを着て汗だくで前フリをし、司会者より目立つ発言を避け、自分達のネタでは一言三言しゃべるだけで、終始控えめのスタイルを貫いていた。
そして、私服もまったく垢抜けでなく、訛りに訛っている。
なのにだ。
何故、この男が、こんなにも大勢の人間の心を一瞬の内に、鷲づかみに出来るのであろう。
誰か答えを教えてくれ!!
[解答]
「だって賢太郎じゃない」