さっき、深夜のラジオ・ニュースで言っていた
「今日、朝が来ないことが判明しました」
そのあと、ホワイトノイズしか聞こえなくなった
こちらで朝が来ないのなら
地球の裏側では夜が来ないのだろうか
と思った
そのとき、水の滴る音が聞こえ始めた
たぶん宇宙から響いてくるのだろう
宇宙は小さな蛇口になったのだ
そこから水が漏れだした
こわれてしまったのだ
水回りも、電磁気も、ラジオも
地球が回転しなくなったのなら、朝は朝、夜は夜のまま
いや、回らないコマが太陽の周りを回ると
一年でゆっくりと一日が経つはずだ
でも、そんなことあり得ない
きっと 僕だけがそうなのだ
僕だけ、朝が来ないのだ
たぶんそうなのだ
そうなのかどうか
あの人にきいてみよう
他の人にきいたら笑われる
でもあの人ならちゃんと答えてくれるはずだ
笑わないで
だってあの人は
この社会に生きているようで、そうでない
この社会で生きているのに
僕が地球の自転と反対に旅をすれば
一日が始まらないで済むのかもしれない
ありえる話だ
論理的だ
でも、あの人は、そんな論理的な話でなくても
それがあり得ると言ってくれる
でも、あの人は今、闇の中にいる
ここが闇であるように
あそこも闇なのだ
なぜそうなのだろう
なぜ光を失ってしまったのだろう
僕がそれを望んだからだ
その方が
光がより綺麗に見えるからだ
だから
朝が来ないことは
星の光を見る者にとっては
好都合なのだ
星から来た種族
太陽の光だって同じこと
朝が来なければ
太陽は小さな星の一つになる
詩人は詩を歌わない
もう二度と祈らない
なぜなら
すでに世界は終わってしまったのだから
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