そのひとの視線に目を合わせると
そのひとが私に話しかけてくる言葉が
心の中で聞こえてきた
明日あなたは「幸せ」と書かれた落とし物を拾うだろう
それを持ち帰ってあなたはいろいろと調べる
でもいくら調べてもあなたは
その落とし主が誰だか分からないだろう
そのとき今から私が言うことを必ず思い出して欲しい
「それを絶対に警察に持って行ってはいけない」
次の日あなたはその落とし物の持ち主を知ることになるからだ
でもその日から私に会うことはできなくなる
だからそのとき思い出して欲しい
その落とし物をどうやって持ち主に返すことができるか
私に訊くことはできないことを
三日目にあなたは決めなければならなくなる
「幸せ」と書かれた落とし物を持ち主に返すのか
それともそれを自分の物にするのかを
そしてもしあなたが「幸せ」と書かれた落とし物を持ち主に返すことに決めたなら
また私に会うことができるだろう
でもそれを自分の物にすることにしたなら
あなたはもう二度と私に会うことはできない
そして私と会ったこともすっかり忘れてしまうだろう
そしてもう二度と私を思い出すこともない